2025年11月15日、福島競馬場で悲しい出来事が起きました。真っ白な馬体と青い瞳で多くの人に愛された白毛馬アオラキが、レース中に故障を発生し、この世を去りました。
「天国へと旅立ちました。今はただ言葉にならないほどの寂しさと悲しみに包まれております」と、公式X(旧ツイッター)で発表され、多くのファンが悲しみに包まれています。
何が起きたのでしょうか。そして、アオラキはどんな馬だったのでしょうか。
📋 この記事でわかること

⚫ 白毛馬アオラキが死亡 - 2025年11月15日福島8Rで何があったのか
2025年11月15日、福島競馬場の第8レース。芝2600メートル、3歳以上1勝クラスのレースが行われていました。
アオラキは好スタートを決め、6、7番手の外側を追走していました。しかし、2周目の向正面で異変が起きます。
バランスを崩したアオラキは故障を発生。落馬し、競走を中止することになりました。
日刊スポーツの報道によると、騎乗していた小沢大仁騎手は以降のレースで乗り替わりが発表されています。アオラキとともに競走中止したファームツエンティは、その後カラ馬(騎手が乗っていない状態)で走っている姿が確認されており、騎乗していた亀田温心騎手は以降のレースも騎乗可能と発表されました。
💡 実は、この日のレースはアオラキにとって特別な日でした。地方競馬から中央競馬への再転入を果たした、初戦だったのです。
新しいスタートを切るはずだったレースが、悲しい結末となってしまいました。
その後、アオラキは獣医師の診断を受けましたが、回復の見込みが立たないと判断され、この世を去りました。
🐴 アオラキはどんな馬だったのか - 真っ白な馬体と青い瞳のアイドルホース
アオラキは2020年2月12日生まれの牡馬。5歳でした。
父は有名なゴールドシップ、母はカスタディーヴァという血統です。
何より特徴的だったのは、その見た目でした。
✨ 真っ白な馬体
✨ 透き通るような青い瞳
✨ ふわふわの前髪
✨ 頬にあるチャームポイントの斑点
一度見たら忘れられない、美しい姿をしていました。
競走成績は、中央競馬(JRA)で17戦、3着が3回。その後、愛知、浦和、高知、笠松などの地方競馬で24戦3勝という成績を残しました。
そして2025年、中央競馬への再転入を果たしたのです。
アオラキの人気は、競馬ファンだけにとどまりませんでした。SNSでは「アオラキfamily」という公式アカウントが運営され、多くの人が写真や動画を楽しんでいました。
📢 実は、アオラキは現役競走馬でありながら、引退競走馬の支援活動を行うTCC(サラブレッドコミュニティクラブ)の広報大使に就任していました。
TCC公式の発表によると、就任したのは2025年10月12日。今回の事故からわずか1ヶ月前のことでした。
「現役競走馬でありながら、TCCと一緒に引退競走馬の支援活動に取り組んでくれる、まさに新しい支援の形です」と紹介されていたアオラキ。
マスコットやぬいぐるみも数量限定で販売されましたが、いずれも売り切れとなるほどの人気でした。
多くの人に愛されていたアオラキ。では、なぜレース中の故障で命を落とすことになってしまったのでしょうか。
❓ 競走馬が故障すると、なぜ安楽死になるのか
「どうして骨折くらいで安楽死になるの?」「ギブスをつけて治療できないの?」
競走馬の事故が起きるたびに、多くの人がこの疑問を持ちます。これは当然の疑問です。
しかし、残念ながら馬は人間とは体の構造が大きく違うのです。
競走馬の体重は、小柄でも400キロ、大きな馬は500キロを超えます。その重い体を、細い4本の足で支えています。
1本の足には、100キロから150キロもの重さがかかっているのです。
もし1本の足が骨折してしまったら、どうなるでしょうか。
その重さは、残りの3本の足にのしかかります。健康だった他の足にも、蹄葉炎(ていようえん)という病気が発生してしまうのです。
予後不良に関する詳しい情報によると、馬は蹄(ひづめ)の動きによって血液を全身に循環させています。これを「蹄機作用」といいます。
しかし、骨折で歩けなくなると、この仕組みが働かなくなり、血液の循環が滞ってしまいます。
さらに、馬は長時間横になっていることができません。
人間なら入院してベッドで安静にできますが、馬は違います。立ったまま寝ることが多い動物で、横になったままだと体重で内臓が圧迫され、床ずれのような状態になってしまうのです。
📖 過去の事例:テンポイント
1978年、テンポイントという競走馬が骨折したとき、ファンや馬主の願いを受けて大手術が行われました。しかし、42日間の闘病の末、テンポイントは蹄葉炎を発症し、衰弱して亡くなりました。
つまり、安楽死は「馬のための最善の選択」なのです。
苦しみながら亡くなるよりも、痛みを感じないうちに眠るように。獣医師も関係者も、苦渋の決断として安楽死の処置を行っています。
💚 「人間にできる一番の優しさが安楽死」という言葉があります。これは、競馬を愛する人たちが長年向き合ってきた、悲しいけれど現実的な答えなのです。
では、アオラキはどうして他の馬とは違って見えたのでしょうか。それは「白毛馬」という、とても珍しい毛色だったからです。
✨ 白毛馬はなぜこれほど珍しいのか - 1万頭に1頭の奇跡
競馬場で真っ白な馬を見たことはありますか?
もし見たことがあるなら、それはとても幸運なことです。なぜなら、白毛馬が生まれる確率は、約1万頭から2万頭に1頭だからです。
パーセンテージで表すと、わずか0.014%。これは、宝くじに当たるより低い確率です。
「白い馬なら見たことある」と思う人もいるかもしれません。しかし、それは「芦毛(あしげ)」という別の毛色かもしれません。
🔍 芦毛と白毛の違い
芦毛:生まれたときは灰色や栗色で、年齢を重ねるにつれて徐々に白くなる。ゴールドシップやオグリキャップが有名。
白毛:生まれたときから真っ白。これがアオラキのような白毛馬の特徴。
また、アルビノ(先天性色素欠乏症)とも違います。アルビノの動物は瞳が赤く見えますが、白毛馬の瞳は黒色や茶色、そしてアオラキのように青い瞳を持つこともあります。
テレビ東京の報道によると、白毛馬は特定の遺伝子の突然変異によってのみ生まれます。
日本では1979年に突然変異で生まれたハクタイユーが、日本初の白毛のサラブレッドとして認められました。それ以来、現在までに突然変異で6頭、遺伝で44頭、計50頭が誕生しています。
日本競馬で最も有名な白毛馬といえば、2021年に桜花賞を制したソダシでしょう。白毛馬として世界初のG1勝利を達成し、「純白のアイドル」として多くのファンを魅了しました。
ソダシは、1996年に突然変異で生まれたシラユキヒメという馬の子孫です。シラユキヒメの一族からは、これまで27頭の白毛馬が誕生し、重賞勝ち馬を複数輩出しています。
🌟 白毛馬は、その希少性と美しさから、いつも特別な注目を集める存在なのです。
では、アオラキはこのシラユキヒメ一族と同じ白毛馬だったのでしょうか。
🧬 アオラキの血統と特別な存在意義 - JRA初・南半球産白毛馬の初子
💡 実は、アオラキはソダシで有名なシラユキヒメ一族とは全く異なる白毛の系統でした。
アオラキの母、カスタディーヴァは、JRA史上初の南半球産(ニュージーランド生まれ)の白毛馬です。
ケイバペディアの報道によると、カスタディーヴァは2016年、ニュージーランドのカラカ・プレミア・イヤリングセールで落札されました。
その価格は、消費税や関税、輸送費を含めて約5000万円。
なぜそこまでの費用をかけたのか。それは、所有するディアレストクラブの高樽秀夫代表に、大きな夢があったからです。
「日本にもう1つ、
白毛の系統を作りたい」
高樽代表は、以前にユキチャンという白毛馬が走るレースを見て、白毛馬に魅了されました。そして、シラユキヒメ一族とは別の、新しい白毛の血統を日本に根付かせたいと考えたのです。
カスタディーヴァの馬名は、日刊スポーツで公募されました。オペラ中の楽曲名で、意味は「清らかな女神」。
そして2020年2月12日、カスタディーヴァの初子として生まれたのがアオラキでした。
アオラキという馬名は、母の故郷ニュージーランドに由来します。ニュージーランドのクック山の別名で、マオリ語で「雲を貫く」という意味です。
父はゴールドシップ。G1を6勝した名馬で、現役時代は「芦毛の怪物」や「暴れ馬」の異名を取り、ファンから絶大な人気を誇りました。
生まれた子馬は、母と同じ白毛でした。
高樽代表は当時の取材で「感動しましたね」と声を震わせたといいます。「骨が大きく、脚もとてもきれいです」と、初子の誕生を喜びました。
🌈 約5000万円をかけた夢。新しい白毛の系統を作るという挑戦。その結晶がアオラキだったのです。
そして、アオラキには引退後の明るい未来が待っているはずでした。
💔 幻となった引退後 - 会いに行けるアイドルホースになるはずだった
2025年10月12日、アオラキに新しい役割が与えられました。
TCC(サラブレッドコミュニティクラブ)の公式発表によると、アオラキは引退競走馬支援活動を行うTCCの「広報大使」に就任しました。
現役競走馬でありながら、引退馬支援の顔となる。これは、まさに新しい支援の形でした。
広報大使としてのアオラキには、大きな役割がありました。
現役の間は、様々な形でTCCの活動をPRし、限定コラボグッズなどの売上を通じて引退競走馬を支援する。
🏡 そして、引退後は滋賀県高島市にある観光養老牧場「メタセコイアと馬の森」へ入厩し、「会いに行けるアイドルホース」として第二の馬生を歩む予定でした。
TCCオンラインストアでは、アオラキのマスコットとぬいぐるみが数量限定で販売されました。
「輝く白毛の馬体、幻想的な青い瞳、フワフワな前髪、チャームポイントである頬の斑点など、細部まで再現しました」という説明とともに販売されたグッズは、いずれも売り切れとなりました。
馬主の石井輝昭さんは、広報大使就任時にこうコメントしていました。
「引退競走馬支援と言うとおこがましいですが、同じ競馬関係者のひとりとして、アオラキと一緒にTCCの取り組みを少しでも盛り上げるお手伝いが出来ればと思います」
「アオラキfamily」でも様々な企画やグッズ販売を考えており、その売上の一部でTCCの引退競走馬支援活動を応援する予定でした。
「アオラキは再度中央競馬に戻ることが出来ましたので、これからもTCCとアオラキの応援をよろしくお願いいたします」
そう結ばれたコメントから、わずか1ヶ月後のことでした。
2025年11月15日、福島競馬場。
中央競馬への再転入初戦。新しいスタートを切るはずだったレースで、アオラキは天国へと旅立ちました。
「会いに行けるアイドルホース」として、多くの人に癒しを与えるはずだった未来。
滋賀県の牧場で、のんびりと草を食む姿を見せてくれるはずだった日々。
すべてが幻となってしまいました。
生産したディアレストクラブは、Xにアオラキの写真を投稿し、「アオラキ、ありがとう」と追悼しました。
ファンからは、多くの悲しみのメッセージが寄せられています。
約5000万円をかけて生まれた、新しい白毛の系統を作るという夢。
その夢を背負って生まれ、多くの人に愛され、引退競走馬支援の象徴として活動していたアオラキ。
道半ばでの別れとなってしまいましたが、アオラキが残した足跡は、確かに競馬界に刻まれています。
📝 まとめ
2025年11月15日に起きた、白毛馬アオラキの訃報についてお伝えしました。
✅ この記事のポイント
- アオラキは福島8R(芝2600m)のレース中に故障を発生し、競走を中止。その後、この世を去った
- 真っ白な馬体と青い瞳を持つアイドルホースとして、SNSで多くの人に愛されていた
- 競走馬は故障すると、体の構造上、苦痛を長引かせないために安楽死の処置が取られる
- 白毛馬が生まれる確率は約1-2万頭に1頭。競馬場で見られること自体が奇跡的
- 母カスタディーヴァはJRA初の南半球産白毛馬で、アオラキはその初子として誕生
- TCC広報大使として引退後は「会いに行けるアイドルホース」になる予定だった
アオラキの思い出を温かく胸に留め、引退競走馬たちの未来を考えるきっかけになれば、きっとアオラキも天国から喜んでくれるはずです。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1: アオラキはいつ、どこで亡くなったのですか?
2025年11月15日、福島競馬場の第8レース(芝2600m、3歳以上1勝クラス)で故障を発生し、競走を中止。その後、獣医師の診断により回復の見込みが立たないと判断され、この世を去りました。
Q2: なぜ競走馬は故障すると安楽死になるのですか?
馬は体重が400-500kgあり、1本の足に100-150kgの負担がかかります。1本骨折すると他の足も蹄葉炎などを発症し、長時間横になることもできないため、苦痛を長引かせないための最善の選択として安楽死の処置が取られます。
Q3: 白毛馬はどのくらい珍しいのですか?
白毛馬が生まれる確率は約1万頭から2万頭に1頭(約0.014%)です。日本では1979年のハクタイユー以来、現在までに突然変異で6頭、遺伝で44頭、計50頭が誕生しています。競馬場で見られること自体が奇跡的な存在です。
Q4: アオラキの母カスタディーヴァの特別な点は何ですか?
カスタディーヴァはJRA史上初の南半球産(ニュージーランド生まれ)の白毛馬で、2016年に約5000万円で落札されました。ソダシで有名なシラユキヒメ一族とは異なる白毛の系統を日本に根付かせる夢を背負っていました。
Q5: アオラキの引退後の予定はどうなっていましたか?
2025年10月12日にTCC(サラブレッドコミュニティクラブ)の広報大使に就任し、引退後は滋賀県高島市の観光養老牧場「メタセコイアと馬の森」で「会いに行けるアイドルホース」として第二の馬生を歩む予定でした。
Q6: アオラキの競走成績はどうでしたか?
中央競馬(JRA)で17戦、3着が3回。その後、愛知、浦和、高知、笠松などの地方競馬で24戦3勝の成績を残し、2025年に中央競馬への再転入を果たしました。11月15日のレースは再転入初戦でした。
🕊️ アオラキの冥福を心よりお祈りいたします。
引退競走馬支援に関心がある方は、TCC公式サイトをご覧ください。
📚 参考文献リスト
- 白毛馬アオラキが死す - 日刊スポーツ(Yahoo!ニュース)
- 白毛馬アオラキがレース中に故障を発生し落馬、競走中止 - 日刊スポーツ(Yahoo!ニュース)
- 予後不良(競馬)- Wikipedia
- 世界を驚嘆させたソダシ 白毛馬が起こした奇跡の物語とは - テレビ東京
- 白毛の現役競走馬アオラキが「TCC 広報大使」に就任 - TCC公式
- 父ゴールドシップの白毛馬誕生! - ケイバペディア
- 競走馬が骨折するとなぜ安楽死させるのか? - 飼育情報