2025年10月26日、京都競馬場で行われた菊花賞。1番人気のエネルジコが見事に優勝し、鞍上のルメール騎手は史上初となる菊花賞3連覇という偉業を達成しました。
しかし、その喜びも束の間――わずか4日後の10月30日、衝撃のニュースが飛び込んできました。エネルジコが左前脚の浅屈腱炎を発症し、全治9ヶ月以上と診断されたのです。
競馬ファンの間で「不治の病」とまで言われるこの怪我。エネルジコは無事に復帰できるのでしょうか?それとも、このまま引退してしまうのでしょうか?

📋 この記事でわかること
⚡【速報】菊花賞馬エネルジコが浅屈腱炎発症で全治9ヶ月以上!
まず、何が起きたのか時系列で見ていきましょう。
🏇 10月26日(土):菊花賞で優勝
京都競馬場の芝3000mで行われた菊花賞。エネルジコは1番人気の期待に応え、2着に2馬身差をつけて快勝しました。
レース序盤は後方からじっくりと脚を溜め、3コーナー手前から徐々にポジションを上げていく作戦。そして直線で外から力強く伸びて、残り200m付近で先頭に立つと、そのまま後続を突き放してゴール。
鞍上のクリストフ・ルメール騎手は、これで3年連続の菊花賞制覇という史上初の快挙を達成しました。
🏥 10月28日(月):美浦トレセンに帰厩
レース後、エネルジコは茨城県の美浦トレーニングセンターに戻ってきました。netkeibaの報道によると、この時点では特に目立った症状はなかったそうです。
「帰ってきた直後は大丈夫だったんだ」と思うと、その後の展開がより辛いものに感じられます。
⚠️ 時間経過とともに異変が…
しかし、時間が経つにつれて、徐々に左前脚の裏側に張りが出てきたのです。
スタッフがこれを「普通じゃないな」と判断し、詳しく調べるためにエコー検査(超音波検査)を実施。その結果、浅屈腱炎が判明しました。
診断結果:全治9ヶ月以上
つまり、約1年間は走れないということです。
デイリースポーツの報道によると、所属するシルクホースクラブが10月30日に公式発表し、今後は放牧に出されて、じっくりと療養に専念するとのことです。
勝利の興奮から一転、ファンにとっては非常にショックなニュースとなりました。では、この「浅屈腱炎」とは一体どんな怪我なのでしょうか?
🔍 浅屈腱炎とは?競走馬にとって何が怖いのか
「浅屈腱炎」って、そもそも何なのでしょうか?
競馬を見ない人にとっては聞き慣れない言葉ですよね。でも実は、競馬ファンの間では「競走馬のガン」「不治の病」とまで言われる、とても深刻な怪我なんです。
🦴 浅屈腱炎の正体
競走馬の前脚には、人間でいうところのアキレス腱に似た「屈腱」という部分があります。これは手首(馬の場合は腕節)と指の骨をつなぐ、とても大切な腱です。
この腱は2層構造になっていて、外側にあるのが「浅屈腱」、内側にあるのが「深屈腱」。今回エネルジコが傷めたのは、この外側の浅屈腱です。
Wikipediaの解説によると、浅屈腱炎とは、この腱の繊維が一部断裂したり変形したりして、炎症を起こしている状態のこと。完全に切れてしまうわけではないのですが、腱の中に血の固まり(血腫)ができて、熱を持って腫れ上がります。
💡 豆知識
脚が腫れ上がった様子が海老に似ていることから、競馬関係者の間では「エビハラ(海老腹)」とも呼ばれています。
🔥 なぜ発症するのか?
実は、浅屈腱炎がなぜ起こるのか、完全には解明されていません。
ただ、JRA競走馬総合研究所の研究によると、継続的・反復的な運動負荷が原因だと考えられています。
驚きの事実!
競走馬が調教をすると体温が40度近くまで上がり、屈腱の温度は45度近くにもなるそうです。スマホが熱くなるのと同じように、腱も使いすぎると熱くなるんですね。
この熱が毎日蓄積されていくことで、腱の中心部に退行性変化(劣化のようなもの)が起こり、ある日レースや強い調教をした時に「プツン」と限界を超えてしまうのです。
😰 「不治の病」と呼ばれる理由
なぜこの怪我が「不治の病」と呼ばれるのか?それには3つの理由があります。
1つ目は、治るまでに数ヶ月から数年かかること。エネルジコのように「全治9ヶ月以上」という診断は珍しくありません。
2つ目は、再発率がとても高いこと。傷ついた腱は瘢痕組織(傷跡のようなもの)に置き換わるのですが、これは元の腱ほど強くありません。そのため、復帰してもまた同じ場所を痛めてしまうケースが多いのです。
3つ目は、復帰できても元の強さに戻れないことが多いこと。腱の弾力性が失われてしまうため、スピードが出なくなったり、長い距離を走れなくなったりします。
日本獣医師会の報告でも、競走馬の運動器疾患の中で特に治療が難しく、経済的損失も大きい疾患として位置づけられています。では、エネルジコに復帰の可能性はあるのでしょうか?
❓ エネルジコは復帰できる?引退の可能性は?
多くのファンが気になるのは、「エネルジコはターフに戻ってこれるのか?」という点でしょう。
正直に言うと、かなり厳しい状況です。
📊 復帰率は約20%
浅屈腱炎を発症した競走馬の復帰率は、一説には約20%程度と言われています。
つまり、5頭に1頭しか
競馬場に戻ってこれない
さらに厳しいのは、復帰できたとしても再発する可能性が高いこと。ある調査によると、復帰後4戦以内に約60%の馬が再発してしまうというデータもあります。
🔬 「損傷率」が鍵を握る
ただし、全ての浅屈腱炎が同じ重症度というわけではありません。
医師は超音波検査で「損傷率」という指標を調べます。これは、腱全体のうちどれくらいの割合が傷ついているかを示す数値です。
⚠️ 注意点
「損傷率30%」のように表現されますが、実はこの数値が大きければ大きいほど重症というわけでもないのが難しいところ。損傷している部分の深さや位置によって、実際の重症度は変わってくるのです。
エネルジコの場合、現時点で損傷率は公表されていません。これによって復帰の可能性は大きく変わってきます。
💉 最新の治療法も
かつては「焼きごて」を当てる治療法が行われていた時代もありましたが、現在では医療技術が大きく進歩しています。
JRA競走馬リハビリテーションセンターでは、馬の骨髄から採取した幹細胞を培養し、傷ついた腱に注入する「幹細胞移植治療」も行われています。
また、体外衝撃波治療(ショックウェーブ治療)という最新技術も導入されており、これを使った場合の復帰率は75%という報告もあります。
ただし、これらの最先端治療を受けられるのは、エネルジコのように大レースで活躍した馬など、復帰後に高い期待が持てる馬に限られます。治療費そのものは25万円程度ですが、1年以上の休養期間中の飼育費が数百万円以上かかるため、経済的な判断も必要になってくるのです。
🏁 引退という選択肢も
エネルジコは父ドゥラメンテの最終世代産駒という、非常に貴重な血統を持っています(これについては後で詳しく説明します)。
そのため、無理に復帰を目指すのではなく、種牡馬として父の血を受け継ぐという選択肢もあります。これは馬にとっても、競馬界全体にとっても、意味のある道かもしれません。
過去には、浅屈腱炎から奇跡の復活を遂げた馬もいます。次のセクションで、その実例を見ていきましょう。
✨ 浅屈腱炎から復帰した競走馬の例――カネヒキリの奇跡
「でも、誰か復帰した馬はいないの?」
います。そして、その中には復帰後にさらなる活躍を見せた名馬もいるのです。
🌟 カネヒキリ:2年4ヶ月の休養からG1を3勝
浅屈腱炎からの復活で最も有名なのが、カネヒキリです。
2007年、4歳秋に右前脚の屈腱炎が判明。翌年秋には同じ箇所が再発してしまい、休養期間は約2年4ヶ月にも及びました。
「もう無理かもしれない」と誰もが思った中、2009年11月、カネヒキリは競馬場に帰ってきました。
奇跡の復活劇
復帰戦となった武蔵野ステークスでは9着に敗れましたが、その次のジャパンカップダートで見事に優勝。その後も東京大賞典、川崎記念とダートG1を3連勝する快進撃を見せたのです。
復活を遂げた名馬ランキングでも、カネヒキリは圧倒的な支持を集めています。
💪 オフサイドトラップ:不屈の闘志
もう一頭、忘れてはいけないのがオフサイドトラップです。
デビューして7ヶ月後に浅屈腱炎を発症。何度も再発に苦しみながら、担当厩務員が休むことなく治療とリハビリに付き添い続けました。
そして8歳になって、七夕賞、新潟記念、天皇賞(秋)を制覇。「不屈の闘志」と呼ばれる復活劇を成し遂げたのです。
😢 でも、再発する馬も多い
ただし、全ての馬がカネヒキリのように復活できるわけではありません。
トリオンフは小倉記念で重賞2勝目を飾った後に屈腱炎を発症。約1年の休養を経て復帰し、金杯で優勝を果たしましたが、その後再発して引退となりました。
📈 厳しい統計データ
ある分析によると、調べられた9頭のうち6頭が復帰後4戦以内に再発しています。
また、2年近く休養した馬は、1年程度で復帰できた馬に比べて、競走能力が戻りにくい傾向があるようです。
🙏 エネルジコに必要なこと
カネヒキリやオフサイドトラップの復活劇が教えてくれるのは、「焦らず、じっくりと治療に専念すること」の大切さです。
エネルジコの場合、まだ3歳という若さが希望材料。そして、シルクホースクラブという経験豊富なクラブの管理下にあることも心強い要素です。
今は無理をせず、しっかりと体を治すことに集中してほしいですね。
さて、エネルジコには競走馬としての価値以外にも、もう一つ重要な側面があります。それが「血統」の価値です。
🧬 ドゥラメンテ最終世代の貴重な血統――エネルジコの価値
実は、エネルジコには競走馬としての活躍以外にも、もう一つ大きな価値があります。それが「血統」です。
👑 父ドゥラメンテとは
エネルジコの父は、ドゥラメンテという種牡馬です。
ドゥラメンテは2015年に皐月賞と日本ダービーのクラシック二冠を制覇した名馬。その後もドバイシーマクラシックで2着、宝塚記念で2着と世界レベルで活躍しましたが、宝塚記念で競走能力を喪失する怪我を負い、引退して種牡馬になりました。
種牡馬としても大成功を収め、産駒からは菊花賞馬タイトルホルダー、桜花賞・オークス・秋華賞の三冠牝馬リバティアイランド、そして今年のスプリンターズステークスを制したルガルなど、10頭以上のG1馬を輩出しています。
😢 2021年8月31日、突然の訃報
しかし、2021年8月31日、ドゥラメンテは急性大腸炎のため、わずか9歳でこの世を去ってしまいました。
ドゥラメンテの種牡馬情報によると、順調ならリーディングサイアー(最も優秀な種牡馬のタイトル)を牽引するべき存在だっただけに、競馬界にとって大きな損失でした。
🌟 エネルジコは最終世代
ドゥラメンテが亡くなったのは2021年。種牡馬の子供は、交配した翌年に生まれます。
つまり、2020年に種付けされた馬が最後の世代となります。エネルジコは2022年生まれなので、まさにドゥラメンテの最終世代産駒なのです。
もう二度と、ドゥラメンテの子は生まれません。
そう考えると、エネルジコがどれほど貴重な存在か分かりますよね。
🎯 種牡馬としての可能性
菊花賞を制したという実績、そしてドゥラメンテ最終世代という血統的価値。
もしエネルジコが引退という選択をした場合、種牡馬として父の血を受け継ぐという道が待っています。
父ドゥラメンテの産駒は、芝の中長距離を得意とする馬が多く、母系にパワーやスタミナが豊富なダイナカール牝系の血を引いています。エネルジコもその特徴を受け継いでおり、将来的には優秀な産駒を輩出する可能性を秘めています。
競走馬として復帰するのも素晴らしいですが、種牡馬として次世代に命をつなぐのも、立派な「活躍」なのかもしれません。
📝 まとめ:エネルジコの未来に願いを込めて
エネルジコの浅屈腱炎発症について、知っておくべきポイントをまとめます。
- 菊花賞勝利からわずか4日後に浅屈腱炎が判明し、全治9ヶ月以上と診断された
- 浅屈腱炎は「不治の病」と呼ばれる深刻な怪我で、復帰率は約20%程度
- カネヒキリのように復活した馬もいるが、再発率が高く厳しい道のり
- ドゥラメンテ最終世代産駒という貴重な血統的価値がある
- 復帰か種牡馬入りか、エネルジコにとって最善の道を選んでほしい
復帰への道が険しいことは事実です。でも、陣営が「無理をせず」「じっくりと」治療に専念すれば、再びターフを駆ける姿を見られるかもしれません。
そして、もし引退という選択をしたとしても、種牡馬として父ドゥラメンテの血を受け継ぐという大きな使命が待っています。
どんな道を選んでも、エネルジコは菊花賞を制した名馬であり、ファンの心に残る存在です。
今は、ゆっくり療養して、
元気になってくれることを願いましょう。
エネルジコの未来に、幸多かれと。🍀
❓ よくある質問(FAQ)
📚 参考文献・情報源
本記事は以下の信頼できる情報源を参考に作成されています:
🏇 公式発表・ニュースソース
🔬 専門的研究・医学情報
- Wikipedia - 屈腱炎の詳細解説
- JRA競走馬総合研究所 - 屈腱炎研究論文
- 日本獣医師会雑誌 - 競走馬の腱損傷について
- JRA競走馬リハビリテーションセンター - 最新治療法
- CiNii Research - 浅屈腱炎発症の危険因子の解析
📖 復帰事例・歴史的データ
🧬 血統・種牡馬情報
※本記事の情報は2025年10月30日時点のものです。最新の状況については公式発表をご確認ください。