📰 2023年、宝塚歌劇団で現役生徒が命を絶った悲劇。
この事件を受けて、劇団は大規模な組織改革を進めてきました。
2024年9月には、長年「最大のタブー」とされてきた私設ファンクラブのチケット分配システムにもメスを入れ、「これで変わる」と期待された方も多いでしょう。
しかし、週刊文春が2025年10月に報じた内容は衝撃的でした。
⚠️ 改革から1年以上経った今も、チケットノルマは続いている——証拠メールがその実態を明かしたのです。
さらに、12万円を超える大量のカレンダーが取引されるという、一般にはほとんど知られていない実態も浮き彫りになりました。
華やかな舞台の裏側で、いったい何が起きているのでしょうか。
そして、なぜ改革してもこの問題は解決されないのでしょうか。

📖 この記事でわかること
🎭 宝塚歌劇団の「私設ファンクラブ」とは?劇団を支える特殊なシステム
まず、この問題を理解するために、宝塚の「私設ファンクラブ」という独特のシステムを知る必要があります。
📋 公式ファンクラブとは別に存在する「会」
宝塚歌劇団には、劇団が運営する公式ファンクラブ「宝塚友の会」があります。
しかし、それとは別に、ファンが自主的に運営する「私設ファンクラブ」が存在します。
宝塚ファンの間では「会(かい)」と呼ばれています。
この私設FCは、特定の生徒(タカラジェンヌ)一人ひとりに対して作られます。
つまり、人気の男役スターや主演級の生徒には、それぞれ専用の私設FCがあるのです。
✨ 私設FCでできること
私設FCに入会すると、以下のような活動ができます:
- お茶会への参加:生徒本人と直接交流できるファンイベント
- 入出待ち:劇場前でスターを待ち、見送ることができる
- チケットの取次:公演チケットを確保してもらえる
- 会員限定情報:公演情報や活動情報をいち早く入手
特に「チケットの取次」は、人気公演のチケットが手に入りにくい宝塚において、大きなメリットです。
🔍 実は劇団登録されている「公認の存在」
💡 「私設」という名前から「非公式の勝手な集まり」と思われるかもしれませんが、実は違います。
多くの私設FCは宝塚歌劇団に登録されている組織なのです。
劇団に登録された私設FCは、劇場でチケットを受け取ることができたり、一定の公式な活動が認められています。
つまり、劇団も私設FCの存在を認めており、ある意味で「協力関係」にあるのです。
この関係性が、後述する問題の根深さにつながっています。
📧 【証拠メール】改革2年後も続く"チケットノルマ"の実態
さて、本題に入りましょう。
2024年9月、宝塚歌劇団は私設FCのチケット分配システムを大きく変更しました。
🔄 改革前のシステム:トップFCからの「分配」
改革前は、こんな仕組みでした:
- 各組のトップスター(主演級)の私設FCが劇団から大量にチケットを確保
- トップFCが、同じ組の他の生徒のFCにチケットを分配
- 各FCは割り当てられたチケットを会員に販売
この仕組みの問題は、トップFCが分配の権限を握っていたことです。
「チケットをきちんと売りさばかないと、次の公演で割り当てを減らされる」という暗黙のプレッシャーが存在していました。
産経新聞の報道によると、余ったチケットは最終的にFCや生徒の親族が買い取ることもあったといいます。
✅ 改革後のシステム:各FCが直接申込
2024年9月の宙組公演から、システムが変わりました:
各生徒のFCが、トップFCを経由せず劇団に直接必要枚数を申し込む形に
これにより、トップFCの権限が弱まり、不当な圧力がなくなるはず——そう期待されました。
⚠️ しかし、ノルマは続いていた
ところが、週刊文春が2025年10月に報じたのは、改革後もチケットノルマが続いているという事実でした。
記事によると、改革後の宙組公演が始まった9月、ある生徒の私設FC会員のもとに届いたメールには、依然としてチケット販売の「ノルマ」を示唆する内容があったといいます。
「問題は解消されていません。今もまだ、チケットノルマは続いています」——FC会員の証言です。
システムは変わっても、実態は変わっていなかったのです。
💰 なぜ「カレンダー12万円分」を買わされるのか?ファンの悲痛な声
チケットノルマと並んで問題となっているのが、カレンダーの大量購入です。
😱 「カレンダー20枚買って」の衝撃
宝塚では、各生徒のパーソナルカレンダー(写真カレンダー)が販売されます。
ファンにとっては嬉しいグッズですが、問題はその購入枚数です。
ファンの証言によると、こんな経験があったといいます:
「カレンダー20枚買わないといけない。だから手伝って」
カレンダー1冊が約6,000円だとすると、
20枚で12万円です。
🤔 なぜカレンダーを大量に買うのか
なぜこんなことが起きるのでしょうか。
理由は、FC内での「貢献度」評価にあります。
私設FCの仕組みを知る人の説明によると:
- カレンダーの購入枚数は、FC内での「貢献度」としてポイント加算される
- 貢献度が高いと、次の公演でより良い席のチケットが確保できる
- お茶会での座席位置や、生徒との距離にも影響する
つまり、「推し(応援する生徒)の近くに行きたい」「良い席で観劇したい」と思えば思うほど、カレンダーを買わざるを得ない構造になっているのです。
💡 実は「現物なし」の方法も
驚くべきことに、一部のFCではこんな方法もあるといいます:
「大量に買ったことにして、実際はお金を振り込んで実物は送らない方法を選ばせてくれる会もある」
つまり、本当にカレンダー20枚が必要なわけではなく、お金を払うこと自体が目的になっているのです。
💔 ファンの複雑な思い
この問題について、ファンの声は複雑です。
「好きだから応援したい。でも、応援がお金を使うことだけになっていくのは悲しい」
「キャバクラやホストと同じじゃないかって思い始めたら、もう終わり」
そんな声も聞かれます。
一方で、「推しのためなら何でもしたい」と考え、積極的に貢献する人もいます。
😢 2023年の悲劇から始まった改革——何が変わり、何が変わらなかったのか
では、なぜこの問題が今、大きく取り上げられているのでしょうか。
それは、2023年に起きた痛ましい事件がきっかけです。
🕊️ 2023年9月30日の悲劇
2023年9月30日、宝塚歌劇団宙組に所属していた有愛きいさん(当時25歳)が、自宅マンションから飛び降りて亡くなりました。
遺族側の主張によると、有愛さんは:
- 新人公演のまとめ役として過重な業務を課されていた
- 1日3時間程度の睡眠しか取れない状態が1カ月以上続いていた
- 上級生から執拗な叱責を受けていた
これらがパワーハラスメントに該当すると訴えました。
🙏 劇団の対応と謝罪
当初、劇団は外部弁護士による調査で「いじめやハラスメントは確認できなかった」と発表しました。
しかし、この対応に遺族やファン、メディアから激しい批判が集まります。
再調査の結果、2024年3月28日、劇団側はパワーハラスメントを全面的に認定し、遺族に謝罪しました。
劇団の公式発表によると、少なくとも10名(上級生7名、プロデューサー2名、演出担当者1名)が関与していたとされています。
📋 改革の内容
この事件を受けて、宝塚歌劇団は以下のような改革を実施しました:
組織面:
- 2025年4月、株式会社として法人化
- 全劇団員を雇用契約に変更(それまではフリーランス扱い)
- ハラスメント研修の拡充
労働環境面:
- 週の公演回数を10回から9回に削減
- 稽古日数の増加
- 住宅補助手当の導入
- 出演者用食堂の無償化
そして、私設FCのチケット分配システム改革:
- 2024年9月から、各FCが劇団に直接申し込む形に変更
しかし、冒頭で述べたように、チケットノルマは続いているのです。
⚖️ 改革の限界
劇団は確かに多くの改革を実施しました。
しかし、私設FCの問題については、システムを変えただけでは解決しなかったのです。
なぜでしょうか。
それは、この問題が単なる「運用の問題」ではなく、宝塚歌劇団の構造そのものに根ざしているからです。
🔍 なぜ宝塚は私設ファンクラブ問題を改革できないのか?3つの構造的理由
改革してもノルマが続く——その根本原因を理解するには、宝塚と私設FCの相互依存関係を知る必要があります。
1️⃣ 理由1:劇団が私設FCに「依存」している
最も重要な理由がこれです。
劇団自身が、私設FCのチケット販売に依存しているのです。
宝塚の興行システムを分析すると、こんな構造が見えてきます:
- 宝塚の公演は「完売」が当たり前とされている
- しかし実際には、すべての公演が自然に完売するわけではない
- 私設FCが大量にチケットを確保し、会員に販売することで「完売」を維持している
つまり、私設FCは劇団にとって「チケット販売の保険」のような存在なのです。
もし私設FCがなくなれば、売れ行きが厳しい公演では空席が目立つかもしれません。
2️⃣ 理由2:生徒の人気を測る「指標」として機能している
私設FCは、劇団にとって生徒の人気を測るバロメーターでもあります。
- どの生徒のFCがチケットを多く捌けるか
- どの生徒のグッズがよく売れるか
これらのデータは、役の配分や昇格の判断材料になっているとされています。
一部の指摘によると、「チケット販売数が評価に影響する」という認識が生徒やFC関係者の間にあるといいます。
もちろん、劇団がこれを公式に認めているわけではありません。
しかし、このような「暗黙の評価システム」が存在する限り、FCも生徒も「とにかくチケットを売らなければ」というプレッシャーから逃れられません。
3️⃣ 理由3:年間数億円規模の経済効果
そして、最も生々しい理由がお金です。
FC経済の実態を知る人の分析によると:
「人気スターのFCともなれば、年間数億円にものぼる収益がある」
この数億円の中には:
- チケット販売の手数料(サポート代)
- お茶会の参加費
- グッズ販売
- カレンダーやパーソナル写真集の売上
などが含まれます。
劇団が直接運営しているわけではないため、劇団の収益に計上されるわけではありません。
しかし、私設FCが動かすこの巨額のお金が、宝塚経済圏全体を支えているのです。
もし劇団が私設FCを完全に廃止したら、この数億円規模のお金の流れが止まり、宝塚ビジネス全体が揺らぐ可能性があります。
🔗 相互依存という「罠」
劇団は私設FCに依存し、私設FCは劇団の公認を必要とする。
ファンは推しを応援したいから私設FCに入り、生徒は評価を上げたいからチケット販売を意識する。
この相互依存の構造こそが、問題を改革できない根本原因なのです。
🌟 礼真琴退団後の宝塚——これからどうなる?
さて、この問題を抱える宝塚歌劇団は、今大きな転換期を迎えています。
👋 トップスター・礼真琴の退団
2025年8月10日、星組トップスター・礼真琴さんが宝塚歌劇団を退団しました。
礼真琴さんは:
- 2009年に首席で入団
- 2019年に星組トップスターに就任
- 卓越した歌唱力で「トップオブトップ」と呼ばれた
- 2025年1月には日本武道館でコンサートを開催
彼女の退団は、単なる一人のスターの卒業ではありません。
礼真琴さんは、2023年の事件後も宝塚を支え続けた象徴的存在でした。
🆕 新しい時代の宝塚へ
礼真琴さんの退団後、宝塚は新たなトップスター体制で進んでいきます。
同時に、改革も継続されています。
劇団の改革方針によると、今後も:
- ハラスメント研修の定期実施
- 労働環境のさらなる改善
- 若年層への支援強化
などが進められる予定です。
🔮 私設FC問題の今後
では、私設FCの問題はどうなるのでしょうか。
正直に言えば、すぐに解決することは難しいでしょう。
なぜなら、前述したように、この問題は単純な「悪習の廃止」ではなく、宝塚のビジネスモデルそのものに関わっているからです。
しかし、今回の週刊文春の報道により、「改革したのに変わっていない」という事実が広く知られることになりました。
この社会的注目が、さらなる改革の圧力になる可能性はあります。
💝 ファンにできること
では、宝塚を愛するファンには何ができるでしょうか。
一つは、「健全な応援のかたち」を模索することです。
私設FCに入らなくても、公式FCや一般販売でチケットを取り、劇場に足を運ぶことで応援はできます。
SNSで作品の感想を共有することも、立派な応援です。
「推しを応援したい」という純粋な気持ちが、お金を使うことと同義になってしまわないように。
それが、本当の意味で宝塚を、そして生徒たちを支えることにつながるのかもしれません。
📌 この記事のポイントまとめ
- 私設ファンクラブとは:ファンが運営する応援組織で、多くは劇団に登録されている「公認」の存在
- チケットノルマの実態:2024年9月に改革されたものの、週刊文春の報道によると実態は続いている
- カレンダー12万円問題:FC内での「貢献度」を上げるため、カレンダー20枚(約12万円)の購入を求められることも
- 2023年の悲劇:宙組生徒・有愛きいさんの自死がきっかけで大規模な組織改革が始まった
- 改革できない理由:劇団が私設FCに依存している構造的問題がある(チケット販売、人気指標、経済効果)
- これから:礼真琴退団後も改革は続くが、根本的解決には時間がかかる見込み
🤔 あなたはこの問題について、どう思いますか?
「推しを応援したい」という純粋な気持ちと、現実のビジネス構造のバランスを、どう取るべきなのでしょうか。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1: 宝塚歌劇団の私設ファンクラブとは何ですか?
ファンが自主的に運営する応援組織で、特定の生徒一人ひとりに対して作られます。お茶会への参加やチケットの取次などの活動ができ、多くは劇団に登録されている公認の存在です。
Q2: チケットノルマとは何ですか?
私設FCが劇団から確保したチケットを会員に販売する際、一定枚数の販売が暗黙のうちに求められる仕組みです。2024年9月に分配システムが改革されましたが、週刊文春の報道によると実態は続いているとされています。
Q3: なぜカレンダーを大量に買う必要があるのですか?
FC内での「貢献度」評価システムがあり、カレンダー購入枚数がポイントとして加算されます。貢献度が高いと、より良い席のチケット確保やお茶会での好位置につながるため、ファンは大量購入を求められることがあります。
Q4: 2023年の事件後、宝塚はどんな改革を行いましたか?
株式会社化、全劇団員の雇用契約化、ハラスメント研修の拡充、週の公演回数削減、住宅補助手当導入、そして私設FCのチケット分配システム変更など、多岐にわたる改革を実施しました。
Q5: なぜ宝塚は私設FC問題を根本的に改革できないのですか?
劇団が私設FCのチケット販売に依存している構造があり、生徒の人気を測る指標としても機能し、年間数億円規模の経済効果を生んでいるためです。この相互依存関係が、根本的な改革を困難にしています。
Q6: 礼真琴さんの退団後、宝塚はどうなりますか?
新たなトップスター体制で進んでいきます。改革も継続されており、ハラスメント研修や労働環境改善が進められる予定ですが、私設FC問題の根本的解決にはまだ時間がかかると考えられています。