リアルタイムニュース.com

今を逃さない。瞬間を捉える。あなたの時代を映す鏡

安倍元首相の解剖で潰瘍性大腸炎が見つからなかった理由を医学的に解説

2025年10月30日、山上徹也被告の裁判で、安倍元首相の司法解剖を担当した医師が証人として出廷しました。

そこで明かされたのは、驚くべき事実。

「肉眼的・病理学的にも潰瘍性大腸炎は認められなかった」

この証言がXでトレンド入りし、大きな波紋を広げています。「え、病気は嘘だったの?」そんな疑問を持った人も多いはず。

でも実は、これは医学的には全く不思議なことではありません。むしろ、治療がうまくいっている証拠とも言えるのです。

この記事では、なぜ解剖で潰瘍性大腸炎が「見つからなかった」のか、10代でもわかるように解説します。


 

⚖️ 解剖医が証言した内容

法廷で証言する医師のイメージを生成AIで作成したリアルな写真

法廷で証言する医師のイメージを生成AIで作成したリアルな写真




2025年10月30日、奈良地裁での山上徹也被告の裁判で、安倍元首相の司法解剖を担当した奈良県立医科大学の法医学教授が証人として出廷しました。

解剖は2022年7月8日の午後10時40分から翌日午前5時10分まで、約6時間半にわたって行われました。


その中で、解剖医は次のように証言しています。

💬 「肉眼的・病理学的にも潰瘍性大腸炎は認められなかった」

つまり、目で見ても、顕微鏡で組織を調べても、潰瘍性大腸炎の痕跡が見当たらなかったということです。


この証言は、弾道の軌跡や弾丸の行方など、事件の真相解明に関する証言とともに行われました。しかし、SNS上では病気に関する証言のほうが大きな話題となり、「潰瘍性大腸炎」がXのトレンド入りする事態に。

「やっぱり病気は嘘だったのか」「詐病だったのでは」といった声も一部で上がりましたが、実はこれは医学的に説明できることなのです。


 

 

 

🏥 潰瘍性大腸炎とは何か

そもそも潰瘍性大腸炎とは、どんな病気なのでしょうか。

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起きて、ただれたり潰瘍ができたりする病気です。原因ははっきりわかっていませんが、免疫の異常が関わっていると考えられています。


主な症状は次の通りです。

  • 血便(血が混じった便)
  • 下痢(1日に10回以上になることも)
  • 腹痛
  • 発熱
  • 体重減少

 

重症になると、1日に何十回もトイレに行かなければならず、日常生活に大きな支障が出ます。

そして、この病気は国の指定難病の一つです。完治させる治療法がまだ見つかっていないため、国が医療費の助成を行っています。


📊 患者数はどれくらい?

厚生労働省の発表によると、日本国内で推定約22万人。つまり、日本人の約1000人に1人がこの病気を抱えていることになります。

決して珍しい病気ではありません。むしろ、年々患者数は増加傾向にあります。

発症しやすい年齢は20代がピークですが、10代から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。男女差はほとんどありません。


 

 

 

🔄 寛解期と活動期の違い

ここが最も重要なポイントです。

潰瘍性大腸炎には、「活動期」と「寛解期(かんかいき)」という2つの時期があります。


🔴 活動期とは

活動期は、症状が出ている時期です。

大腸の粘膜に炎症が起きていて、内視鏡で見ると粘膜が赤くただれ、潰瘍ができ、触れるとすぐに出血してしまう状態です。血便や下痢、腹痛などの症状があります。


🟢 寛解期とは

一方、寛解期は、症状が落ち着いている時期です。

武田薬品工業の医療情報サイトによると、寛解期の大腸粘膜は「炎症が完全に消失し、一見して正常の粘膜と見分けがつかない、あるいは瘢痕(傷跡)のみを認める状態」とされています。


✨ つまり、治療がうまくいっていると、大腸の内側は健康な人とほとんど変わらないくらい綺麗になるのです。

内視鏡で見ても、正常な粘膜と区別がつかないほど。血管もくっきり透けて見えます。

これが、解剖で「潰瘍性大腸炎が認められなかった」理由です。


安倍元首相が銃撃された2022年7月8日の時点で寛解期だった場合、大腸の粘膜は綺麗な状態だったと考えられます。そのため、解剖で肉眼的にも病理学的にも所見が見当たらなかったのです。


 

 

 

❓ 寛解期でも完治ではない理由

「じゃあ、綺麗になったってことは治ったんじゃないの?」

そう思う人もいるでしょう。でも、違います。


潰瘍性大腸炎は、寛解期になっても「完治」したわけではありません。

日本経済新聞の記事でも説明されているように、この病気は完治が難しく、多くの患者さんは活動期と寛解期を繰り返します。


寛解期から再び活動期に戻ることを「再燃(さいねん)」と言います。


🔬 なぜ完治しないのか

理由は、原因が完全には解明されていないからです。遺伝的な要因、腸内細菌、食生活、免疫の異常など、さまざまな要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

そのため、症状が治まっても、根本的な原因は残ったまま。いつ再燃するかわからないのです。


実際、ファイザーの医療情報サイトによると、潰瘍性大腸炎患者さんの約50%は「再燃寛解型」、つまり症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すタイプです。


💊 生涯にわたる治療が必要

だからこそ、寛解期でも薬を飲み続ける必要があります。

5-ASA製剤(メサラジンなど)という炎症を抑える薬を毎日きちんと飲むことで、寛解期を長く維持できることがわかっています。


📈 調査結果

薬をきちんと飲んでいた患者さんの約90%が寛解を維持できた一方、飲まなかった患者さんでは約60%が再燃したという結果が出ています。

つまり、潰瘍性大腸炎は「症状が消える病気」ではなく、「症状を抑え続ける病気」なのです。


 

 

 

📅 安倍元首相の治療経過

では、安倍元首相はどのような経過をたどっていたのでしょうか。

安倍氏は17歳の時に潰瘍性大腸炎を発症したと、2008年の月刊誌「文芸春秋」で公表しています。


🔻 第1次政権の辞任(2007年)

2007年9月、第1次安倍政権の時には症状が悪化し、これを理由に総理大臣を辞任しました。当時はかなり症状が厳しかったと見られています。


💊 新薬の登場

しかし、その後に状況が変わります。

2009年12月に「アサコール」という新しい5-ASA製剤が登場し、安倍氏はこの薬を使うことで症状をコントロールできるようになったのです。

日本経済新聞の報道によると、この新薬により病状が改善し、2012年12月に再び総理大臣に就任できるまでになりました。


🔺 第2次政権(2012-2020年)

第2次安倍政権は7年8か月という長期政権となりました。この間、寛解期を長く維持できていたと考えられます。


🔻 2度目の辞任(2020年)

そして2020年8月、再び潰瘍性大腸炎の再燃を理由に退陣。日経メディカルの記事によると、2020年6月の定期健診で再燃の兆候が見られ、7月中旬から体調に異変が生じたとされています。


❔ 2022年7月時点の状態

その後、2022年7月8日に銃撃されるまでの約2年間、安倍氏がどのような病状だったかは公表されていません。

ただし、解剖で所見が認められなかったということは、この時点では寛解期だった可能性が高いということです。薬による治療が効果を発揮していたと考えられます。


 

 

 

💡 多くの人が誤解している潰瘍性大腸炎の真実

最後に、多くの人が知らない潰瘍性大腸炎の真実をお伝えします。


📊 真実1:患者数は意外と多い

先ほども触れましたが、日本国内で約22万人。1000人に1人という割合は、決して少なくありません。

あなたの学校や職場にも、この病気を抱えている人がいる可能性は十分にあります。


👥 真実2:若い人に多い病気

発症のピークは20代。10代から発症する人も少なくありません

「難病」と聞くと高齢者の病気をイメージするかもしれませんが、潰瘍性大腸炎は若い世代に多い病気なのです。


🏃 真実3:適切な治療で普通の生活ができる

「難病」という言葉から、寝たきりになるような深刻な病気を想像するかもしれません。

でも実際には、適切な治療を続けることで、多くの患者さんが健康な人とほぼ同じ生活を送っています。仕事もできますし、結婚も出産も可能です。

寛解期には、食事制限もそれほど厳しくありません。アルコールも少量なら問題ないとされています。


👁️ 真実4:見た目ではわからない

寛解期の患者さんは、外から見ても全く病気があるようには見えません。

そのため、「病気なんて嘘だろう」と心ない言葉をかけられることもあります。でも、それは大きな誤解です。

症状が見えないだけで、いつ再燃するかわからない不安を抱えながら生活しているのです。


⚠️ 真実5:大腸がんのリスクが上がる

発症から10年以上経過すると、大腸がんのリスクが高くなることが知られています。

そのため、定期的な内視鏡検査が必要です。特に病変範囲が広い人ほど、がん化のリスクが高くなります。


 


 

📝 まとめ:寛解期の理解が誤解を解く鍵

今回の解剖医の証言は、多くの人に衝撃を与えました。

しかし、医学的に見れば全く不思議なことではありません。むしろ、治療が効果を発揮していた証拠とも言えます。


✅ 重要なポイント

  • 潰瘍性大腸炎は寛解期になると、大腸の粘膜が正常に近い状態まで綺麗になる
  • 寛解期でも完治ではなく、再燃する可能性があるため生涯にわたる治療が必要
  • 日本に約22万人の患者がおり、決して珍しい病気ではない
  • 適切な治療で寛解期を維持すれば、健康な人とほぼ同じ生活ができる
  • 見た目ではわからないため、誤解や偏見の対象になりやすい

この記事を読んで、潰瘍性大腸炎についての理解が深まったでしょうか。

もし周りに「見つからなかったから嘘だったんだ」と言っている人がいたら、ぜひこの記事の内容を教えてあげてください。

病気を抱えながら頑張っている多くの患者さんのためにも、正しい理解が広まることを願っています。


 

❓ よくある質問(FAQ)

Q1. なぜ解剖で潰瘍性大腸炎が見つからなかったのですか?

潰瘍性大腸炎には寛解期という症状が落ち着く時期があり、その時は大腸の粘膜が正常に近い状態まで回復します。そのため、寛解期には肉眼的にも病理学的にも所見が見つからないことがあります。

Q2. 寛解期になったら完治したということですか?

いいえ、寛解期は症状が落ち着いているだけで、完治ではありません。再び症状が悪化する「再燃」のリスクがあるため、生涯にわたって薬を飲み続ける必要があります。

Q3. 潰瘍性大腸炎の患者はどれくらいいますか?

日本国内で推定約22万人の患者がいます。これは日本人の約1000人に1人という割合で、決して珍しい病気ではありません。年々患者数は増加傾向にあります。

Q4. 潰瘍性大腸炎の患者は普通の生活ができますか?

適切な治療を続けることで、多くの患者さんが健康な人とほぼ同じ生活を送っています。仕事、結婚、出産も可能で、寛解期には食事制限もそれほど厳しくありません。

Q5. 安倍元首相の病気は本当だったのですか?

医学的には、寛解期に所見が見つからないことは珍しくありません。解剖で見つからなかったことは、むしろ治療が効果を発揮していた証拠と考えられます。

Q6. 潰瘍性大腸炎はどんな年齢層に多いですか?

発症のピークは20代ですが、10代から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。男女差はほとんどなく、若い世代に多い病気として知られています。

 

プライバシーポリシー / 運営者情報 / お問い合わせ