
🌍 民主主義圏300人の議員が結束
中国総領事の過激投稿を非難し、日本支持を表明した背景とは
2025年11月20日、世界40カ国以上の議員約300人が結束し、中国の外交官による過激な投稿を非難する声明を発表しました。
同時に、高市早苗首相の台湾有事に関する発言を「極めて正当」と評価し、各国政府に「日本への支持表明」を求めたのです。
一体何があったのでしょうか。外交官の衝撃的な言葉、首相の答弁、そして国際社会の反応を、時系列で分かりやすく解説します。
📋 この記事でわかること
🌐 IPACが薛剣氏の投稿を非難、各国に「日本支持」を要求
2025年11月20日、対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)が重要な声明を発表しました。
IPACは日米欧など民主主義圏の国会議員で構成される国際組織です。約300人の議員が加盟しており、中国の人権問題などを監視しています。
この声明で、IPACは中国の薛剣(せつけん)・駐大阪総領事がSNSで行った投稿を「威圧的発言」として強く非難しました。
産経新聞の報道によると、声明の要点はこうです。
💬 IPACの声明内容
「IPACの加盟議員一同は、中国の大阪総領事が高市総理大臣に対して行った威圧的な発言を強く非難いたします」
「このような暴力的な言辞は断じて容認できません」
さらにIPACは、高市首相の台湾有事に関する答弁について、こう評価しました。
「高市総理が台湾海峡の緊張激化に伴う広範なリスクに警鐘を鳴らされたことは極めて正当であると考えます」
そして各国政府に対し、日本への明確な支持を公に表明することを求めたのです。
実は、この声明に名を連ねているのは、イギリス、アメリカ、オーストラリア、リトアニア、チェコ、台湾など、40以上の国と地域の議員たち。日本も自民党の逢沢一郎衆院議員や国民民主党の舟山康江参院議員らが加盟しています。
🌏 つまりこういうこと
世界中の民主主義国の議員が「日本を支持する」と表明したわけです。
でも、一体なぜこんな声明が出されたのでしょうか。薛剣氏は何を言ったのでしょうか。
😱 薛剣氏の投稿内容「汚い首は斬ってやる」
薛剣氏がSNSに投稿したのは、2025年11月8日の深夜のことでした。
Yahoo!ニュース(J-CASTニュース)の報道によると、その内容は多くの人に衝撃を与えるものでした。
⚠️ 薛剣氏の実際の投稿
「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」
この投稿には、怒り顔の絵文字まで添えられていました。
薛剣氏は、朝日新聞デジタルの記事を引用する形でこの投稿を行いました。その記事は、高市早苗首相が台湾有事について「存立危機事態になりうる」と答弁したことを伝えるものでした。
「汚い首は斬ってやる」という表現は、外交官の言葉としてはあまりにも過激です。多くの人が「これは殺害予告では?」と受け止めました。
投稿は大きな波紋を広げ、日本政府が抗議する事態になりました。その後、投稿は削除されましたが、スクリーンショットで記録されており、多くのメディアで報じられました。
💡 実は
この投稿が行われたのは深夜でした。感情的になって投稿してしまったのかもしれません。
しかし、外交官という立場でこのような言葉を使うことは、外交慣行上の一線を越えていると指摘されています。
では、薛剣氏がこれほど激しく反応した高市首相の発言とは、どのようなものだったのでしょうか。
🎯 高市首相の答弁内容「台湾有事は存立危機事態」
薛剣氏が反応した高市首相の答弁は、2025年11月7日の衆議院予算委員会で行われました。
時事通信の報道によると、高市首相はこう述べました。
📢 高市首相の答弁
「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだと、私は考えます」
この「存立危機事態」という言葉、少し難しいですよね。簡単に説明しましょう。
存立危機事態とは、2015年に成立した安全保障関連法で定められた概念です。「日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態」を指します。
🤔 もっと分かりやすく言うと
もし中国が台湾を攻撃したとします。そうすると、アメリカ軍が台湾を助けに行きます。
そのアメリカ軍を中国が攻撃しようとしたとき、日本は「集団的自衛権」を使って自衛隊を派遣できる——これが「存立危機事態」です。
つまり、台湾で戦争が起きたら、状況によっては日本も武力行使に踏み切る可能性がある、と高市首相は述べたわけです。
実は、これは歴代の総理大臣が慎重に避けてきた発言でした。
なぜなら、具体的にどのような状況が「存立危機事態」にあたるかを明言すると、中国を刺激することになるからです。安倍晋三元首相でさえ、在任中はこのような具体例を示すことを避けていました。
しかし高市首相は、「最悪のケースを想定することは重要」として、台湾有事が存立危機事態になりうると初めて明言したのです。
これに対し、中国側は強く反発しました。中国外務省は「内政への粗暴な干渉」と非難し、薛剣氏の過激な投稿につながったわけです。
ところで、この声明を出したIPACとは、どのような組織なのでしょうか。
🏛️ IPACとは?約300人の国際議員連盟
IPACは「Inter-Parliamentary Alliance on China」の略で、日本語では「対中政策に関する列国議会連盟」と呼ばれます。
Wikipediaの情報によると、この組織が設立されたのは、2020年6月4日です。
📅 実はこの日付には、深い意味があります
6月4日は、1989年に中国で天安門事件が起きた日なのです。民主化を求める学生や市民のデモを、中国政府が武力で鎮圧した事件です。
IPACは、この歴史的な日に合わせて設立されました。「中国の人権侵害を忘れない」というメッセージが込められています。
設立のきっかけとなったのは、中国が香港に対して国家安全法を導入したことでした。この法律により、香港の自治や言論の自由が大きく制限されることになったのです。
IPACの主な活動内容はこうです。
- 中国の人権侵害や強権的な政策を監視
- 各国の議員が情報を共有し、協調して対応策を考える
- 政府間の外交とは別に、議員同士が連携する
現在、IPACには40以上の国と地域から約300人の議員が加盟しています。イギリス保守党の元党首イアン・ダンカン・スミスが議長を務めています。
日本からは、自民党の逢沢一郎衆院議員、国民民主党の舟山康江参院議員、元衆院議員の山尾志桜里氏らが参加しています。
✨ IPACの特徴
与党も野党も関係なく、超党派で活動していることです。
「民主主義の価値を守る」という共通の目標のもとに、様々な立場の議員が協力しているのです。
2025年11月7、8日には、ブリュッセルで年次総会が開かれました。そこには台湾の蕭美琴副総統も招かれ、日本からは維新の岩谷良平前幹事長が出席しました。
つまり、IPACは政府とは別に、議員レベルで中国問題に対応するネットワークを作っているわけです。今回の声明も、このネットワークが迅速に機能した結果といえます。
では、声明で非難された薛剣氏とは、どのような人物なのでしょうか。
🐺 薛剣氏の過去の問題発言と「戦狼外交」
薛剣氏は1968年生まれ、中国外交部(外務省)に就職後、一貫して日本担当を務めてきました。
JBpressの詳細な分析記事によると、2021年6月から駐大阪総領事として日本に赴任しています。同年8月にSNSのアカウントを開設してから、過激な発言を繰り返してきました。
⚡ 実は、今回の「汚い首は斬る」発言は初めてではありません
過去にも何度も問題発言を行っているのです。
薛剣氏の過去の主な問題発言:
- 2021年:「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!」と投稿し、批判を浴びる
- 2024年10月:日本の選挙に関して「比例代表の投票用紙には『れいわ』とお書きください」と投稿(明らかな内政干渉として日本政府が抗議)
- その他にも、香港の民主派を「駆除」、ダライ・ラマ14世を「農奴主」、アメリカの官僚を「気ちがい」と呼ぶなど、外交官としては考えられない表現を使用
このような攻撃的で強硬な外交姿勢は、「戦狼外交」と呼ばれます。
「戦狼外交」とは、中国の映画「戦狼」(ウルフ・ウォリアー)から来た言葉です。映画では、主人公の特殊部隊員が敵を次々と倒していきます。
🎬 「戦狼外交」とは
中国の外交官が、まるで映画のように攻撃的な言動を取ることから、このように呼ばれるようになりました。
習近平政権になってから、このスタイルの外交官が増えたとされています。
薛剣氏は、その代表的な人物の一人です。SNSを積極的に使い、中国の立場を強硬に主張し、批判する相手には激しい言葉で反撃します。
ただし、興味深いことに、薛剣氏は若い頃、民主化運動に参加していたというリベラルな経歴を持っています。しかし40代でタカ派の戦狼外交官に転向したとされています。
今回の「首を斬る」発言も、こうした薛剣氏の一貫した姿勢の延長線上にあるわけです。
📊 その後の展開:日本政府の抗議と中国の反発
薛剣氏の投稿が大きな問題となった後、日本政府は迅速に動きました。
2025年11月10日、日本経済新聞の報道によると、木原稔官房長官は記者会見で「中国の在外公館の長の言論として極めて不適切」と強く批判。東京と北京で中国側に複数回抗議したことを明らかにしました。
アメリカのジョージ・グラス駐日大使もSNSで「中国総領事は日本国民を脅迫している」と非難声明を発表しました。
地方レベルでも動きがありました。
🏛️ 大阪市議会の決議(2025年11月14日)
大阪市議会は薛剣氏の投稿に対して謝罪を求める決議を可決しました。
この決議は、大阪維新の会、公明党、自民系2会派が共同で提出したもので、全会一致で可決されました。
決議には「国民の不安を煽るような印象を与え、これまでの友好関係を極めて棄損する行動であり決して看過できない」と記されています。
実は、地方議会が外国の外交官の発言に対して決議を出すのは非常に珍しいことです。しかも全会一致というのは、与野党を超えて問題視されたことを示しています。
⚠️ 一方、中国側も強硬な姿勢を続けました
- 2025年11月14日:中国外務省が国民に対して日本への渡航を控えるよう促す
- 2025年11月16日:中国教育省が日本への留学を計画する学生に対し、「現地における中国人の安全リスクが高まっている」と注意喚起
この発言をきっかけに、中国は日本への渡航自粛要請や尖閣諸島への船舶侵入など、様々な対抗措置を取っています。詳しくはこちらの記事で解説しています。
事態は、単なる外交官の失言では済まない、日中関係全体に影響を与える問題に発展しているのです。
こうした中で発表されたのが、冒頭で紹介したIPACの声明でした。国際社会が日本を支持する姿勢を明確に示したことで、日本国内では「孤立していない」という安心感が広がりました。
📝 まとめ:国際社会が示した「日本支持」の意味
今回の一連の出来事をまとめると、次のようになります。
📅 出来事の時系列
- 2025年11月7日:高市首相が「台湾有事は存立危機事態になりうる」と答弁
- 2025年11月8日:薛剣氏が「汚い首は斬ってやる」とSNSに投稿(その後削除)
- 2025年11月10日:日本政府が中国側に抗議
- 2025年11月14日:大阪市議会が謝罪を求める決議を全会一致で可決
- 2025年11月20日:IPACが薛剣氏の投稿を非難し、高市首相の発言を「極めて正当」と評価
この事態は、台湾問題をめぐる日中の深刻な対立を浮き彫りにしました。
高市首相の答弁は、「戦略的曖昧さ」を捨てて手の内を明かした発言として、専門家の間でも評価が分かれています。
一方で、外交官による過激な発言や、それに対する国際的な批判の応酬は、対話による解決を難しくする可能性があります。
しかしIPACの声明は、日本が国際社会から孤立していないこと、民主主義圏の国々が日本を支持していることを明確に示しました。
💭 考えてみよう
この問題は今後、日中関係だけでなく、台湾海峡の緊張、アジア太平洋地域の安全保障にも影響を与えていく可能性があります。
私たち一人ひとりも、この問題について考え、議論していくことが大切です。あなたは、今回の一連の出来事をどう思いますか?
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. IPACとは何ですか?
IPACは「対中政策に関する列国議会連盟」の略称で、日米欧など民主主義圏の国会議員約300人で構成される国際組織です。中国の人権問題や強権的な政策を監視し、各国議員が情報共有と協調対応を行っています。
Q2. 薛剣氏は具体的に何と投稿したのですか?
2025年11月8日、薛剣氏は「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」とSNSに投稿しました。この投稿は外交官の言葉としては極めて過激で、殺害予告とも受け取れる内容として大きな問題となりました。
Q3. 高市首相の「存立危機事態」発言とは?
2025年11月7日、高市首相は「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得る」と答弁しました。これは台湾有事が日本の集団的自衛権行使の要件に該当する可能性を、歴代総理として初めて具体的に明言した発言です。
Q4. なぜIPACは声明を発表したのですか?
IPACは薛剣氏の過激な投稿を「威圧的発言」として強く非難し、同時に高市首相の台湾有事に関する発言を「極めて正当」と評価しました。民主主義圏の議員約300人が結束して日本支持を表明することで、国際社会の連帯を示す狙いがあります。
Q5. 「戦狼外交」とは何ですか?
「戦狼外交」とは、中国の映画「戦狼」から来た言葉で、中国の外交官が攻撃的で強硬な言動を取る外交スタイルを指します。習近平政権になってから、このスタイルの外交官が増えたとされ、薛剣氏はその代表的な人物の一人です。
Q6. 日本政府はどのように対応しましたか?
日本政府は2025年11月10日、木原稔官房長官が「極めて不適切」と強く批判し、東京と北京で中国側に複数回抗議しました。また大阪市議会は11月14日に謝罪を求める決議を全会一致で可決するなど、地方レベルでも異例の対応が取られました。
📚 参考文献
- 産経新聞「IPACが薛剣氏投稿を非難、各国に『日本支持を』」(2025年11月21日)
- Yahoo!ニュース(J-CASTニュース)「中国の駐大阪総領事、高市首相に『その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる』」
- 時事通信「『台湾有事は存立危機』波紋 高市首相答弁、立民が撤回要求」
- 日本経済新聞「大阪市議会、中国総領事のX投稿めぐり謝罪求める決議可決」(2025年11月14日)
- Wikipedia「対中政策に関する列国議会連盟」
- JBpress「さすがに度が過ぎる、高市首相に『殺害予告』した中国の戦狼外交官はどんな人物か?」
- Bloomberg「高市首相の台湾発言で中国の反発続く、長期化なら経済に悪影響指摘も」