これは作り話ではありません。2025年、実際に起きている事件です。
警察庁が初めて公表したデータによると、18歳未満の「性的ディープフェイク」被害は2025年1〜9月だけで79件。
被害者の半分以上が中学生で、小学生も4件含まれています。
さらに衝撃的なのは、加害者の5割超が「同じ学校の同級生や先輩」だという事実。
この記事では、なぜ子供同士でこんな事件が起きているのか、どんな罪に問われるのか、そして親や先生が今日からできる対策まで、警察庁の公式データと専門家の見解をもとに詳しく解説します。
📋 この記事でわかること
性的ディープフェイク被害79件、中学生が半数超という衝撃の実態
中学生が41件(51.9%)と最多で、高校生が25件(31.6%)、そして小学生も4件(5.1%)報告されています。
「性的ディープフェイク」とは、生成AIや画像加工アプリを使って、実在する人の写真から偽の性的画像を作り出す行為のこと。
「ディープラーニング(AI技術)」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた言葉です。
警察庁の公式発表によると、18歳未満の被害状況が公表されたのは今回が初めて。
2024年は1年間で110件の相談・通報がありましたが、2025年は9月時点ですでに79件と、微増傾向が続いています。
「うちの子はまだ大丈夫」とは言えない状況が、すでに始まっているのです。
では、誰がこんなことをしているのでしょうか。
その答えは、想像以上に身近なところにありました。
加害者の5割超が「同じ学校の同級生」という異常事態
時事通信の報道によると、ある男子中学生は同級生の女子生徒がSNSに投稿した画像を生成AIで裸の画像に加工し、他の同級生に「販売」していたといいます。
「いじめ」の延長のように軽く考えていたのかもしれません。
しかし、これは立派な犯罪です。
別の事例では、男子中学生らがLINEグループで性的画像を拡散。
そのグループから別のグループへ、さらにX(旧Twitter)へと広がったケースも確認されています。
被害相談を受けるレイ法律事務所の髙橋和典弁護士によると、こうした相談は「月に1、2件は来る」とのこと。
ここ2年で約30件の相談を受けたといいます。
「知らない大人から狙われる」というイメージとは、まったく違う実態が浮かび上がっています。
では、加害者はどこから写真を入手しているのでしょうか。
その手口は想像以上に身近なところに潜んでいます。
学校タブレット・行事アルバムまで悪用される手口の実態
警察庁が公表した事例では、男子中学生らが学校のタブレット端末を使い、行事アルバムに載っていた同級生の女子生徒の写真を入手。
それを生成AIで性的な画像に加工し、グループチャットで複数の同級生に拡散して補導されました。
SNSに投稿した写真も危険です。
InstagramやTikTokにアップした顔写真が、知らないうちにディープフェイクの素材として悪用されるケースが多発しています。
民間ネットパトロール団体「ひいらぎネット」によると、卒業アルバムの写真が悪用されるケースもあるとのこと。
「自衛する方法はほとんどない。誰もが被害者になる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。
全国初の立件事例
さらに深刻な事件も起きています。
2025年12月、名古屋市の元小学校教員・水藤翔太被告(34)が、生成AIで作成した児童のわいせつ画像を所持したとして追起訴されました。
生成AI作成画像の所持に児童ポルノ禁止法が適用されたのは全国初です。
「学校で使うものだから安心」とは言えない時代になりました。
こうした行為は、どのような罪に問われるのでしょうか。
性的ディープフェイクで問われる罪と罰則【一覧表付き】
「軽い気持ち」では済まされません。
| 罪名 | 罰則 |
|---|---|
| 名誉毀損罪 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 児童ポルノ禁止法違反(所持) | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 児童ポルノ禁止法違反(製造) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
| 児童ポルノ禁止法違反(公然陳列) | 5年以下の懲役または500万円以下の罰金 |
| わいせつ物頒布等罪 | 2年以下の懲役または250万円以下の罰金 |
| 著作権法違反 | 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金 |
2025年1〜9月だけで、検挙4件、補導6件が確認されています。
「自分は作っていない」は言い訳になりません。
では、なぜ子供たちはこれほど重大な犯罪に手を染めてしまうのでしょうか。
なぜ子供が加害者に?専門家が指摘する「共感性の欠如」
レイ法律事務所の髙橋弁護士は、こう指摘します。
「性的ディープフェイクは外的痛みが伴わない被害であるため、知的レベルの高い生徒や児童であってもその被害の共感性に欠けるんですね」
殴られれば痛い。物を壊されれば目に見える。
でも、偽の画像を作られても、被害者の体には傷がつきません。
だから「これくらい大丈夫だろう」と軽く考えてしまう。
学校の知的レベルに関係なく、どこでも起きうる問題なのです。
さらに厄介なのは、親の認識のズレ。
髙橋弁護士によると「親御さんも『まさかうちの子がそんなことをするはずがない』という誤認をしていることも多い」とのこと。
しかし、警察庁のデータが示すとおり、加害者の半数以上が「普通の学校の、普通の生徒」なのです。
では、保護者や教師は何ができるのでしょうか。
保護者・教師が今日からできる具体的な対策
髙橋弁護士は「子どもにスマホを持たせた段階で、親子で画像の取り扱いにおける配慮について話し合うべき」と指摘しています。
🗣️ 親子で話し合うべきこと
- SNSに顔写真を投稿すると、ディープフェイクの素材にされる可能性がある
- 友達の写真を加工してふざけて送るのは犯罪になりうる
- グループで送られてきた画像を拡散するのも罪になる
- 困ったことがあったらすぐに相談する
都内の公立中学の女性教諭は、校内でスマホを使った記念撮影をしてSNSに投稿した女子生徒に対し、こう指導したそうです。
「あなたたちの顔にAIで他人の裸の体をくっつけられネットに挙げられる可能性もある」
生々しい表現ですが、具体的に伝えないと危険性が伝わらないと判断したとのこと。
この教諭が保護者に連絡したところ、「放課後であればストーリーに投稿しても問題ない」という認識だったことに愕然としたといいます。
学校でも放課後でも、ネットに画像がアップされれば生成AIの素材になりうる。この認識を、大人がまず持つことが第一歩です。
最後に、万が一被害に遭った場合の相談窓口をまとめました。
被害に遭ったらどこに相談?窓口一覧
🆘 相談窓口
- 最寄りの警察署
- 警察相談専用電話「#9110」
- 教育委員会
- 学校のスクールカウンセラー
- 各都道府県の相談窓口
警察庁の啓発資料では、被害にあったときの相談先として、警察や教育委員会のほか、地方自治体の窓口も紹介されています。
国家公安委員会委員長の赤間二郎大臣は、保護者に向けてこうメッセージを発信しました。
「万が一、子供が被害に遭っていることに気付いた場合は、躊躇せず最寄りの警察署に相談してほしい」
性的ディープフェイクの画像は、一度拡散されると完全に削除することが極めて困難です。
いわゆる「デジタルタトゥー」として、被害者を長期間苦しめ続けます。
だからこそ、被害を見つけたらすぐに相談することが大切です。
まとめ
- 2025年1〜9月、18歳未満の性的ディープフェイク被害は79件。中学生が半数以上
- 加害者の53.2%が同じ学校の同級生や先輩
- 学校のタブレットや行事アルバムの写真も悪用されている
- 名誉毀損罪(最大3年懲役)、児童ポルノ禁止法違反(最大5年懲役)など重罪に問われる
- 「軽い気持ち」「知らなかった」は通用しない。今日から親子で話し合いを
よくある質問(FAQ)
Q. 性的ディープフェイクとは何ですか?
生成AIや画像加工アプリを使い、実在する人の写真から偽の性的画像を作り出す行為です。「ディープラーニング(AI技術)」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた言葉で、2025年は18歳未満の被害が79件報告されています。
Q. 性的ディープフェイクを作るとどんな罪に問われますか?
名誉毀損罪(最大3年懲役)、児童ポルノ禁止法違反(所持で最大1年、製造で最大3年、公然陳列で最大5年懲役)、わいせつ物頒布等罪(最大2年懲役)などの重罪に問われる可能性があります。
Q. なぜ加害者の半数以上が同級生なのですか?
専門家によると、性的ディープフェイクは「外的痛みが伴わない被害」のため、子供でも被害の深刻さを理解しにくいことが原因とされています。身近な同級生の写真を簡単に入手でき、生成AIで手軽に加工できる環境が犯罪を助長しています。
Q. 子供が被害に遭った場合、どこに相談すればいいですか?
まず最寄りの警察署、または警察相談専用電話「#9110」に相談してください。教育委員会、学校のスクールカウンセラー、各都道府県の相談窓口も利用できます。早期相談が被害拡大防止の鍵です。
参考文献