原発の安全を左右する数値を、電力会社が意図的に偽っていた──規制委員長は「明らかな捏造」と断言した。
中部電力・浜岡原発の安全審査で、データ不正が発覚しました。
担当者は「揺れを小さく見せたかった」と証言しています。
なぜこんなことが起きたのか、何が問題なのか、わかりやすく解説します。
浜岡原発で何が起きた?データ不正の中身
中部電力は、原発が耐えるべき「最大の揺れ」を決める作業で、都合の良いデータだけを選んで小さく見せていました。
この「最大の揺れ」は、専門用語で「基準地震動」と呼ばれています。
簡単に言えば、「この原発は最大でこのくらいの地震に耐えられるように作る」という設計の基準です。
原発の耐震性を決める、いわば「原発の命綱」となる数値
読売新聞によると、中部電力は2019年1月の審査会合で、この基準地震動を策定する際に「都合の良いデータを意図的に選定」していたとされています。
あなたは「揺れの強さ」と聞いて何を思い浮かべますか?
震度5とか6とか、ニュースで見る数字かもしれません。
実は、基準地震動は「ガル」という単位で表されます。
これは加速度の単位で、数字が大きいほど揺れが激しいことを意味します。
💡 ポイント
基準地震動は電力会社自身が調査し、策定します。つまり、審査される側が、審査の基準となる数字を自分で決めるという構造になっています。
福島原発事故の後、2013年に新規制基準ができて、地震対策は大幅に厳しくなりました。
電力会社は以前より詳しいデータを提出しなければならなくなったのです。
そんな中で、中部電力は「都合の良いデータを選んだ」。
命に直結する数値を、意図的に小さく見せていたことになります。
では、規制委員会はこの不正をどう判断したのでしょうか。
規制委が「捏造」と断言|異例の強い言葉の意味
原子力規制委員会は1月7日の定例会で、この問題を「不正行為」と正式に判断しました。
そして山中伸介委員長は「明らかな捏造」と断言しています。
「捏造」という言葉、聞いたことはあっても、行政機関がここまで強い表現を使うのは珍しいことです。
「改ざん」と「捏造」の違い
「改ざん」は既存のデータを書き換えること。
一方、「捏造」は存在しないものを作り出す、あるいは事実と異なることを意図的に示すことを指します。
規制委員会が「捏造」という言葉を選んだのは、「恣意的に都合の良いデータを選んだ」という行為の悪質性を示すためと考えられます。
「どこが信用できないか すでに分からない」
── 規制委員会の発言(TBS NEWS DIG)
一度信頼を失うと、どの部分が正しくてどの部分が間違っているのか、すべてを疑わなければならなくなるのです。
また、「審査の継続は不可能」との意見も出ており、規制委は1月14日の次回定例会で法律に基づく対応を検討する予定です。
日本経済新聞によると、規制委は中部電力本店に立ち入り検査を実施する方針も示しています。
しかし、なぜ中部電力はこんなリスクを冒したのでしょうか。
なぜ不正に走った?「焦り」の正体
担当者は「時間的制約があった」「揺れを小さく見せたかった」と証言しています。
10年を超える審査への焦りが、不正を生んだ可能性があります。
審査期間:10年以上
小学1年生が成人するまでの時間
浜岡原発の安全審査は2014年から始まり、すでに10年以上が経過しています。
毎日新聞によると、原子力部門の担当者数人が関与を認めており、組織的なデータ操作の可能性も指摘されています。
実は中部電力では、昨年11月にも工事費未精算放置問題が発覚し、原子力本部長の副社長ら幹部2人が引責辞任しています。
つまり、不正は今回が初めてではないのです。
ここで注目したいのが、専門家の指摘です。
🔍 専門家の見解
東京大学の岡本孝司教授は読売新聞の取材に対し、「恣意的に小さな波を選んだ」と規制庁担当者の発言を紹介した上で、
「無理に小さな波にしなくても対応できたのでは」と述べています。
つまり、不正をしなくても審査に対応できた可能性があるというのです。
なのに、なぜわざわざリスクを冒して嘘をついたのか。
東京新聞は社説で「安全より速さ」の意識が広がっていた可能性を指摘しています。
20年前にも同じことが起きていた
実は、日本の原発業界でデータ不正が発覚したのは今回が初めてではありません。
2002年には東京電力で「トラブル隠し事件」が発覚しました。
13基29件の自主点検記録で不正があり、内部告発によって明るみに出ました。
南直哉社長ら5人が引責辞任し、東電は全号機を停止する事態に追い込まれています。
東電が掲げた再発防止策
「しない風土」「させない仕組み」「言い出す仕組み」の構築
あの教訓は、20年以上経った今も生かされていないのでしょうか。
では、浜岡原発の再稼働はどうなるのでしょうか。
再稼働はどうなる?地元の反応と今後
周辺4市は国への要望活動を取りやめました。
規制委は立入検査を実施し、法的対応を検討しています。
2026年度中の再稼働見込みは、完全に消えました。
毎日新聞によると、浜岡原発3・4号機は2026年度中にもプラント審査が終了する見込みでした。
今回の不正発覚で、その見通しは完全に崩れています。
地元首長の声
藤枝市長
「意図的な不正であれば市民への大きな裏切り行為」
島田市長
「信頼を根底から覆す。審査やり直しまで考えなければ」
牧之原市長
「外部の目から見ても弁明の余地はない」
御前崎市、牧之原市、菊川市、掛川市の周辺4市は、今月下旬に予定していた国への要望活動を取りやめました。
原発の再稼働を見据えた要望だったため、今回の不正を受けて「とても行ける状況ではない」と判断したのです。
官房長官も「安全性に対する国民の信頼を揺るがしかねない、あってはならないこと」とコメントしています。
経済産業省は電気事業法に基づき、中部電力に4月6日までの報告を求めました。
中部電力は弁護士3人で構成する第三者委員会を設置し、調査を進めています。
ちなみに、中部電力の林欣吾社長は電気事業連合会の会長も務めています。
電力業界全体を束ねる立場の会社で起きた不正という点でも、影響は小さくありません。
🤔 気になる疑問
他の原発は大丈夫なのか?
2002年の東電トラブル隠し事件も、今回の浜岡原発も、外部からの通報がなければ発覚しなかった可能性があります。
「バレなければいい」という意識が、今も電力業界に残っているとしたら──。
まとめ
中部電力・浜岡原発で、原発の耐震性を決める重要な数値「基準地震動」のデータ不正が発覚しました。
担当者は「揺れを小さく見せたかった」と証言していますが、専門家は「不正しなくても対応できたのでは」と指摘しています。
原子力規制委員会は「明らかな捏造」と断言し、審査を停止。
地元自治体からは「裏切り行為」「信頼を根底から覆す」と厳しい声が上がっています。
2002年の東京電力トラブル隠し事件から20年以上。
「しない風土」「させない仕組み」「言い出す仕組み」は、本当に電力業界に根付いているのでしょうか。
あなたが住む地域の原発は、
本当に正しいデータで審査されていますか?
1月14日の規制委定例会で、法的対応が議論される予定です。
続報に注目しましょう。
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