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知床観光船事故で桂田被告が初公判で無罪主張|なぜ船に乗ってない社長が刑事責任?予見可能性とは

⚖️ 2024年11月12日、26人が死亡・行方不明となった知床観光船沈没事故の初公判が開かれました。

運航会社社長・桂田精一被告(62)は「罪が成立するかどうかは私にはわからない」と述べ、弁護側は無罪を主張。

しかし多くの人が疑問に思うはずです——「社長は船に乗っていなかったのに、なぜ刑事責任を問われるの?」

実は、海難事故で船に乗っていなかった経営者の刑事責任を問うのは極めて異例のケースです。

裁判の最大の争点は「事故を予測できたかどうか」という「予見可能性」。

この記事では、初公判の内容から、なぜ無罪主張なのか、そして今後の展開まで分かりやすく解説します。

知床観光船事故で桂田被告が初公判で無罪主張|なぜ船に乗ってない社長が刑事責任?予見可能性とは

知床観光船事故で桂田被告が初公判で無罪主張|なぜ船に乗ってない社長が刑事責任?予見可能性とは



 

🌊 知床観光船沈没事故とは?2022年4月の事故を時系列で振り返る

まず、どんな事故だったのか振り返りましょう。

2022年4月23日、北海道・知床半島沖で起きたこの事故は、26人もの尊い命が失われた重大な海難事故です。

 

⏰ 事故当日の状況

午前10時頃、観光船「KAZU I(カズワン)」が北海道斜里町のウトロ漁港から出航しました。

乗っていたのは観光客24人と、船長・甲板員の2人で、合計26人。目的地は知床岬でした。

⚠️ この日の気象状況

天気予報では強風注意報と波浪注意報が出ていました。

実は、同じウトロ漁港から観光船を出している他の5社は全て出航を見合わせていたのです。知床遊覧船だけが、この季節の運航初日として船を出しました。

午後1時過ぎ、船長から同業他社に「浸水してエンジンが止まっている」という無線連絡がありました。

この時点で船は知床半島西側の「カシュニの滝」付近にいました。

午後1時13分、この連絡を聞いた同業者が118番(海上保安庁)に通報。

午後1時20分過ぎ、KAZU Iは沈没しました。

 

 

 

❄️ 極寒の海に投げ出された26人

乗っていた26人全員が、海水温わずか3〜4度という極寒の海に投げ出されました。

冷蔵庫の中より冷たい海です。この温度の海では、救命胴衣を着ていても長時間は耐えられません。

運輸安全委員会の調査報告書によると、最終的に20人の死亡が確認され、6人が今も行方不明のままです。

 

🔍 事故の原因は何だったのか

国の運輸安全委員会が2年以上かけて調査した結果、事故の直接的な原因が明らかになりました。

船の前方にある「ハッチ」と呼ばれるふたが、きちんと閉まっていなかったのです。

🚨 驚くべき事実

事故の2日前に行われた救命訓練の写真を分析したところ、この時点で既にハッチのふたが十分に閉まらない状態だったことが分かりました。

つまり、壊れたままの設備で、悪天候が予想される日に出航したことが、この悲劇につながったのです。

悪天候の中、船が大きく揺れてハッチのふたが開き、そこから海水が流れ込んで船内に浸水。

KAZU Iは沈没に至ったと結論づけられています。

 

👤 桂田精一被告とは誰?知床遊覧船の社長プロフィールと役割

では、今回刑事責任を問われている桂田精一被告とは、どんな人物なのでしょうか。

 

📝 基本プロフィール

桂田精一被告は現在62歳。

有限会社「知床遊覧船」の代表取締役社長でした。

「でした」と過去形なのは、国土交通省がこの事故を受けて2022年6月に同社の事業許可を取り消したためです。

会社は実質的に廃業状態となっています。

 

 

 

⚖️ 法律上の重要な立場——運航管理者

桂田被告が今回の裁判で重要なのは、単なる「社長」という立場だけではありません。

彼は法律で定められた「安全統括管理者」と「運航管理者」という役職も兼ねていました。

📌 運航管理者の主な仕事

  • 天気や海の状況を確認すること
  • 出航してもいいかどうか判断すること
  • 危険だと判断したら出航を中止させること
  • 航行中も安全を管理し続けること

つまり、「今日は出航していいのか、ダメなのか」を最終的に決める権限と責任を持っていたのが桂田被告だったのです。

 

💬 事故後の対応

事故が起きたのは2022年4月23日でしたが、桂田被告が最初に公の場に姿を現したのは4日後の4月27日

記者会見で3回土下座し、謝罪の姿勢を見せました。

しかし、この会見で桂田被告は「条件付き運航だった」「海が荒れたら引き返すつもりだった」と説明し、「判断は船長に任せていた」という主張を繰り返しました。

その後、桂田被告が遺族に直接謝罪することはなかったといいます。

 

🔒 逮捕と起訴

事故から約1年半が経過した2024年9月18日、第一管区海上保安本部が桂田被告を業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで逮捕。

同年10月9日に釧路地方検察庁が起訴しました。

起訴後は保釈金1000万円を納付し、10月11日に保釈されています。

💡 ここで重要なポイント

実は、桂田被告は事故当日、船には乗っていませんでした

「船に乗ってないのに、なぜ刑事責任を問われるの?」と疑問に思うかもしれません。この点については後ほど詳しく解説します。

 

⚖️ 桂田被告に問われている罪とは?業務上過失致死罪をわかりやすく解説

桂田被告が起訴されたのは「業務上過失致死罪」という罪です。

聞き慣れない言葉ですが、どんな罪なのでしょうか。

 

📖 業務上過失致死罪とは

簡単に言うと、「仕事中に必要な注意を怠って、人を死なせてしまった罪」です。

例えば、医師が手術で必要な確認を怠って患者を死なせてしまった場合や、工事現場の責任者が安全対策を怠って作業員が亡くなった場合などが該当します。

法律的には刑法第211条に定められており、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死亡させた者」が処罰されます。

 

 

 

⚠️ どのくらい重い罪なのか

刑罰の内容

5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金

実は、普通の「過失致死罪」(仕事中でない場合)は罰金刑のみで、最高でも50万円以下の罰金です。

それに比べて業務上過失致死罪は懲役刑もあり、かなり重い罪とされています。

なぜ重いのか——それは、仕事として人の命を預かる立場にある人には、普通の人以上に高い注意義務があると考えられているからです。

 

📋 桂田被告の起訴内容

釧路地検の起訴状によると、桂田被告の具体的な過失内容は次の通りです:

2022年4月23日の状況

  • 強風注意報と波浪注意報が出ていた
  • 運航会社の基準では出航を中止しなければならないほどの悪天候が予想された
  • 航行すれば強風と波で船が揺れ、乗客が転倒したり、海水温約3度の海に転落したりする危険があった

それなのに

  • 桂田被告は運航管理者として、出航や航行継続を中止するよう指示する義務があったのに、それを怠った
  • その結果、船は午後1時20分過ぎに沈没し、乗客24人と乗員2人を窒息死させた

つまり検察側は、「天候が悪化することは予測できたのに、出航を止めなかった」という点を過失だと主張しているのです。

 

🔍 「注意義務」とは何か

法律用語で「注意義務」という言葉が出てきますが、これは2つの義務から成り立っています:

1️⃣ 結果予見義務

「こうしたら危険なことが起きる」と予測する義務

2️⃣ 結果回避義務

予測した危険を避けるための行動をとる義務

今回の裁判では、まさにこの「結果予見義務」があったかどうか——つまり「事故が起きると予測できたかどうか」が最大の争点になっています。

 

🏛️ 初公判で何があった?桂田被告の発言と弁護側の無罪主張

2024年11月12日午前10時、釧路地方裁判所で桂田被告の初公判が開かれました。

初公判とは、刑事裁判の最初の日のことです。

法廷には、事故で家族を失った遺族も被害者参加制度を利用して出席しました。

 

 

 

💬 桂田被告の発言——謝罪と認否留保

裁判の冒頭、桂田被告は次のように述べました:

「まず初めに事故で亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、ご家族の皆さまに深くお詫びする」

謝罪の言葉を述べた後、被告は事故当日の状況について説明しました:

桂田被告の説明

  • 「当日の朝、船長と出航を協議した。朝は天気がとてもよく、海も穏やかだった」
  • 「午後から荒れる予報だったが、船長から『荒れる前に引き返す』と聞き、それなら大丈夫と思って出航を認めた」
  • 「しかし事故が起きた」

そして最も注目すべき発言がこれです:

「罪が成立するかどうかは私にはわからない」

これは法律用語で「認否留保」と呼ばれる対応です。

「有罪か無罪か、今はまだ答えません」という意味で、刑事裁判では極めて珍しい対応とされています。

通常、被告は「罪を認めます」か「無罪です」のどちらかを明確に述べます。

しかし桂田被告は、どちらとも言わずに判断を留保したのです。

 

⚖️ 弁護側の無罪主張

一方、桂田被告の弁護人は明確に無罪を主張しました。

弁護側の主張の核心は:「事故を予見することはできなかった」

つまり、「事故が起きるとは予測できなかったのだから、業務上過失致死罪は成立しない」という論理です。

この主張が認められるかどうかが、裁判の最大の焦点になります。

 

📅 裁判のスケジュール

釧路地裁の発表によると、今後の裁判は次のように進む予定です:

⏰ 今後の裁判日程

  • 公判回数:判決を除いて計11回(全体で12回)
  • 被告人質問:2025年3月2日〜4日
  • 論告・最終弁論:2025年4月
  • 判決言い渡し:2026年6月17日

つまり、判決が出るまで1年半以上かかる長期裁判となります。

 

❓ なぜ無罪主張?「罪が成立するかわからない」の真意

では、なぜ桂田被告と弁護側は無罪を主張しているのでしょうか。

 

 

 

🗣️ 被告側の論理——「条件付き運航」だった

桂田被告が繰り返し主張しているのが「条件付き運航」というキーワードです。

被告の説明による当日の判断

  • 事故当日の朝、船長と出航について協議した
  • その時、朝の天気は良く、海も穏やかだった
  • ただし午後から天候が悪化する予報だった
  • そこで船長が「海が荒れる前に引き返す」と約束した
  • だから「それなら大丈夫」と判断して出航を認めた

つまり、「無条件で出航させたわけではなく、天候が悪化したら引き返すという条件付きだった」という主張です。

 

⚠️ 「船長の判断」への責任転嫁?

さらに桂田被告は、過去の海上保安庁の聴取に対して「出航は船長が判断した」「海が荒れれば戻ると思っていた」と説明していたことが報道で明らかになっています。

これに対して、一部からは「行方不明になった船長に責任を押し付けているのではないか」という批判の声もあがっています。

 

⚖️ 弁護側の核心的主張——「予見できなかった」

弁護側の無罪主張の核心は、「事故を予見することはできなかった」という点です。

弁護側の主張ポイント

  • 出航時の天候は運航基準の範囲内だった
  • 「条件付き運航」という安全対策をとっていた
  • 船長が「引き返す」と言っていたので、危険は回避できると考えた
  • だから事故が起きるとは予測できなかった

法律的には、「予見できなかった」のであれば「注意義務違反」にはならず、業務上過失致死罪は成立しないという論理です。

 

📝 民事訴訟でも同じ主張

実は桂田被告は、遺族が起こした民事訴訟(損害賠償請求)でも似た主張をしています。

2025年3月の民事訴訟初弁論で、会社側は賠償責任については認めたものの、桂田被告個人の責任は否定し、請求の棄却を求めました。

つまり、「会社としての責任はあるが、社長個人に刑事責任はない」という立場を一貫して取っているのです。

 

🤔 過去の発言との矛盾

ここで疑問が生じます——桂田被告は以前、報道で「船のことは詳しくない」と発言していたことがあります。

船の専門知識がないと認めながら、一方で「適切な判断をした」と主張するのは矛盾しているのではないか。この点も、裁判で追及される可能性があります。

 

🔍 裁判の最大の争点「予見可能性」とは?何が問われているのか

この裁判の勝敗を分けるのが「予見可能性」という概念です。

少し難しい言葉ですが、裁判の核心なので丁寧に説明します。

 

 

 

📖 予見可能性とは

「予見可能性」とは、法律用語で「事故や危険な結果が起こると予測できたかどうか」という意味です。

もっと簡単に言えば:

わかりやすい例

天気予報で「明日は台風が来ます」と言っているのに外出して事故に遭った場合
→ 「台風が来ると分かっていたのに出かけた」
「予見可能性があった」となります。

逆に、突然の地震で事故に遭った場合
→ 「地震が来ると予測できなかった」
「予見可能性がなかった」となります。

業務上過失致死罪が成立するには、この「予見可能性」があったことを検察側が証明しなければなりません。

 

⚖️ 検察側の主張——「予見できた」

検察側は、次のような理由から「事故は予見できた」と主張しています:

🔴 検察側の主張ポイント

1. 気象情報が出ていた

当日、斜里町には強風注意報と波浪注意報が発令されていた。
運航会社の自社基準では出航を中止すべき天候だった。

2. 同業他社は全て出航を見合わせた

ウトロ漁港から観光船を運航する5社のうち、他の4社は全て出航しなかった。
知床遊覧船だけが運航した。
プロの判断として「危険」と認識されていた証拠。

3. 設備の不具合を知っていた

事故の2日前、ハッチのふたが十分に閉まらない状態だったことが写真で確認されている。
つまり壊れた設備の存在を知りながら出航させた。

4. 同じ日の別の船は引き返していた

実は同社の別の観光船「KAZU Ⅲ」も同日に短時間の運航をしたが、午前11時頃から波風を感じて予定通り引き返していた。
つまり、実際に海の状況は悪化していた。

これらの事実から、検察は「事故が起きる危険性は十分に予測できた」と主張しています。

 

⚖️ 弁護側の主張——「予見できなかった」

一方、弁護側は次のように反論しています:

🟢 弁護側の反論ポイント

1. 出航時の天候は基準内だった

午前10時の出航時、実際の天気は良好で海も穏やかだった。
注意報は出ていたが、あくまで「注意」であり「警報」ではなかった。

2. 条件付き運航という安全対策

無条件で出航させたわけではない。
「海が荒れたら引き返す」という条件を付けていた。
これは安全対策を講じていた証拠。

3. 船長の専門的判断を信頼

船長は海のプロである。
その専門家が「引き返す」と言ったので、安全は確保できると判断した。
運航管理者として、船長の判断を尊重するのは当然。

4. 沈没の直接原因はハッチの不具合

事故の直接的な原因は、ハッチが開いて浸水したこと。
これは構造的・整備的な問題であり、天候判断とは別の問題。

弁護側は、これらの理由から「事故が起きるとまでは予測できなかった」と主張しているのです。

 

🤔 あなたならどう判断する?

客観的に見て、どちらの主張が説得力があるでしょうか。

  • 強風注意報が出ていて、同業他社が全て出航を見合わせていた
  • 一方、出航時の実際の天候は良好だった
  • 「条件付き」という対策は十分だったのか
  • 運航管理者の責任はどこまで及ぶのか

この判断が、裁判の結論を左右します。

 

⚖️ 「予見可能性」の判断基準

💡 重要なポイント

実は、予見可能性の判断には明確な線引きはありません

過去の判例では、「一般的な注意深い人であれば予測できたかどうか」「専門家としての立場なら予測できたかどうか」といった観点から、ケースバイケースで判断されています。

今回の裁判では、「運航管理者という専門的立場にある人が、当日の状況から事故を予測できたか」が問われることになります。

 

⚠️ なぜ社長の刑事責任が問われるのか?海難事故で「極めて異例」の理由

ここまで読んで、多くの人が疑問に思っているはずです——「なぜ船に乗っていなかった社長が刑事責任を問われるの?」

実は、海難事故で船に乗っていなかった経営者の刑事責任を問うのは極めて異例のケースなのです。

 

 

 

🚢 一般的な海難事故との違い

通常、海難事故で刑事責任を問われるのは:

  • 船を操縦していた船長
  • 操舵を担当していた乗組員
  • 直接的に事故を引き起こした当事者

つまり、「実際に船に乗っていて、操縦や判断をしていた人」が責任を問われるのが一般的です。

例えば2001年に起きたえひめ丸事故(米原子力潜水艦との衝突)では、潜水艦の艦長が業務上過失致死罪で起訴されました。この場合、艦長は実際に潜水艦に乗っていました。

 

❓ なぜ今回は「社長」が起訴されたのか

それなのになぜ、今回は船に乗っていなかった桂田被告が起訴されたのでしょうか。

理由は、桂田被告が持っていた「運航管理者」という法的立場にあります。

運航管理者の役割(海上運送法で義務付け)

1. 出航の可否を判断する

  • 天候・海象を確認する
  • 運航基準と照らし合わせて、出航していいか判断する
  • 危険だと判断したら出航を中止させる

2. 航行中の安全管理

  • 運航中も気象情報を監視する
  • 危険が予想されたら航行中止を指示する
  • 船との連絡体制を維持する

3. 船舶の安全管理

  • 船の整備状況を確認する
  • 必要な安全設備が整っているか管理する

つまり、運航管理者は「船を出していいかどうか」を決める最終的な権限と責任を持っているのです。

 

📋 「組織のトップ」だけではない特殊な立場

重要なのは、桂田被告が単なる「会社の社長」として起訴されたのではない、という点です。

「運航管理者」という法律で定められた専門的な役職にあり、その立場としての義務を怠ったから起訴されたのです。

第一管区海上保安本部も、逮捕時の説明で「知識の有無にかかわらず運航管理者としての立場を重視した」と述べています。

つまり、「船の知識があるかどうか」ではなく、「運航管理者という責任ある立場にいた」ことが重要だということです。

 

⚠️ ずさんな安全管理体制

もう一つ、桂田被告の刑事責任が問われた背景には、会社全体のずさんな安全管理がありました。

国土交通省の特別監査では、次のような法令違反が確認されています:

🚨 確認された法令違反

  • 無線設備が故障したまま放置されていた(事故当日も使えなかった)
  • 運航管理補助者を配置していなかった(法律で義務付けられている)
  • 安全管理規程が守られていなかった
  • 船舶の整備記録が不十分だった

つまり、会社の最高責任者として、安全管理体制を根本的に怠っていたという点も、今回の起訴につながったと考えられます。

 

🔄 「経営者も刑事責任を負う時代」

この事件は、ある意味で時代の転換点かもしれません。

従来は「現場の責任」とされてきた事故でも、組織のトップや管理者の刑事責任が問われるケースが増えています。

「知らなかった」「現場に任せていた」では済まされない——そういう時代になっているのです。

 

📅 今後の裁判はどうなる?判決の見通しと民事訴訟の動き

最後に、今後の展開について見ていきましょう。

 

 

 

📆 刑事裁判のスケジュール

2024年11月12日の初公判から、判決まで約1年半の長期裁判となります。

⏰ 主な日程

  • 2024年11月〜2025年2月:証人尋問などの公判(計12回)
  • 2025年3月2日〜4日:被告人質問(桂田被告自身が証言台に立つ)
  • 2025年4月:検察側の論告求刑、弁護側の最終弁論
  • 2026年6月17日:判決言い渡し

被告人質問では、桂田被告が法廷で直接、当日の判断や会社の管理体制について説明することになります。

遺族も被害者参加制度を利用して、法廷で意見を述べる予定です。

 

⚖️ 判決の見通しは?

正直なところ、この裁判の結果を予測するのは非常に難しいです。

🔴 有罪の可能性

  • 強風注意報が出ていた事実
  • 同業他社が全て出航を見合わせていた事実
  • 設備の不具合を知っていた可能性
  • これらから「予見可能性あり」と判断される可能性

🟢 無罪の可能性

  • 出航時の実際の天候は基準内だった
  • 「条件付き運航」という対策をとっていた
  • 船長の専門的判断を信頼したことの妥当性
  • これらから「予見可能性なし」と判断される可能性

どちらに転んでもおかしくない、難しい裁判です。

 

⚖️ もし有罪なら?

有罪判決が出た場合、考えられる刑罰は:

考えられる刑罰

  1. 懲役刑:最大5年以下(執行猶予の可能性もあり)
  2. 禁錮刑:最大5年以下(こちらも執行猶予の可能性あり)
  3. 罰金刑:最大100万円以下

過去の類似事例では、初犯で示談が成立している場合、執行猶予付きの判決になることが多いです。

ただし今回は26人という多数の犠牲者が出ており、一部の遺族とは示談が成立していない可能性もあるため、実刑判決の可能性も否定できません。

 

⚖️ もし無罪なら?

もし無罪判決が出た場合、検察は控訴する可能性が高いと考えられます。

これだけ大きな事故で、しかも異例の「運航管理者の刑事責任」を問うた裁判です。一審で無罪となれば、検察は高等裁判所に控訴して争う可能性があります。

その場合、最終的な決着までさらに数年かかることになります。

 

💰 並行して進む民事訴訟

刑事裁判とは別に、民事訴訟(損害賠償請求)も進行しています。

2024年7月、乗客の家族ら29人が、知床遊覧船と桂田被告に対して約15億円の損害賠償を求めて札幌地方裁判所に提訴しました。

民事訴訟の初弁論では、会社側は賠償責任については認めましたが、桂田被告個人の責任は否定し、賠償額を争う姿勢を示しています。

 

💔 遺族の思い

法廷には、家族を失った遺族も出席しています。

ある遺族は取材でこう語っています:

「気力もなく倦怠感が常にある。心の底から笑顔になれることはもうないような気がします」

また別の遺族は「やっと始まった。罪は罪で認めてもらう」と、裁判の開始に複雑な思いを抱いています。

 

😢 「認定死亡」という苦渋の決断

特に注目すべきは、行方不明者の家族の状況です。

6人の行方不明者のうち、少なくとも1人については、家族が「認定死亡」の手続きを行ったことが報道されています。

認定死亡とは

法律上「死亡したもの」と扱う手続きです。

なぜこの手続きが必要だったのか——それは、損害賠償請求訴訟に参加するためには「遺族」である必要があったからです。

「まだ生きているかもしれない」という希望を持ちながらも、裁判に参加して責任を追及するために、法律上「亡くなったこと」にせざるを得なかった——遺族の苦しみは想像を絶するものがあります。

 

🔍 海の捜索は今も続いている

6人の行方不明者の捜索は、今も続けられています。

2024年8月には、知床半島の海岸で新たに骨が発見され、DNA鑑定で乗客の男性と確認されました。事故から2年以上が経っても、少しずつ新しい手がかりが見つかっています。

遺族の中には、「骨の一つでも戻ってきてくれれば」と、現場の海を訪れ続けている人もいます。

 

📝 まとめ:裁判の焦点と今後の展望

2024年11月12日に開かれた知床観光船沈没事故の初公判。

26人もの命が失われたこの事故で、運航会社社長の刑事責任を問う裁判が始まりました。

 

✅ この裁判のポイント

  • 桂田精一被告(62)は「罪が成立するかわからない」と認否を留保し、弁護側は無罪を主張
  • 海難事故で船に乗っていなかった社長の刑事責任を問うのは「極めて異例」
  • 最大の争点は「予見可能性」——事故を予測できたかどうか
  • 検察側は「強風注意報が出ていた」「同業他社は出航を見合わせた」と主張
  • 弁護側は「出航時の天候は基準内」「条件付き運航だった」と反論

 

📅 今後の展開

  • 判決は2026年6月17日の予定(約1年半の長期裁判)
  • 並行して約15億円の民事訴訟も進行中
  • 6人の行方不明者の捜索は今も続いている

この裁判は、単に一企業の社長の責任を問うだけでなく、「運航管理者」という立場の責任の重さ、そして「予見可能性」という法的概念の解釈について、重要な判例となる可能性があります。

遺族の「罪は罪で認めてもらう」という言葉が、法廷にどう響くのか。2026年6月の判決まで、注目が続きます。

 

 

 

❓ よくある質問(FAQ)

Q1. 知床観光船沈没事故とは何ですか?

2022年4月23日に北海道知床半島沖で発生した海難事故です。観光船KAZU Iが沈没し、乗客乗員26人(死者20人、行方不明6人)が犠牲となりました。

Q2. なぜ船に乗っていなかった社長が刑事責任を問われるのですか?

桂田被告は「運航管理者」という法律で定められた役職にあり、出航の可否を判断する権限と責任を持っていました。海難事故で船に乗っていなかった経営者の刑事責任を問うのは極めて異例です。

Q3. 裁判の最大の争点は何ですか?

「予見可能性」——つまり、事故を予測できたかどうかです。検察は「強風注意報が出ていたので予見できた」と主張し、弁護側は「出航時の天候は基準内で予見できなかった」と反論しています。

Q4. 業務上過失致死罪とはどんな罪ですか?

仕事中に必要な注意を怠って人を死なせてしまった罪です。刑罰は5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金で、通常の過失致死罪より重い罰則が定められています。

Q5. 判決はいつ出る予定ですか?

判決は2026年6月17日に言い渡される予定です。初公判から約1年半の長期裁判となります。2025年3月には被告人質問が行われ、桂田被告自身が証言台に立ちます。

Q6. 民事訴訟も起こされていますか?

はい。2024年7月に乗客の家族ら29人が、知床遊覧船と桂田被告に対して約15億円の損害賠償を求めて札幌地方裁判所に提訴しています。刑事裁判と並行して進行中です。

 

 

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