しかも新監督は、つい半年前に新潟で解任されたばかりの人物だという。
J2優勝・J1初昇格という歴史的快挙を成し遂げた水戸ホーリーホックが、2024年12月8日に衝撃の人事を発表しました。
10年間クラブを支えた西村卓朗GMが契約満了で退任。昇格の立役者・森直樹監督は監督を退いてフットボールダイレクター（FD）に就任。そして新監督には、今年6月に新潟を解任された樹森大介氏が就任します。
なぜこのタイミングで、なぜこの人選なのか。読者の疑問に徹底的に答えていきます。
📋 この記事でわかること
水戸、J1初挑戦を前に前代未聞の人事発表
水戸ホーリーホック公式サイトによると、12月8日に3つの人事が同時に発表されています。
まず、2016年から強化部長・GMとして10年間クラブを支えた西村卓朗氏が契約満了により退任。
次に、今季J2優勝に導いた森直樹監督が監督を退任し、西村GMの後任としてフットボールダイレクター（FD）に就任。
そして森監督の後任として、今季新潟の監督を務めていた樹森大介氏が新監督に就任することが決まりました。
J1初挑戦を目前にして、強化責任者と監督が同時に交代するという異例の事態です。
では、10年間クラブを支えた西村GMはなぜこのタイミングで退任するのでしょうか。
西村GM退任：10年かけて「育成の水戸」を築いた功労者
西村氏は2016年に水戸の強化部長に就任し、2019年からはGMを兼任してきました。
footballistaのインタビューによると、西村GMは就任当初「Jリーグの強化に携わるのは水戸が初めて」という状態からスタート。最初の2年間は前任者の体制を引き継ぎながら、水戸の課題や強みをひたすらインプットしていたといいます。
転機となったのは2018年。練習施設「アツマーレ」が完成し、長谷部茂利氏（現川崎フロンターレ監督）を招聘して新たなチーム作りをスタートさせました。
Real Sportsの記事では、水戸から前田大然、小川航基、伊藤涼太郎ら海外クラブでプレーする選手が生まれ、2021年には1年間で5人もの選手がJ1クラブに移籍したことが紹介されています。
資金力はリーグ下位レベルながら、選手を成長させて送り出す「育成型クラブ」として確立されたのです。
木山隆之氏（岡山）、長谷部茂利氏（川崎）、秋葉忠宏氏（湘南）、そして樹森大介氏。指導者も育つクラブになっています。
その西村GMが後任に指名したのが、今季J2優勝の森監督だったのです。
森監督がFD転身：「クラブが次のステージへ進むための決断」
森氏は公式サイトを通じてこうコメントしています。
「西村GMより後任を任せたいという話を受け、これまで築き上げてきた"育成"をはじめとする多くの価値を守り、さらに前へと進めていく責任を担うのは自分しかいないと強く感じました。未来を切り拓き、クラブが次のステージへ進むための決断です」
フットボールダイレクター（FD）とは、チームの強化方針や選手編成を統括するポジション。監督よりも長期的な視点でクラブの方向性を決める役割です。
「立場が変わりますが、クラブをより強く、戦う集団へと進化させていくという思いに、一切の揺らぎはありません」という言葉からは、監督退任ではなく「配置転換」という意識が読み取れます。
では、森FDが後任監督として白羽の矢を立てたのは誰なのでしょうか。
新監督・樹森大介とは何者か
樹森氏は1977年7月28日生まれの48歳。前橋商業高校から専修大学を経て、2000年に湘南ベルマーレでプロキャリアをスタートさせました。
2003年から2004年まで水戸でプレーし、その後ザスパ草津、tonan前橋を経て現役を引退。2012年から2022年まで水戸ユースの監督を務め、2023年からはトップチームのコーチに就任していました。
「知らない名前だな」と思った方も多いかもしれませんが、実は水戸サポーターにとっては長年お馴染みの存在なのです。
樹森氏は就任にあたり、こうコメントしています。
「最高の形でJ1昇格を果たした森監督から受け取ったバトンを次へとつなぐために、"やりきる 走りきる 勝ちきる"を体現するチームをつくり、クラブが掲げるさらなる目標に向けて準備を進めてまいります」
しかし樹森氏には、今年6月に新潟で解任されたという経緯があります。
新潟解任から半年、なぜ水戸は樹森を選んだのか
アルビレックス新潟の公式発表によると、樹森氏は2025年シーズンの新潟監督として、J1リーグで4勝7分9敗（勝点19）、順位は降格圏の18位という成績でした。6月22日付けで契約解除となっています。
一見すると「解任された監督をなぜ？」と疑問に思うかもしれません。
樹森氏は新潟解任後、8月から栃木SCでコーチを務めていました。そこから古巣・水戸への復帰という形になります。
水戸にとっては、クラブの文化やスタイルを熟知した人物であり、西村GMが育て、森FDと一緒にコーチとして働いてきた「身内」のような存在。しかも強化トップに森FDがいるため、サポート体制は万全です。
「勝手知ったる環境で、前任者がフロントにいる形での監督就任」は、リスクを最小限に抑えた人選といえるでしょう。
この異例人事に対するサポーターの反応はどうなのでしょうか。
サポーターの反応と今後の課題
Xでは、新潟サポーターから「キモさん監督就任おめでとう！J1で暴れてほしい」「新潟は万全の体制を用意してあげられなかったので頑張ってほしい」という応援の声が見られました。
一方で「樹森大介監督は来季水戸で指揮するのか、答え合わせの1年になりそう」という懐疑的な見方も。
興味深いのは「前任がGMにいる形で万全のサポートの上、勝手知ったる環境で樹森さんに監督を任せるのはあったかい。と同時に、森さんGMは上手くいかなかった時の保険でもある」という分析です。
水戸はJ1初挑戦という未知の領域に踏み出します。J1の厳しい戦いの中で、樹森新監督がどのような采配を見せるのか。そして森FD体制でクラブがどう変わっていくのか。
「水戸J1昇格後初の監督」という注目は嫌でも集まります。まさに「答え合わせの1年」が始まろうとしています。
📝 この記事のポイント
- 水戸ホーリーホックはJ1昇格直後に西村GM退任・森監督FD就任・樹森新監督就任を発表
- 西村GMは10年かけて「育成の水戸」を構築、前田大然ら海外組を輩出した功労者
- 森監督は昇格の立役者ながら自ら監督を退き、強化トップに就任
- 樹森新監督は新潟で解任歴があるものの、水戸では15年のキャリアを持つ
- 森FD体制でのサポートがあり、リスクを抑えた人選と見られている
❓ よくある質問
Q. 樹森大介とは誰？経歴は？
A. 水戸で選手・指導者として15年のキャリアを持つ人物です。2012年から2022年まで水戸ユース監督を務め、2023年からトップチームコーチ、2025年に新潟監督を経て水戸監督に就任しました。
Q. 森直樹監督はなぜFDに転身したの？
A. 西村GMから直接後任を打診され、「育成をはじめとする価値を守り前に進める責任を担う」と決断しました。監督退任ではなく、より長期的視点でクラブを支える配置転換です。
Q. 樹森監督は新潟でなぜ解任されたの？
A. J1リーグで4勝7分9敗、18位という成績で6月に契約解除となりました。ただし「クラブの準備不足」「方針の不一致」も指摘されており、本人の資質だけの問題ではないとの見方もあります。
Q. 西村GMはなぜ退任したの？
A. 契約満了による退任とされています。10年間で「育成の水戸」を確立し、前田大然や小川航基ら海外組を輩出、J1監督を4人も送り出すなど大きな功績を残しました。
📚 参考文献
