北九州で生まれた「資さんうどん」が、なぜ関東で驚異的な行列を作っているのでしょうか。
実は、この現象の裏には外食業界を揺るがす240億円の買収劇と、緻密に計算されたマーケティング戦略がありました。
2024年12月、千葉県八千代市にオープンした関東1号店では、連日100人を超える行列が発生。
1日の売上は200万円、来客数は2000人以上という、通常のファミリーレストランの4〜5倍という驚異的な数字を記録しています。
この記事では、なぜ北九州の地方チェーンが関東で大成功を収めているのか、その理由を詳しく解説します。
📋 この記事でわかること
🔥 なぜ関東で大行列?資さんうどん人気の3つの理由
関東進出でいきなり大行列となった資さんうどん。
その人気の理由は、実は非常に戦略的なものでした。
1. 口コミの連鎖効果が生んだ「チラシ不要戦略」
最も注目すべきは、資さんうどんが関東進出にあたってチラシを一枚も配らなかったという事実です。
資さんの崎田晴義会長は「チラシを配る必要はないと判断した」と明言しています。
なぜこのような自信があったのでしょうか。
その答えは「九州出身者の存在」にありました。
北九州で生まれ育った人、学生時代に住んでいた人、転勤で暮らしていた人——こうした人たちが関東に多数住んでおり、彼らが同僚や友人に「一緒に食べに行こう」と声をかけることで、口コミが自然に広がったのです。
2. 「日常食」としてのポジショニング
物価高で外食の客単価が上昇する中、資さんうどんの客単価は800〜900円と手頃な価格設定。
家族4人で来店しても4000円以内で済むという手軽さが、多くの人に支持されています。
さらに、基本的に24時間営業という点も大きな魅力。
朝・昼・晩・深夜いつでも利用でき、「特別な資さん」ではなく「日常の資さん」として親しまれています。
3. 関東進出前のテストマーケティングの成功
2024年7月、東京・神田で3日間限定で開催された「資さんうどんPOP-UPレストラン」では、開店前から行列ができる大盛況ぶりでした。
この結果を受けて、すかいらーく側も関東での成功を確信したのです。
🆚 丸亀・はなまると何が違う?資さんうどんの独特な魅力
うどんチェーンといえば丸亀製麺(約860店舗)やはなまるうどん(約420店舗)が有名ですが、資さんうどんは全く異なるアプローチを取っています。
九州特有の「甘い出汁」の科学的根拠
資さんうどんの最大の特徴は、鯖や昆布・椎茸などから丁寧に取った「やや濃いめで甘みのある出汁」です。
実は、すかいらーくが資さんを買収する際に出汁を理化学分析したところ、旨味成分のアミノ酸が全国チェーンのラーメン店と近い構成であることが判明しました。
この分析結果が、「全国どこでも通用する」という買収の決め手となったのです。
讃岐うどんとは正反対の「やわモチ麺」
丸亀製麺やはなまるうどんが讃岐うどんの「コシの強さ」を売りにするのに対し、資さんうどんは「口あたりが柔らかく、中はモチモチ」という独特の食感が特徴です。
この麺は、厳選した「資さんうどん専用粉」のみを使用し、製法から茹で方まで徹底的にこだわって作られています。
「うどん屋」ではなく「和食ファミレス」
最も大きな違いは業態そのものです。
丸亀製麺やはなまるうどんがセルフサービスの「うどん屋」なのに対し、資さんうどんはフルサービスの「和食ファミレス」なのです。
100種類以上のメニューには、うどんだけでなく:
- 各種丼もの(カツとじ丼、親子丼、天丼など)
- おでん
- 焼きうどん
- デザート(ぼた餅、ソフトクリーム)
- 朝定食
これらが揃っており、まさに「うどんが美味しいファミリーレストラン」という独自のポジションを確立しています。
名物「14cmごぼう天」の迫力
資さんうどんの代名詞ともいえるのが、約14cmのスティック状に切り揃えたごぼう天です。
丼からはみ出るほどの長さで、カリコリとした食感が楽しめます。
縦割りで厚みを持たせているため、出汁に浸かった部分は柔らかく、空中に出た部分はサクサクという、2つの食感を同時に味わえるのが魅力です。
💰 すかいらーく240億円買収の真の狙いとは?
2024年10月、すかいらーくホールディングスが資さんを240億円で買収したことは、外食業界に大きな衝撃を与えました。
なぜこれほど高額な買収に踏み切ったのでしょうか。
「日常のインフラ」業態の不足を補完
すかいらーくの谷真会長は買収の理由として「日常に根ざした低価格業態がブランドポートフォリオで欠けていた」と説明しています。
ガストやジョナサンなどのファミレスは客単価1000円超となる中、800〜900円で利用できる資さんうどんは「日常のインフラ」として機能します。
これにより、すかいらーくは外食の低価格帯をカバーできるようになったのです。
地方ロードサイド店の「切り札」として
人口減少により地方のロードサイド店舗が厳しくなる中、すかいらーくは既存店舗の業態転換を計画しています。
新規出店ではなく、既存の建物とスタッフを活用して資さんうどんに転換することで、投資コストを大幅に抑えながらスピーディーに展開できるのです。
金谷社長は「地方のロードサイド店を資さんに転換していくことで店舗数を維持しつつ成長できる」と述べています。
3〜5年で200店舗、最終的には1000店舗の野望
現在84店舗の資さんうどんを、すかいらーくは3〜5年で200店舗超に拡大する計画です。
さらに、金谷社長は「最終的には1000店舗くらいの規模になっても不思議じゃない」と強気の見通しを示しています。
🍡 年間540万個のぼた餅!メニューの豊富さも魅力
資さんうどんの人気を支えているのは、うどんだけではありません。
年間540万個売れるぼた餅の驚異
資さんうどんの隠れた名物が「ぼた餅」です。
春・秋のお彼岸期間中は1週間で27万個、年間では540万個という驚異的な販売数を記録しています。
うどんチェーンでこれほどスイーツが売れるのは極めて異例で、資さんうどんが単なるうどん屋ではないことを物語っています。
朝から深夜まで、100種類以上のメニュー
24時間営業の店舗では、時間帯に応じた多様なメニューを提供:
朝の定食メニュー(450円〜650円):
- 朝定食(鮭)570円
- 朝定食(納豆)430円
- 朝定食(鶏つくね)550円
昼夜のメニュー:
- 肉ごぼ天うどん 790円
- カツとじ丼 770円
- 天丼 750円
- 各種おでん 120円〜190円
参考:資さんうどんメニュー詳細
コスパ抜群のセットメニュー
特に人気なのが「資さんしあわせセット」(1030円)。
選べるミニうどん、ミニ丼、ミニぼた餅がセットになっており、1回の食事で資さんの魅力を堪能できます。
家族4人で来店しても4000円以内で済むため、「気軽に利用できるファミリーレストラン」として支持されています。
🗺️ 関東での店舗情報と今後の全国展開計画
現在の関東店舗情報
八千代店(関東1号店):
- 住所:千葉県八千代市大和田新田1062-6
- 営業時間:24時間営業
- 席数:130席
- アクセス:東葉高速鉄道「八千代緑が丘駅」からバス3分
両国店(東京1号店):
- 住所:東京都墨田区緑2-16-2
- 営業時間:6:00〜24:00
- 席数:105席
- アクセス:JR両国駅から徒歩11分、都営大江戸線両国駅から徒歩5分
待ち時間と混雑対策
現在も両店舗とも混雑が続いており:
- 平日朝6〜10時:比較的空いている
- 平日15〜18時:混雑が少ない日が多い
- 週末:1〜2時間待ちの場合もあり
整理券システムを導入しており、店内で座って待つことができます。
今後の出店計画と海外展開
2025年の出店予定:
- 東京都足立区「資さんうどん足立鹿浜店」(春予定)
- 埼玉県鴻巣市(4月下旬予定)
- 兵庫県姫路市「資さんうどん東姫路店」(春予定)
海外進出の構想:
すかいらーくは台湾に約70店舗を展開しており、資さんうどんも近い将来の台湾進出を計画しています。
金谷社長は「まずは来年、国内でいろんな実験をして、めどが立てば再来年あたりには台湾出店を」と具体的なスケジュールを示しています。
📝 よくある質問(FAQ)
❓ なぜ資さんうどんは関東で大行列ができるのですか?
口コミマーケティングの成功、九州出身者による自然な拡散、手頃な価格設定、24時間営業による利便性が主な理由です。チラシを一枚も配らずに成功しました。
❓ 資さんうどんと丸亀製麺・はなまるうどんの違いは何ですか?
資さんうどんは九州特有の甘い出汁と柔らかい麺が特徴で、100種類以上のメニューを持つフルサービスの和食ファミレスです。讃岐うどんとは正反対のアプローチを取っています。
❓ なぜすかいらーくは240億円で資さんうどんを買収したのですか?
日常に根ざした低価格業態の補完、地方ロードサイド店の業態転換戦略、3〜5年で200店舗展開計画の実現のためです。最終的には1000店舗を目指しています。
❓ 資さんうどんの特徴的なメニューは何ですか?
14cmの特大ごぼう天が名物で、年間540万個売れるぼた餅も人気です。100種類以上のメニューには朝定食から丼もの、おでんまで幅広く揃っています。
❓ 関東の資さんうどんはどこにありますか?
千葉県八千代市の八千代店(24時間営業)と東京都墨田区の両国店(6:00〜24:00)があります。今後は足立区、埼玉県鴻巣市への出店も予定されています。
🎯 まとめ
資さんうどんが関東で大行列を作る理由をまとめると:
- 口コミマーケティングの成功:九州出身者を中心とした自然な拡散により、チラシ不要で集客
- 独自のポジション:讃岐うどんとは真逆の「やわモチ麺」と甘い出汁で差別化
- 和食ファミレス業態:100種類以上のメニューとフルサービスで幅広いニーズに対応
- 戦略的な買収価値:すかいらーくの地方店舗転換戦略の切り札として240億円の価値
- 将来性:3〜5年で200店舗、最終的に1000店舗、さらに台湾進出も視野
北九州のソウルフードが、口コミの力と大手企業の経営資源を得て全国、そして世界への展開を目指すサクセスストーリー。
これは単なるうどんチェーンの成功事例を超えて、地方発ブランドの全国展開モデルケースとしても注目されています。
あなたも機会があれば、この話題のうどんチェーンを体験してみてはいかがでしょうか。
ただし、行列を覚悟してお出かけくださいね。