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四日市駐車場274台水没、補償はどうなる?国が過失認めた理由と静岡空港との違い

💧 実は、駐車場水没は「自己責任」が常識――だが、四日市の274台水没は国が過失を認めた異例のケース。

補償の行方は?

 

 

2025年9月12日夜、三重県四日市市を記録的な豪雨が襲った。1時間に123.5mmという観測史上最大の雨量が、近鉄四日市駅前の地下駐車場「くすの木パーキング」を完全に水没させたのだ。

地下2階は天井まで、地下1階も1.2mの高さまで泥水に沈み、274台もの車が被害を受けた。これはコンビニ約3軒分の駐車台数に相当する規模だ。

 

泥水に沈んだ地下駐車場で折り重なる車両のリアルなイメージ

泥水に沈んだ地下駐車場で折り重なる車両のリアルなイメージ



 

普通、駐車場の水没は「自然災害だから仕方ない」として、車両保険に入っていなければ泣き寝入りするしかない。

実際、9月5日に静岡空港で起きた同じような水没事故では、運営会社が即座に「補償できません」と発表している。

 

⚠️ ところが、四日市のケースは様子が全く違う。

国土交通省の公式発表によると、国交省が「必要な対応を怠った」と自ら過失を認め、9月26日の有識者委員会で「補償を検討する」と表明したのだ。

 

同じ水没事故なのに、なぜ対応がこんなに違うのか?

 

 

 

🚗 274台が泥水に沈んだ駐車場、補償の行方が注目される理由

くすの木パーキングは、地下1階と地下2階に合わせて約500台が停められる大型駐車場だ。

9月12日の午後10時14分までの1時間で123.5mmという、1966年の統計開始以降で最大の雨が降った。これは1時間でバケツ約12杯分の水が降り注いだ計算になる。

 

地下2階は完全に天井まで水没し、地下1階も1.2mの高さまで浸水。地下1階と2階を合わせた水位は最大5m10cmに達した。

被害を受けたのは274台。内訳は地下1階が160台、地下2階が114台だ。

 

💎 水没した車の中には、新車価格1160万円のメルセデスベンツSクラスや、国産スーパーカーの日産GT-Rといった高級車も含まれていた。

多くの車が修理不能で廃車になるとみられている。

 

県外からの観光客や近隣の繁華街を利用する人が駐車していたため、突然の被害に多くの人が困惑している。

「管理会社に連絡したけど『いつ入れるかもわからない』と言われて、補償の話は一切されていない」

 

地下2階に車を停めていた人は、被害額が650万円にもなると話していた。

ここで多くの人が疑問に思うのは、「この損害は誰が補償するのか?」ということだ。

 

 

 

実は、駐車場の水没は通常「自然災害による免責事項」として扱われる。つまり、車両保険に入っていなければ、ドライバーの完全な自己負担になるのが一般的なのだ。

それなのに、なぜ今回は国が「補償を検討する」と言っているのか。

 

その理由は、9月19日に発覚した「ある重大な事実」にある。

 

⚖️ 「通常なら自己責任」が覆る?国の過失認定という異例の展開

駐車場が水没した場合、多くは「天災地変や不可抗力による損害」として免責事項になる。

駐車場の約款には「自然災害による損害は責任を負わない」と書かれているのが普通で、ドライバーは車両保険で対応するか、自己負担するしかない。

 

だが、実は法律上、駐車場の管理者には「善管注意義務」というものが課されている。

これは正確には「善良な管理者の注意義務」と言い、駐車場法第16条に定められている。

 

📚 条文を簡単に言うと

「駐車場の管理者は、停めてある車をきちんと管理する注意義務を果たしていたことを証明できない限り、車が壊れたり失くなったりしたときの責任から逃れられない」ということだ。

 

つまり、単に「自然災害だから」という理由だけでは免責にならない。管理者として「できる限りの対応をしたか」が問われるのだ。

弁護士の解説によると、重要なのは「予見可能性」だという。

 

 

 

予見可能性とは、簡単に言えば「事前に予測できたか」ということ。

  • 想定される雨量と実際の雨量にどれくらい差があったか
  • 浸水を防ぐ設備があれば防げたのか
  • 被害を回避するための策を検討していたか

 

これらが争点になる。

物理的に浸水を防げなかったとなれば不可抗力で、ドライバーの自己責任になる。

 

だが今回は、管理者側に「必要な対応を怠った」という明確な過失があった。

それが、9月19日に発覚した「止水板の故障」だ。

 

⏰ 3年9カ月前から故障を放置:止水板問題の全貌

止水板とは、地下駐車場への水の侵入を防ぐための板のこと。大雨が予想されるときに入口に設置して、水が流れ込まないようにする設備だ。

くすの木パーキングには、車両用の出入口3カ所と歩行者用の出入口7カ所、合計10カ所に止水板が設置されていた。

 

国土交通省の公式発表によると、車両用出入口の3カ所は電動式の止水板だった。

ところが、この3カ所のうち2カ所が故障していたのだ。

 

🚨 しかも、故障を把握していたのは2021年12月

事故が起きたのは2025年9月だから、なんと3年9カ月も前から壊れていたことになる。

小学1年生が4年生になるくらいの長い期間だ。

 

 

 

なぜこんなに長い間、修理しなかったのか。

時事通信の報道によると、2022年1月に国交省と管理会社のTFI社が協議したが、「どちらが修理費を負担するか」で合意できず、その後も話し合いをしていなかったという。

 

つまり、修理の責任を押し付け合っているうちに、3年以上も放置されていたのだ。

 

しかも、代替措置も取らなかった。

電動式が壊れているなら手動で対応するとか、別の方法で水の侵入を防ぐとか、何らかの対策があったはずだ。だが、何もしなかった。

 

残る1カ所の電動式止水板は正常だったが、急激な浸水で操作が間に合わなかった。

歩行者用の7カ所は人力で設置する仕組みだったが、これも急激な浸水で設置が間に合わなかったとされている。

 

9月26日の有識者委員会で、国交省三重河川国道事務所の大吉雄人所長は「代替措置を含めた対応も行わなかった。おわびする」と陳謝した。

そして、被害を受けた274台の補償について「今後、検討する」と表明したのだ。

 

 

 

中野洋昌・国土交通相も9月30日の記者会見で「国交省として重く受け止めている」と述べた。

これは異例の展開だ。なぜなら、同じような水没事故が起きた静岡空港では、運営会社が即座に「補償できない」と発表しているからだ。

 

🔍 静岡空港とは何が違う?補償の有無を分ける決定的な違い

実は、四日市の約1週間前にも、似たような水没事故が起きていた。

2025年9月5日、静岡県牧之原市の富士山静岡空港で、台風15号の影響により駐車場の一部が冠水し、約300台の車が水没した。

 

四日市と同じように、多くの車が泥水に浸かり、廃車になる被害が出た。

ところが、静岡空港の運営会社の対応は全く違った。

 

📢 静岡空港の公式見解

「今回の冠水は、台風15号による想定を上回る降水量によるものでした。駐車場管理者として事態を重く受け止めております」

「なお、天災地変や不可抗力による損害については、免責事項となっておりますので誠に恐縮ながら、当空港からの補償は致しかねます」

 

つまり、静岡空港は「想定外の雨だったから仕方ない。補償はできません」という立場を貫いたのだ。

これが駐車場水没における通常の対応だ。

 

 

 

ではなぜ、四日市は「補償を検討する」となったのか。

決定的な違いは、事前に把握していた設備の故障を放置していたかどうかだ。

 

静岡空港の場合、想定を上回る雨が降り、排水能力を超えて水没した。設備の故障など明確な過失は公表されていない。

一方、四日市の場合は、3年9カ月も前から止水板の故障を把握していながら修理せず、代替措置も取らなかった。

 

この「予見可能だったのに必要な対応を怠った」という点が、補償の可能性を生んでいる。

弁護士の見解では、今後の争点は以下の通りだ。

 

  • 想定雨量と実際の雨量との隔たり
  • 止水板が機能していれば浸水を防げたのか
  • 被害を回避するための策を検討していたのか

 

もし、止水板が正常に機能していても今回の雨量では物理的に浸水を防げなかったとなれば、結局は不可抗力として扱われる可能性もある。

逆に、止水板が機能していれば浸水を防げた、あるいは被害を大幅に軽減できたとなれば、管理者側の責任が認められるだろう。

 

💡 ちなみに、静岡空港では2024年にも同じ駐車場が冠水している。2年連続での被害だ。

地元紙の報道によると、空港関係者は「近年の異常気象に対し、排水能力がキャパオーバーしていた。改修工事を早くするべきだったのに…」と悔やんでいたという。

 

 

 

静岡空港も、もし事前に対策を怠っていたことが明らかになれば、状況は変わる可能性がある。

いずれにしても、今回の四日市のケースは「自然災害だから自己責任」という常識を覆す可能性のある、注目すべき事例なのだ。

 

🚙 車両保険の実態:半数が未加入、知られざるリスク

では、車が水没した場合、車両保険ではどう補償されるのか。

まず、義務として加入する自賠責保険では、今回のような水害は補償されない。自賠責保険は交通事故による対人賠償のみが対象だからだ。

 

水害による車の損害を補償するのは、任意で加入する「車両保険」だ。

車両保険に入っていれば、台風や洪水、高潮などによる水没は補償の対象になる。ただし、地震や噴火が原因の津波による水没は、通常の車両保険では対象外だ(特約が必要)。

 

補償額は、車両の年式や型式に応じて決まる。新車購入時の費用を受け取れる特約もある。

例えば、補償の限度額が300万円の保険に加入していて、車が全損と査定されれば、300万円が補償される。

 

 

 

保険を使うと、翌年の等級が1等級下がり、保険料が上がる。だが、それでも自己負担よりはましだろう。

ところが、この車両保険に入っている人は意外と少ない。

 

📊 損害保険料率算出機構のデータ(2024年3月時点)

・愛知県(全国トップ):59.4%
・三重県:51.9%
・全国平均:47.2%

 

つまり、全国平均では半分以下、三重県でも半分ちょっとしか加入していないのだ。

 

車両保険は、補償内容を充実させるほど保険料が高くなる。そのため、「事故は起こさない自信がある」「古い車だから保険料がもったいない」という理由で入らない人が多い。

だが、今回のような自然災害による水没は、運転技術とは関係なく被害を受ける。

 

くすの木パーキングで被害を受けた274台のうち、車両保険に入っていなかった人は約半数、つまり130台以上にのぼる計算になる。

こうした人たちは、国が補償を決めない限り、数百万円の損害を自己負担するしかない。

 

 

 

レンタカー店には「長期間レンタルできないか」という問い合わせが殺到しているという。移動手段を失った人たちの困窮ぶりがうかがえる。

 

🔮 今後の補償はどうなる?有識者委員会の判断待ち

国交省は、くすの木パーキングの復旧と今後の対策を検討するため、有識者委員会を設置した。

この委員会で、以下のような点が検討される。

 

  • 今回の浸水被害の原因分析
  • 止水板が機能していれば防げたかの検証
  • 今後の大雨時の対応手順
  • 雨水の流入を防止する対策の強化
  • 被害車両274台の補償の可否と範囲

 

補償が認められるかどうかの最大の争点は、「止水板が正常に機能していれば、浸水を防げたのか、あるいは被害を大幅に軽減できたのか」という物理的な検証だ。

 

もし、今回の雨量では止水板が機能していても防げなかったとなれば、不可抗力として補償は難しくなる。

逆に、止水板が機能していれば被害を防げた、または大幅に軽減できたとなれば、国の過失が認められ、補償の可能性が高まる。

 

 

 

⚠️ ただし、補償が認められたとしても、全額補償になるかは不透明だ。

一部補償や見舞金という形になる可能性も高い。なぜなら、完全な雨量の記録や、止水板の機能による防止効果を完全に証明するのは難しいからだ。

 

弁護士は「遅くなれば不安が増すだけ。国は早く判断して対応すべきです」と指摘している。

被害を受けた人たちは、有識者委員会の結論を待つしかない状況だ。

 


 

📌 この記事のポイント

  • 四日市の地下駐車場で274台が水没:2025年9月12日の記録的豪雨で、くすの木パーキングが完全に水没し、274台が被害を受けた
  • 国が過失を認め補償を検討:通常なら「自然災害で自己責任」だが、国交省が「3年9カ月前から止水板の故障を把握しながら放置した」と過失を認め、補償検討を表明した
  • 静岡空港は即座に補償拒否:1週間前に起きた静岡空港の水没事故では、運営会社が「想定外の雨で免責事項」として補償を拒否。設備故障の放置という明確な過失の有無が対応の差を生んだ
  • 車両保険加入率は半分以下:全国平均で47.2%、三重県でも51.9%しか車両保険に加入しておらず、被害者の約半数は保険でカバーできない可能性がある
  • 補償の有無は物理的検証次第:有識者委員会が「止水板が機能していれば浸水を防げたか」を検証中。結果次第で補償の可否と範囲が決まる

 

駐車場の水没事故で国が過失を認めるのは異例のケース。今後の判断は、同様の事故における責任の所在を決める重要な先例になるかもしれない。

あなたは地下駐車場を利用する際、どんな対策が必要だと思いますか?

 


 

💬 よくある質問(FAQ)

❓ 駐車場が水没した場合、誰が補償するのですか?

通常は「自然災害による免責事項」として、車両保険に入っていない限りドライバーの自己負担になります。ただし、駐車場管理者が法律上の善管注意義務を怠っていた場合は、管理者に補償責任が生じる可能性があります。

❓ 四日市のケースはなぜ国が補償を検討しているのですか?

国交省が2021年12月から止水板の故障を把握していながら3年9カ月も修理せず、代替措置も取らなかったという明確な過失があったためです。この「予見可能だったのに必要な対応を怠った」点が、補償検討につながっています。

❓ 静岡空港の水没事故との違いは何ですか?

静岡空港は「想定外の雨で不可抗力」として即座に補償を拒否しましたが、設備故障などの明確な過失は公表されていません。四日市は事前に把握していた設備故障を長期間放置したという過失があり、これが対応の差を生んでいます。

❓ 車両保険に入っていない場合はどうなりますか?

全国平均で47.2%、三重県でも51.9%しか車両保険に加入していません。未加入の場合、国が補償を決めない限り、数百万円の損害を自己負担することになります。今回のケースでは約130台以上が保険でカバーできない可能性があります。

❓ 今後の補償はどのように決まりますか?

有識者委員会が「止水板が正常に機能していれば浸水を防げたか」を物理的に検証中です。防げたと判断されれば国の過失が認められ補償の可能性が高まりますが、全額補償ではなく一部補償や見舞金になる可能性もあります。

❓ 地下駐車場を利用する際の注意点は?

記録的豪雨の予報が出ている場合は地下駐車場の利用を避けること、車両保険への加入を検討すること、駐車場の止水板などの安全設備が適切に管理されているか確認することが重要です。近年の異常気象を考えると、「まさかここまで」という想定外が起こり得る時代です。

 


 

📚 参考文献リスト

 

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