2025年11月27日、ウナギ好きにとって大きなニュースが飛び込んできました。
ワシントン条約の締約国会議で、ニホンウナギを含むウナギ全種の国際取引規制案が否決されたのです。
投票結果は賛成35、反対100という圧倒的な大差。
日本も反対票を投じ、ひとまず「土用の丑の日」は守られた形になりました。
しかし、12月5日の本会議での再投票の可能性も残されており、まだ完全に決着したわけではありません。
そもそも、なぜこのような規制案が提出されたのでしょうか?
絶滅危惧種に指定されているのに、なぜ今も食べられるのでしょうか?
今回の否決の意味と今後の見通しを、わかりやすく解説します。

この記事でわかること
ウナギ規制案が否決!賛成35票・反対100票の圧倒的大差
2025年11月27日、中央アジアのウズベキスタンで開催されている「ワシントン条約第20回締約国会議(CoP20)」の委員会で、投票が行われました。
結果は以下の通りです。
- 賛成:35票
- 反対:100票
- 棄権:8票
可決には出席国の3分の2以上の賛成が必要でしたが、反対票が賛成票の約3倍という結果に終わりました。
この規制案を提出したのは、EU(欧州連合)とパナマです。
提案の内容は、ニホンウナギを含むウナギ属全19種を「附属書II」に掲載するというもの。
附属書IIに掲載されると、輸出する国は「輸出許可書」の発行が義務付けられます。
つまり、「勝手に輸出してはダメ、ちゃんと許可を取ってね」というルールが適用されるわけです。
ちなみに、ワシントン条約は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」の通称。
野生の動植物が国際取引によって絶滅するのを防ぐための条約で、現在184カ国とEUが加盟しています。
ヨーロッパウナギはすでに2009年から附属書IIに掲載されています。今回の提案は、それをニホンウナギやアメリカウナギなど、他のウナギにも広げようというものでした。
では、なぜ日本はこの規制に反対したのでしょうか?
なぜ日本は反対した?「絶滅の恐れなし」主張の真相
水産庁を中心とする日本政府の主張は、大きく分けて3つあります。
1つ目:資源管理をちゃんとやっている
日本は、中国・韓国・台湾と協力して、養殖に使うシラスウナギ(ウナギの稚魚)の採捕量に上限を設けています。
各国が「これ以上は獲らない」という自主的なルールを作って、資源の回復に努めてきたというわけです。
2つ目:資源量が回復傾向にある
水産庁によると、ニホンウナギの資源量は約1万7000トンで、回復傾向にあるとしています。
3つ目:国際取引規制は「時期尚早」
関係国による管理で十分対応できており、ワシントン条約による規制は必要ないというのが日本政府の立場です。
日本は、今回の会議に向けて各国への働きかけも行っていました。
結果として、反対100票という大差での否決につながったと見られています。
ただし、この「絶滅の恐れなし」という主張には、実は矛盾があるのです。
同じ日本政府の中でも、環境省は異なる見解を示しています。
絶滅危惧種なのに食べてOK?環境省と水産庁の"矛盾"
つまり、同じ日本政府の中で、水産庁は「絶滅の恐れなし」、環境省は「絶滅危惧種」と、真逆の評価が存在しているのです。
これはどういうことなのでしょうか?
環境省のレッドリストでは、ニホンウナギは「絶滅危惧IB類(EN)」に分類されています。
これは「近い将来、野生での絶滅の危険性が高い種」という意味です。
国際自然保護連合(IUCN)も、2014年に同様の評価を下しています。
1970年代と比較して、ニホンウナギの個体数は大きく減少していると考えられているからです。
では、なぜ絶滅危惧種なのに食べることが許されているのでしょうか?
環境省のレッドリストは、あくまで「警告リスト」のようなもの。
「このままだと危ないですよ」という注意喚起であり、法的な拘束力はありません。
漁獲や販売を直接禁止する法律とは別物なのです。
一方、水産庁は「現在の管理体制で資源は維持できる」という立場。
評価の基準や前提が異なるため、同じ政府内でも見解が分かれています。
この"矛盾"は、専門家の間でも議論が続いているテーマです。
ところで、今回の委員会での否決で、この問題は決着したのでしょうか?
実は、まだ終わっていないのです。
12月5日本会議で再投票?まだ終わっていない理由
ワシントン条約の締約国会議には、以下のような仕組みがあります。
- まず委員会で議論・投票
- 委員会の結果を本会議で確認
- 本会議で「再投票」が発議される可能性
今回、11月27日の委員会で否決されましたが、12月5日の本会議で再び投票することができるのです。
ただし、再投票には条件があります。
賛成35票に対して反対100票という今回の結果を見ると、再投票で逆転する可能性は低いと見られています。
読売新聞の報道によると、「否決は維持される公算が大きい」とのこと。
仮に、再投票でも否決された場合はどうなるのでしょうか?
次のワシントン条約締約国会議は約3年後。
それまでは、現状のルールが維持されることになります。
ただし、EUなどは引き続きウナギの保護を訴えていく姿勢を示しており、議論は今後も続くと考えられます。
では最後に、もし今回の規制案が可決されていたら、私たちの食卓にどんな影響があったのか見てみましょう。
もし規制されていたら?うなぎの値段と食卓への影響
その理由は、日本のウナギ消費の約7割が輸入に依存しているからです。
主な輸入元は中国で、蒲焼などの加工品や活ウナギとして日本に届いています。
もしワシントン条約の附属書IIに掲載されると、どうなるのでしょうか?
- 輸出国は「輸出許可書」の発行が義務に
- 許可書の発行には「取引が生息に悪影響を与えない」証明が必要
- 中国が許可書を発行しない場合、輸入が減少または停止する可能性
特に問題なのが、ウナギの「種の判別」の難しさです。
蒲焼などの加工品になると、専門家でも種類を見分けることができません。シラスウナギ(稚魚)の段階でも、見た目での判別は非常に困難です。
そのため、ヨーロッパウナギ(すでに規制対象)の偽装取引を防ぐという名目で、全種類をまとめて規制しようというのが今回の提案の背景でした。
もう一つ、意外と知られていない事実があります。
「養殖だから問題ない」と思いがちですが、完全養殖(卵から育てる)は技術的には可能でも、まだ商業化されていません。
つまり、私たちが食べているウナギは、養殖も含めて全て野生由来なのです。
今回の否決で、土用の丑の日のうな重は守られた形になりました。
しかし、ウナギの資源問題は解決したわけではありません。
まとめ
今回の記事のポイントを整理します。
- 2025年11月27日、ウナギの国際取引規制案は賛成35・反対100で否決された
- 日本は「資源管理は十分、絶滅の恐れなし」として反対票を投じた
- ただし、環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定しており、政府内で見解が分かれている
- 12月5日の本会議で再投票の可能性があるが、否決維持の見込み
- 日本のウナギ消費の約7割は輸入依存で、規制されていれば価格高騰は避けられなかった
今回は否決されましたが、ウナギの資源問題は今後も国際的な議論が続くテーマです。
「土用の丑の日」という日本の食文化を守りながら、持続可能な形でウナギを楽しむにはどうすればいいのか。
ウナギを食べる際には、そんなことも少し考えてみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q. ウナギの規制案はなぜ否決されたの?
賛成35票・反対100票という圧倒的な大差で否決されました。可決には3分の2以上の賛成が必要でしたが、日本をはじめ多くの国が反対に回りました。日本は「資源管理は十分で絶滅の恐れはない」と主張しています。
Q. 否決されたのに、なぜまだ終わっていないの?
委員会での否決は最終決定ではありません。12月5日の本会議で、出席国の3分の1以上が発議すれば再投票が行われます。ただし、今回の大差を考えると逆転の可能性は低いと見られています。
Q. 絶滅危惧種なのに、なぜウナギを食べてもいいの?
環境省のレッドリストは法的拘束力のない「警告リスト」です。「このままだと危ない」という注意喚起であり、漁獲や販売を直接禁止する法律とは別物です。そのため、絶滅危惧種でも食べることは法的に禁止されていません。
Q. もし規制されていたら、うなぎの値段はどうなっていた?
価格高騰は避けられなかったでしょう。日本のウナギ消費の約7割は輸入に依存しており、主な輸入元の中国が輸出許可書を発行しない場合、流通量が激減する可能性がありました。
参考文献
- Yahoo!ニュース(ABEMA TIMES)- ワシントン条約 ウナギ国際取引の規制提案は否決に
- 読売新聞オンライン - ウナギ規制強化は否決、ワシントン条約締約国会議
- 時事ドットコム - ウナギ全種規制案を否決 日本「絶滅恐れなし」と反対
- 中央大学 海部研究室 - ワシントン条約によるウナギ貿易規制提案に関する解説
- 日本自然保護協会 - ウナギの国際取引の議論に注目を