2025年10月4日、自民党の新総裁に選出された高市早苗氏。勝利直後の演説で放った「馬車馬のように働く」「ワークライフバランスという言葉を捨てる」という発言が、わずか2日で過労死問題の専門家たちを動かしました。
過労死弁護団が抗議声明を出し、遺族が怒りのコメントを発表。SNSでは賛否が真っ二つに分かれています。
💡 実は、この発言が過労死遺族を激怒させた理由は、日本で初めて作られた「過労死防止法」と真っ向から対立するからなんです。
一体何が問題なのか、詳しく見ていきましょう。

📚 この記事でわかること
🗣️ 高市早苗氏の「馬車馬発言」とは?発言の詳細と文脈
まず、高市氏が実際に何を言ったのか、正確に見ていきましょう。
📅 発言の内容と状況
2025年10月4日午後、自民党総裁選の投開票が行われ、決選投票の末に高市早苗氏が第29代総裁に選出されました。女性初の総裁誕生という歴史的瞬間です。
その直後の両院議員総会。高市氏は所属する自民党の国会議員たちに向けて、こう語りました。
「自民党の新しい時代を刻んだ。うれしいよりもこれからが大変だ」
「全世代総力結集で頑張らないと立て直せない。全員に馬車馬のように働いてもらう」
「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」
🤔 なぜこのような発言をしたのか
実は、この発言の背景には自民党の深刻な状況がありました。
石破茂首相の辞任に伴う総裁選。自民党は裏金問題や支持率低下で厳しい立場に置かれていました。高市氏は「党を立て直すため」に、議員全員が全力で働く必要があると訴えたんです。
✅ つまり、この発言は自民党の国会議員たちに向けた決意表明でした。
国民全体に「働け」と言ったわけではありません。
でも、この発言が大きな波紋を広げることになります。
⚖️ 過労死弁護団が撤回要求を出した理由
発言からわずか2日後の10月6日。過労死弁護団全国連絡会議が抗議声明を発表しました。
👨⚖️ 過労死弁護団とは?
過労死弁護団全国連絡会議は、1988年から過労死問題に取り組んできた弁護士の団体です。
代表幹事を務めるのは川人博弁護士。この名前、どこかで聞いたことありませんか?
💡 実は、川人弁護士は2015年に大きなニュースになった電通の高橋まつりさん過労死事件の遺族側代理人を務めた人物なんです。
さらに、もう一つ重要な事件も担当していました。
🏢 総務省のキャリア官僚も過労死していた
2014年3月、総務省のエリート官僚(当時31歳)が自殺しました。
消費税増税の対応で忙殺され、亡くなる直前の月は月135時間の残業。これは1日4時間以上の残業が毎日続く計算です。
この事件も川人弁護士が担当し、2019年に公務災害として認定されました。
つまり、川人弁護士は民間企業(電通)と公務員(総務省)の両方の過労死事件を経験している、過労死問題の第一人者なんです。
📢 声明の内容
過労死弁護団の声明は厳しいものでした。
「公務員など働く人々に過重労働・長時間労働を強要することにつながる」
「政府が推し進めてきた健康的な職場づくりを否定し、古くからの精神主義を復活させるものだ」
「極めて重大な言動」として、発言の撤回を求めました。
😢 過労死遺族の怒り
総務省キャリア官僚の遺族も、代理人を通じてコメントを発表しています。
「大変憤慨しております。このような発言をしたことについて、深く反省し、家族を亡くした過労死ご遺族に謝っていただきたい」
電通事件で娘を亡くした寺西笑子さん(全国過労死を考える家族の会代表世話人)も、朝日新聞の取材にこう答えました。
「国のトップに立とうとする人の発言とは思えない」
「過労死防止法は国会の全会一致で成立し、国をあげてワークライフバランスを推進している。法律をないがしろにする発言で問題だ」
専門家だけでなく、実際に家族を過労死で亡くした遺族が、強い怒りを表明したんです。
📜 「働き方改革」と真逆?過労死等防止対策推進法との矛盾
ここで重要な疑問が浮かびます。
「党員に言っただけなのに、なぜそこまで問題視されるの?」
その答えは、日本に存在する「過労死防止法」にあります。
⚖️ 過労死防止法とは
正式名称は「過労死等防止対策推進法」。
この法律、実は今から11年前の2014年11月に施行されました。
厚生労働省の公式サイトによると、法律の目的はこうです。
「過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与すること」
「仕事と生活を調和させる」——これって、まさにワークライフバランスのことですよね。
🗳️ 全会一致で成立した法律
実は、この過労死防止法には重要なポイントがあります。
✨ 衆議院でも参議院でも、全会一致で可決された ✨
つまり、自民党も、野党も、全ての政党が賛成した法律。反対票はゼロでした。
それだけ、過労死問題は政治的立場を超えた重要な社会問題として認識されているということです。
⚠️ 法律と発言の矛盾
高市氏の発言を振り返ってみましょう。
「ワークライフバランスという言葉を捨てる」
過労死防止法の理念は「仕事と生活を調和させる」。
つまり、高市氏の発言は、自民党も賛成して成立させた法律の理念と真っ向から対立しているように見えるんです。
もちろん、高市氏は「国民に働けと言っているわけではない」と主張するでしょう。実際、発言の対象は党の議員でした。
でも、間もなく総理大臣になる人物の言葉です。その影響力は計り知れません。
💬 世論の反応は真っ二つ:「偏向報道」vs「時代錯誤」
この発言に対する世論の反応は、完全に二分されています。
👎 批判派の主張
SNSや報道機関のコメント欄では、こんな批判が相次ぎました。
- 「働き過ぎを美徳とする考え方こそ、日本を疲弊させてきた原因」
- 「時代錯誤も甚だしい」
- 「国民には強いないでほしい」
ワーク・ライフ・バランス社長の小室淑恵氏も共同通信の取材に答えています。
「自身の決意としての言葉ではあるが、なぜワークライフバランスが社会にとって大切なのか分かった上での発言なのか疑問だ」
「時間内で働いて評価され、生活できる給料が得られる日本をどうつくるのか尽力するのが優れたリーダーではないか」
日本労働弁護団の佐々木亮幹事長も、Yahoo!ニュースのエキスパート記事で厳しく指摘しています。
「一個人がワークに傾くかライフに傾くかは自由だが、彼女は総裁で総理になる人。働きまくることが日本のため、という流れを生み出す影響を全く考えていない」
👍 擁護派の主張
一方で、擁護する声も多く上がっています。
- 「これは自党の議員への発言。国民に向けたものではない」
- 「報道が切り取りをしている。偏向報道だ」
- 「政治家が全力で働くという決意表明の何が悪いのか」
実際、東京ファクトチェック協会も検証記事を出しています。
「高市氏は国民に働き方を強制しているわけではなく、あくまで党を立て直すために党内全員が全力で取り組む覚悟を示したものでした」
「大手メディアの記事では、国民全体に強制的に働かせる意図があるかのような印象を与えています。しかし、これらの報道は発言の文脈を無視した切り取りや誤解に基づくものです」
⚖️ 真っ二つに分かれる意見
実は、この問題の本質は「発言の対象」と「発言者の影響力」のどちらを重視するかという点にあります。
- 対象は党員だった
- 自身の決意表明に過ぎない
- 文脈を無視した報道
- 総理になる人の影響力は大きい
- 公務員や経営者が真似する可能性
- 過労死防止の理念に反する
どちらの意見にも一理あるんです。
🔮 今後への影響と懸念される問題点
では、この発言は今後どのような影響を与える可能性があるのでしょうか。
🏛️ 公務員への影響
最も懸念されているのは、霞が関(中央省庁)への影響です。
実は、霞が関では過労死がすでに起きています。
先ほど紹介した総務省のキャリア官僚の事例は、決して特殊なケースではありません。
⚠️ 高市氏が総理大臣になれば、公務員のトップです。
そのトップが「ワークライフバランスを捨てる」と発言したら、現場の公務員はどう受け取るでしょうか。
「総理が言っているんだから、自分たちも休めない」
そんな空気が生まれる可能性があります。
🏢 民間企業への影響
日本労働弁護団の小野山静弁護士は、毎日新聞の取材でこう指摘しています。
「SNSでは『自身の決意表明であり、国民に強いていない。言葉尻をとらえるべきではない』との論調もあるが、発言を受けてワークライフバランスを軽視する国会議員や経営者が出ている。長時間労働を称賛する発言もある」
実際、経営者が「総理も働いているんだから」という理由で、従業員に長時間労働を求める可能性は否定できません。
📉 働き方改革への逆行懸念
政府は長年、働き方改革を推進してきました。
長時間労働の削減、ワークライフバランスの推進、過労死ゼロを目指す——これらは国の重要政策です。
その政府のトップになる人物が「ワークライフバランスを捨てる」と発言することは、政策との整合性が問われます。
❓ 高市氏の対応は?
重要なのは、10月6日時点で高市氏からの撤回や釈明は確認されていないということです。
過労死弁護団の抗議、遺族の怒り、専門家の批判——これらに対して、高市氏がどう応えるのか。
それによって、この問題の今後が大きく変わってくるでしょう。
📝 まとめ:「馬車馬発言」が投げかけた問いとは
高市早苗氏の「馬車馬発言」について、重要なポイントをまとめます。
💡 押さえておきたい5つのポイント:
- 発言の内容と文脈:2025年10月4日、自民党総裁選勝利直後、所属議員に向けて「馬車馬のように働く」「ワークライフバランスを捨てる」と発言
- 専門家の抗議:過労死弁護団が撤回要求。電通事件と総務省事件の両方を担当した川人博弁護士が代表幹事として声明を発表
- 法律との矛盾:過労死等防止対策推進法(2014年施行、全会一致)の理念「仕事と生活の調和」と真っ向から対立する内容
- 世論の分断:「党員への発言で偏向報道」という擁護と「総理になる人の影響力を考えろ」という批判が真っ二つ
- 今後の懸念:公務員や民間企業への影響、働き方改革との整合性が問われる
この問題の本質は、「個人の決意」と「リーダーの影響力」のバランスをどう考えるかという点にあります。
政治家が全力で働く覚悟を示すこと自体は、決して悪いことではありません。
でも、その言葉が過労死遺族を傷つけ、法律の理念と矛盾し、社会に悪影響を与える可能性があるとしたら——それは、言葉の選び方を考え直す必要があるのかもしれません。
💭 あなたは、この「馬車馬発言」についてどう思いますか?
📚 FAQ:よくある質問
Q1. 高市早苗氏はいつ「馬車馬発言」をしたのですか?
2025年10月4日、自民党総裁選で勝利した直後の両院議員総会で、所属議員に向けて「馬車馬のように働いてもらう」「ワークライフバランスという言葉を捨てる」と発言しました。党を立て直すための決意表明として語られたものです。
Q2. なぜ過労死弁護団が抗議したのですか?
過労死弁護団は、高市氏の発言が「公務員など働く人々に過重労働を強要することにつながる」と判断し、10月6日に撤回を求める声明を発表しました。代表幹事の川人博弁護士は電通事件や総務省過労死事件の遺族代理人を務めた過労死問題の第一人者です。
Q3. 過労死等防止対策推進法とはどんな法律ですか?
2014年11月に施行された法律で、過労死をなくし「仕事と生活を調和させる」(ワークライフバランス)社会の実現を目的としています。衆参両院で全会一致で可決された、政党の枠を超えて支持された重要な法律です。
Q4. 世論の反応はどうですか?
意見は真っ二つに分かれています。批判派は「時代錯誤」「総理になる人の影響力を考えるべき」と主張し、擁護派は「党員への発言を切り取った偏向報道」「決意表明に過ぎない」と反論。発言の対象と影響力のどちらを重視するかで意見が分かれています。
Q5. 今後どのような影響が懸念されていますか?
霞が関の公務員が「総理が言っているから休めない」と感じる可能性や、民間企業の経営者が従業員に長時間労働を求める口実にする懸念があります。また、政府が推進してきた働き方改革との整合性も問われています。