📋 この記事でわかること
2025年10月28日、厚生労働省が公表した「過労死等防止対策白書（2025年版）」で、飲食店で働く人たちの深刻な労働実態が浮き彫りになりました。
特に衝撃的なのが店長の労働時間です。
調査対象となった店長の約3割（29.0%）が、週に60時間以上働いていることが判明。
これは月平均にすると80時間の残業に相当し、いわゆる「過労死ライン」に達する水準です。
なぜ飲食店の店長だけがこんなに長時間働くのか？
そして、この問題はどこから来ているのか？
今回は、厚労省の最新データをもとに、飲食業界の労働環境の実態と背景を詳しく解説します。
📊 【速報】飲食店長の3割が過労死ライン超え 厚労省2025年最新調査
厚生労働省が2024年12月に実施した調査で、外食産業で働く1200人を対象に労働時間を調査しました。
その結果が衝撃的です。
⚠️ 店長の29.0%が週60時間以上勤務
これは過去1カ月のうち、平均的に働いた1週間の労働時間です。週60時間労働は、月の残業時間で換算すると約80時間に相当します。
さらに、エリアマネジャーやスーパーバイザーといった管理職も24.0%が週60時間以上働いています。
一方、同じ飲食店で働く他の従業員の状況を見ると、大きな差があることが分かります。
接客担当の従業員は6.0%、調理担当の従業員は13.3%しか週60時間以上働いていません。
つまり、店長だけが突出して長時間労働になっているという構造が浮かび上がってきます。
💡 実は、週60時間って「毎日14時間働く」イメージです。
具体的に言えば、朝10時に出勤して深夜0時に帰宅する生活を週6日続ける計算。これを毎週繰り返すことになります。
開店前の仕込みから閉店後の片付けまで、店長は休む暇がありません。
でも、なぜ店長だけがこんなに働くのでしょうか？
⚠️ そもそも「過労死ライン」って何？ 命に関わる労働時間の基準
「過労死ライン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、健康を害するリスクが高まるとされる残業時間の基準のことです。
厚生労働省の基準によると、以下の残業時間が「過労死ライン」とされています。
📌 過労死ラインの基準
・発症前1ヶ月間に100時間を超える残業
・発症前2～6ヶ月間の平均が月80時間を超える残業
なぜこの時間が「ライン」なのか。
それは、この基準を超えて働くと、脳血管疾患や心臓疾患のリスクが急激に高まるからです。
体が「命の危険」と判断するレベルの疲労が蓄積する状態です。
過労死ラインを超えて脳・心臓疾患を発症した場合、労災認定される可能性が高くなります。つまり、「仕事が原因で病気になった」と国が認める基準でもあります。
週60時間労働を月で換算すると、約80時間の残業に相当します。
実は、これはまさに過労死ラインに達する水準なんです。
では、過労死ラインを超えると、実際にどうなるのか。
- 睡眠時間が大幅に削られます
- 食事もゆっくり取れません
- 休息の時間がほとんどなくなります
体と心に疲労が蓄積し続け、ある日突然、脳や心臓に異常が起きる可能性があります。
この基準を超えて働く店長が3割もいる。
この事実の重さが分かってきたのではないでしょうか。
🤔 でも、なぜ店長だけがこんな状況に追い込まれているのでしょうか？
🤔 なぜ店長だけこんなに働くの？ 3つの理由を徹底解説
先ほど見たように、接客スタッフは6.0%、調理スタッフは13.3%しか週60時間以上働いていません。
なのに、店長だけは29.0%。
この差は一体どこから来るのでしょうか。
💼 理由1：人手不足のしわ寄せが全て店長に集中
飲食業界は深刻な人手不足に陥っています。
非正社員の74.8%が「人手不足」と回答しているデータがあります。
アルバイトが急に休む。予定していたスタッフが来られなくなる。
こうなったとき、穴埋めをするのは誰でしょうか。
答えは店長です。
人が足りなくても、お店は開けなければなりません。お客様が来る以上、営業を止めるわけにはいきません。
結果として、店長が自ら接客に立ち、調理場に入り、レジを打つことになります。
💡 実は、店長は「店舗の最高責任者」という立場なのに、「経営の決定権」はほとんどありません。
責任だけが重く、権限は少ないというアンバランスな状態です。
🕐 理由2：営業時間外の業務も全て店長の仕事
飲食店の仕事は、営業時間内だけでは終わりません。
開店前には仕込みがあります。食材の発注があります。店内の清掃があります。
閉店後には売上の集計があります。翌日の準備があります。シフトの調整があります。
これらの業務は、ほとんど店長が担当します。
朝10時の開店なら、店長は9時前には出勤しています。深夜0時の閉店後も、1時間以上は作業が続きます。
営業時間が11時間でも、実際の拘束時間は14時間を超えることも珍しくありません。
🚨 理由3：急なトラブル・欠勤対応は必ず店長が対処
飲食店では、予期せぬトラブルが日常的に起きます。
お客様からのクレーム。機器の故障。食材の不足。スタッフの急な体調不良。
こうした問題が起きたとき、最終的な判断と対応をするのは店長です。
休日でも、緊急の連絡が入れば出勤することになります。
シフトで休みの日でも、気持ちは休まりません。いつ電話が来るか分からないからです。
飲食店の人手不足の実態を見ると、この構造がさらに深刻化していることが分かります。
🔄 悪循環の構造
人が辞める → 残った店長の負担が増える
→ 店長も疲弊する → さらに人が辞める
この悪循環が、店長の長時間労働を加速させています。
でも、ここで1つ疑問が浮かびます。
こんなに働いているのに、残業代はちゃんともらえているのでしょうか？
💼 「名ばかり管理職」問題って？ 残業代が出ない仕組みを解説
実は、多くの飲食店長は残業代をもらっていません。
「え、それって違法じゃないの？」
そう思いますよね。でも、法律にはある「仕組み」があるんです。
📖 管理監督者は残業代支給義務なし
労働基準法では、「管理監督者」には残業代を支払わなくてもよいとされています。
管理監督者とは、経営者と一体的な立場にある人のこと。
具体的には：
- 経営者と同じレベルの権限を持っている
- 出勤・退勤時間を自分で自由に決められる
- その地位にふさわしい高い給与をもらっている
こうした条件を満たす人は、労働時間の規制を受けません。
だから残業代も必要ない、というのが法律の考え方です。
❌ でも、実際の店長は「管理監督者」じゃない
ここが問題です。
多くの飲食店長は、実は管理監督者の要件を満たしていません。
どういうことか。
店長には、こんな権限がありません：
- 従業員の採用・解雇を決める権限
- 給与を決める権限
- 営業時間や商品価格を決める権限
これらの決定は、本部やオーナーが行います。
店長ができるのは、せいぜいシフトの調整程度です。
出勤時間も自由に決められません。開店時間に合わせて必ず出勤しなければなりません。
給与も、一般社員と大差ないケースが多いです。
つまり、「店長」という肩書きはあっても、
実際には「管理監督者」ではないんです。
これを「名ばかり管理職」と呼びます。
⚖️ マクドナルド店長訴訟が制度見直しのきっかけに
2008年、マクドナルドの店長が会社を訴えた裁判がありました。
「店長だから」という理由で残業代をもらえていなかった店長が、「自分は管理監督者じゃない」と主張したのです。
裁判所は店長の訴えを認めました。
約500万円の残業代と、付加金250万円の支払いを会社に命じました。
この判決をきっかけに、厚生労働省は「名ばかり管理職」の問題に本格的に取り組み始めました。
💡 実は、多くの店長は法律上の「管理監督者」ではありません。
本来は残業代をもらえるはずなんです。
でも、現実には「管理職だから残業代は出ない」という説明で、残業代なしで長時間労働をしている店長が多いのが実態です。
じゃあ、なぜこんなに人手不足で、店長に負担が集中する状況になってしまったのでしょうか？
📉 飲食業界の人手不足がヤバすぎる 離職率トップの厳しい現実
飲食業界の人手不足は、数字で見ると本当に深刻です。
📊 非正社員の74.8%が人手不足
帝国データバンクの調査によると、飲食店の非正社員（アルバイト・パート）で「人手不足」と答えた企業は74.8%。
全業種の中で最も高い割合です。
10店舗あったら、7~8店舗が「人が足りない」と言っている状態です。
💔 離職率は全業種でトップ
厚生労働省のデータを見ると、さらに衝撃的な事実が分かります。
😢 新卒で飲食業界に入った人の離職率
高卒：62.6% 大卒：51.4%
どちらも全業種の中でトップ
つまり、10人入社したら、3年以内に6人が辞めているということ。
半数以上が「この業界では続けられない」と判断して去っていきます。
🔄 求人倍率2.89倍＝3店舗が1人を奪い合う
有効求人倍率は2.89倍。
全職種平均の1.21倍と比べると、約2.4倍の高さです。
これを分かりやすく言うと、
「3つのお店が1人の求職者を奪い合っている」状態。
💡 実は、飲食業界の求人倍率2.89倍っていうのは、それくらい人が足りていません。
🔄 人手不足の悪循環
ここで恐ろしい構造が見えてきます。
人手不足 ↓
既存スタッフの負担増 ↓
離職 ↓
さらに人手不足
この悪循環が、飲食業界全体で起きています。
特に店長は、この悪循環の最前線にいます。
人が辞めても、すぐに補充できない。新しく採用しても、すぐに辞めてしまう。
その間、ずっと店長が穴埋めをし続けることになります。
❓ なぜ人が集まらないのか
人手不足の背景には、いくつかの理由があります。
- 長時間労働のイメージ：「飲食店＝ブラック」という認識が定着
- 休日の少なさ：土日祝日は繁忙期で休めない
- 給与の低さ：他業種と比べて給与水準が低い
- キャリア形成の難しさ：将来が見えにくい
さらに、コロナ禍で業界を離れた人材が戻ってこないという問題も深刻です。
コロナ禍の休業期間中、多くのスタッフが別の業界に転職しました。
そして、飲食店が再開しても、彼らは戻ってきませんでした。
一度離れた人は、「また同じ苦労をするのは嫌だ」と考えるのも当然です。
🤔 この状況、改善される日は来るのでしょうか？
✨ 改善の動きはあるの？ 働き方改革と成功事例
暗い話ばかりでしたが、希望もあります。
飲食業界でも、働き方を変えて成功している企業が出てきています。
📋 働き方改革関連法で何が変わった？
2019年から働き方改革関連法が施行されました。
飲食業界にも、以下のルールが適用されています。
📌 主な規制内容
1. 残業時間の上限規制
・原則：月45時間・年360時間まで
・特別な事情がある場合でも：年720時間、月100時間未満が上限
2. 有給休暇5日取得の義務化
・年10日以上の有給が与えられる人は、必ず年5日取得させる義務
3. 同一労働同一賃金
・正社員とアルバイトで同じ仕事なら、同じ待遇にする
法律で守られるようになったのは大きな前進です。
🏆 実際に改善している企業の事例
具体的な成功事例を見てみましょう。
🍛 CoCo壱番屋の勤務間インターバル制度
カレーチェーンのCoCo壱番屋では、店長など正社員に「勤務間インターバル制度」を導入しました。
これは、勤務終了から翌日の始業まで、最低10時間空けるというルール。
深夜0時に閉店作業が終わったら、翌日の出勤は10時以降にする。こうすることで、睡眠時間をしっかり確保できます。
この制度を実現するため、閉店作業もパートスタッフができるように業務を見直しました。
対象社員約400名がほぼ達成できているそうです。
🌟 土日祝休みの飲食店
京都の飲食企業「onakasuita」は、飲食店では珍しく土日祝日を定休日にしています。
「家族全員でご飯を食べる時間を大切にして欲しい」という経営陣の思いからです。
結果として、従業員の満足度が高く、人材募集に困らないというメリットも生まれています。
💡 実は、飲食店でも「土日祝休み」を実現している企業があります。
働き方を変えて成功している店もあるんです。
💻 IT化・DX推進で業務効率化
最新のテクノロジーを活用する動きも広がっています。
- セルフオーダーシステムで注文受付の手間削減
- 自動レジで会計業務の効率化
- シフト管理アプリで事務作業の削減
- 在庫管理システムで発注業務の簡略化
こうしたツールを導入することで、店長の業務負担を減らす取り組みが進んでいます。
⚠️ 課題は残っている
もちろん、全ての飲食店が改善できているわけではありません。
特に中小規模の個人店では、人件費の確保が難しく、改革が進みにくいのが現実です。
それでも、少しずつですが、飲食業界の働き方は変わり始めています。
「飲食店＝長時間労働」というイメージを変えるには、まだ時間がかかるでしょう。
でも、従業員が健康的に働ける環境づくりは、業界全体で取り組むべき重要な課題です。
📝 まとめ：飲食店長の過労死ライン問題の本質
飲食店長の過労死ライン超え問題について、重要なポイントをまとめます。
🔍 この記事の重要ポイント
📊 調査結果の衝撃
・店長の29.0%が週60時間以上勤務（過労死ライン相当）
・接客・調理スタッフと比べて店長だけが突出して長時間労働
・エリアマネジャーも24.0%が同様の状況
🤔 長時間労働の3つの理由
・人手不足のしわ寄せが全て店長に集中
・営業時間外の業務（仕込み・事務作業）も店長の仕事
・急なトラブル・欠勤対応は必ず店長が対処
💼 名ばかり管理職の問題
・多くの店長は「管理監督者」の要件を満たしていない
・本来は残業代をもらえるはずなのに、もらえていない
・責任だけ重く、権限は少ないアンバランスな立場
📉 深刻な人手不足
・非正社員の74.8%が人手不足
・離職率は高卒62.6%、大卒51.4%で全業種トップ
・求人倍率2.89倍＝3店舗が1人を奪い合う状態
✨ 改善の動き
・働き方改革関連法で残業時間の上限規制が導入
・CoCo壱番屋など勤務間インターバル制度導入の事例あり
・IT化・DX推進で業務効率化の動きも
飲食店長の過労死ライン超え問題は、個人の努力では解決できない構造的な課題です。
人手不足、長時間営業、名ばかり管理職という複数の要因が絡み合っています。
しかし、働き方改革の動きも確実に広がっています。IT化による業務効率化、勤務時間の見直し、適切な人員配置など、改善策も存在します。
飲食業界で働く人たちが健康的に働ける環境づくりは、業界全体で取り組むべき重要な課題です。
この記事が、飲食業界の労働環境について考えるきっかけになれば幸いです。
❓ よくある質問（FAQ）
Q1. 過労死ラインとは具体的に何時間ですか？
過労死ラインは「発症前1ヶ月間に100時間を超える残業」または「発症前2～6ヶ月間の平均が月80時間を超える残業」と定義されています。週60時間労働は月約80時間の残業に相当し、過労死ラインに達する水準です。
Q2. なぜ飲食店長だけが長時間労働になるのですか？
主な理由は3つあります。人手不足のしわ寄せが店長に集中すること、営業時間外の業務（仕込み・発注・事務作業）も店長の仕事であること、急なトラブルや欠勤対応を必ず店長が対処することです。
Q3. 飲食店長は残業代をもらえないのですか？
多くの店長は「管理職だから」という理由で残業代をもらっていませんが、実は法律上の「管理監督者」の要件を満たしていないケースが多いです。本来は残業代をもらえる権利がある「名ばかり管理職」の可能性があります。
Q4. 飲食業界の人手不足はどれくらい深刻ですか？
非正社員の74.8%が人手不足で、全業種中最も高い割合です。新卒の離職率は高卒62.6%、大卒51.4%で全業種トップ。有効求人倍率は2.89倍で、3つの店舗が1人の求職者を奪い合う状態です。
Q5. 飲食業界の労働環境は改善されていますか？
2019年から働き方改革関連法が施行され、残業時間の上限規制や有給休暇取得義務化が導入されました。CoCo壱番屋の勤務間インターバル制度導入など、改善に成功している企業も出てきています。
Q6. 週60時間労働とは具体的にどんな働き方ですか？
週60時間労働は、朝10時に出勤して深夜0時に帰宅する生活を週6日続けるイメージです。営業時間だけでなく、開店前の仕込みや閉店後の片付け・事務作業も含めた実際の拘束時間がこれほど長くなります。
💬 あなたはどう思いますか？
飲食店長の過労死ライン超え問題について、あなたの考えや経験をぜひコメントで教えてください。この記事が参考になったら、SNSでシェアしていただけると嬉しいです。
