2025年12月8日、共同通信がある女性へのインタビュー記事を配信し、SNSで大きな反響を呼んでいます。
複数の恋人と同時に付き合う。しかも全員が知っていて、合意している。
その女性は「きのコ」さん(40代・仮名)。
実は、ポリアモリーに関する著書も出版している、この分野の第一人者でした。
「浮気と何が違うの?」「嫉妬しないの?」「頭おかしいんじゃない?」
ネット上では疑問や批判が飛び交っています。
この記事では、ポリアモリーとは何か、きのコさんとは誰なのか、当事者たちの本当の声をお伝えします。

📖 この記事でわかること
ポリアモリーとは?浮気や不倫とは決定的に違う「3つの条件」
ポリアモリーと浮気の違いは、たった一言で説明できます。
ポリアモリー(Polyamory)は、ギリシャ語の「poly(複数)」とラテン語の「amor(愛)」を組み合わせた造語。
日本語では「複数愛」と訳されます。
1990年代にアメリカで提唱され、2000年代に日本にも広まりました。
では、具体的に浮気や不倫と何が違うのか。
ポリアモリーには「3つの条件」があります。
AさんがBさんとCさんと付き合っている場合、BさんもCさんもその事実を知っています。
誰にも隠していない。これが最大の違いです。
デートの予定、関係の変化、気持ちの揺れ。
すべてをオープンに話し合います。
一夜限りの関係ではありません。
身体的にも精神的にも、長期的なパートナーシップを築きます。
つまり、隠した時点でそれは「ポリアモリー」ではなく「浮気」になるのです。
IDEAS FOR GOODの解説によると、ポリアモリーは「同意に基づく、倫理的でかつ責任を持つノン・モノガミー」と定義されています。
「ノン・モノガミー」とは、一夫一婦制ではない関係のこと。
ただし「倫理的で責任を持つ」という部分が重要で、好き勝手に複数と付き合うこととは全く違います。
では、今回話題の「きのコ」さんとは、いったい誰なのでしょうか?
きのコさんとは誰?九州大卒・著書も持つポリアモリーの第一人者
きのコさんは、匿名の一般人ではありません。
共同通信の記事とシブヤ大学の公式プロフィールによると、きのコさんのプロフィールはこうなっています。
- 1983年、福岡県生まれ
- 九州大学大学院人文科学府修了
- 2011年からポリアモリーをカミングアウト
- 2018年に著書『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』を出版
- ポリアモリーに興味を持つ人の交流会「ポリーラウンジ」の主催者の一人
現在40代で、パンセクシュアル(性別に関係なく人を好きになる)でジェンダークィア(男女二元論にとらわれない)だと公言しています。
きのコさんがポリアモリーを知ったきっかけは、大学時代の文化人類学の講義でした。
「ポリガミー(複数婚)」という概念を学んだことがきっかけで、自分で調べるうちにポリアモリーの存在を知ったそうです。
ただ、すぐに実践したわけではありません。
実は、10年間「一途になろう」と努力したのです。
しかし28歳のとき、「一途になれると思った相手」と破局。
「誰にも受け入れられず孤独になるとしても、自分に正直に生きたい」
そう決意して、ポリアモリーとして生きることを選びました。
現在の交際相手Aさん(40代男性、熊本県出身)とは2012年から付き合っています。
最も多いときには、Aさんを含めて4人の恋人がいたそうです。
しかし、多くの人が気になるのは「本当に嫉妬しないの?」という点ではないでしょうか。
「嫉妬しないの?」実際はどうなのか当事者の声
結論から言うと、嫉妬しないわけではありません。
付き合い始めは嫉妬もあったし、けんかもあった。
それを「毎日の話し合い」で乗り越えてきたのです。
共同通信の記事で、交際相手のAさんはこう語っています。
「付き合い初めの頃、きのコさんが他の恋人とデートをすることに不安や嫉妬を感じ、けんかすることもありました」
では、どうやって乗り越えたのか。
さらに、きのコさんの他の恋人と一緒に食事に行く機会も作ったそうです。
「実際に会うと印象が良く、きのコさんが魅力を感じる理由が分かりました」
こうして2〜3年かけて、「他に恋人がいても自分への好意は失われない」と納得できるようになったといいます。
ここで興味深いのが、「コンパージョン」という概念です。
嫉妬の"逆"の感情。
自分の恋人が他の誰かを愛していること、または他の誰かから愛されていることを知ったときに生まれる「喜び」の感情です。
ポリアモリーの世界では、こうした感情を抱く人も珍しくないとされています。
また、「メタモア」という言葉もあります。
これは「自分の恋人の恋人」のこと。
ポリアモリーの実践者の中には、メタモアと仲良くなり、カレンダーを共有してデートの日程が被らないよう調整する人もいるそうです。
今では、きのコさんに新しく好きな人ができたり、失恋したりしたとき、Aさんが親身に相談に乗るような関係になっています。
Aさん自身にも別の交際相手がいて、全員がこうした関係に合意しているとのこと。
それでも「おかしい」「本当の愛じゃない」という批判は絶えません。
「頭おかしい」「本当の愛を知らない」という批判への回答
こうした批判の多くは、「浮気」との混同から来ています。
Yahoo!ニュースのコメント欄やSNSでは、こんな声が上がっています。
「クズ」「性に奔放」「病気なのでは」「本当の恋を知らないだけ」——
しかし、ポリアモリーの当事者たちはこう反論します。
浮気や不倫は、パートナーに隠れて関係を持つこと。
バレたら困るから、嘘をつく。
一方、ポリアモリーは最初から全員に伝えます。
合意が得られなければ、その関係は成立しない。
むしろ「誠実さ」を最も大切にしているのです。
きのコさんはこう語っています。
「誰にも受け入れられず孤独になるとしても、自分に正直に生きたい」
これは「好き勝手に複数と付き合いたい」という欲望とは、まったく違うものです。
また、「一人の人を深く愛することができない」という批判に対しては、当事者からこんな声もあります。
「複数の子どもを持つ親は、一人の子どもしか愛せないわけではないですよね」
「友人が複数いても、それぞれを大切に思うことはできますよね」
愛情は「有限」なものなのか、それとも「無限」なのか。
その考え方の違いが、ポリアモリーへの理解を分けているのかもしれません。
しかし、日本の法律ではポリアモリーはどう扱われるのでしょうか?
日本でポリアモリーは認められる?法律と婚姻制度の壁
日本の法律は、一夫一婦制(モノガミー)が前提です。
婚姻関係がある場合、配偶者以外と性的関係を持つことは「不貞行為」として離婚事由になります。
そのため、ポリアモリーを実践する人の多くは、意図的に「結婚しない」という選択をしています。
法律上の婚姻関係を結ばなければ、複数の人と交際しても違法にはならないからです。
ただし、これには課題もあります。
- 法的な権利(相続、医療同意など)が認められない
- 子育てにおける法的保護がない
- 社会的な認知が得られにくい
一方、婚姻関係を結んだ上で複数人と交際する「オープンマリッジ」というスタイルもあります。
これは夫婦間で「配偶者以外との関係を認める」と合意した上での関係。
ただし、法的には「不貞行為」に該当する可能性があるため、リスクを理解した上での選択になります。
最近では「一人で子育てするのが不安」「子どもが産めないから複数人で家族になりたい」といった理由でポリアモリーに興味を持つ人も増えているそうです。
性愛だけでなく、「新しい家族の形」としてポリアモリーが注目されている面もあります。
では、ポリアモリーを公言している有名人はいるのでしょうか?
ポリアモリーを実践する有名人・芸能人はいる?
「ポリアモリー 芸能人」は多く検索されていますが、日本の芸能人で公言している人は確認されていません。
なぜでしょうか。
日本では「浮気」「不倫」との混同や偏見が強く、カミングアウトすることで社会的なリスクを負う可能性があるからです。
実際、きのコさんをはじめ、日本でポリアモリーについて発信している人の多くは「仮名」を使っています。
海外では、俳優のウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミス夫妻が「オープンマリッジ」を公言して話題になりました。
ただし、これは厳密にはポリアモリーとは異なる概念です。
オープンマリッジは「配偶者以外との関係を認める夫婦間の合意」であり、必ずしも複数の「恋愛関係」を築くわけではありません。
いずれにせよ、日本ではまだ「公言できる環境」が整っていないのが現状です。
だからこそ、今回のきのコさんのインタビュー記事は、ポリアモリーについて考えるきっかけになるかもしれません。
「自分もそうかも?」と思った方は、どうすればいいのでしょうか。
「自分もそうかも?」と思ったらどうすればいい
まずは情報収集から始めることをおすすめします。
「複数の人を同時に好きになってしまう」「一人に決められない自分はおかしいのでは」
そんな悩みを抱えている人は、実は少なくありません。
きのコさん自身も、10年間悩み続けました。
ポリアモリーという概念を知ることで、「自分だけじゃなかった」と救われる人もいます。
以下の書籍や交流会が参考になります。
📚 書籍
- きのコ『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』(WAVE出版)
- 深海菊絵『ポリアモリー 複数の愛を生きる』(平凡社)
- 荻上チキ『もう一人、誰かを好きになったとき:ポリアモリーのリアル』
🤝 交流会
- ポリーラウンジ:ポリアモリーに興味を持つ人の交流会。関東・関西各地で開催、オンラインでも参加可能
ポリアモリーを実践するかどうかは、あくまで個人の選択です。
大切なのは、自分の気持ちに正直に向き合うこと。
そして、パートナーとの誠実なコミュニケーションです。
きのコさんはこう言っています。
「好きな人が複数できたとき、①どちらかを諦める ②浮気する——ではなく、3番目の選択肢がある。幸せになれる恋愛の形を改めて考えてみてほしい」
まとめ
📝 この記事のポイント
- ポリアモリーと浮気の違いは「全員が知っていて合意しているかどうか」。隠したら浮気。
- きのコさんは九州大卒で著書もある、ポリアモリーの第一人者
- 嫉妬しないわけではない。毎日の話し合いで2〜3年かけて乗り越えた
- 日本の法律は一夫一婦制が前提。そのため「結婚しない」選択をする人も多い
- 「自分もそうかも」と思ったら、まずは情報収集から
ポリアモリーという生き方を「正しい」とも「間違っている」とも言い切ることはできません。
ただ、一つ確かなのは、誠実に向き合おうとしている人たちがいるということ。
この記事が、多様な愛の形について考えるきっかけになれば幸いです。
よくある質問(FAQ)
Q. ポリアモリーと浮気の違いは何ですか?
A. 最大の違いは「全員が知っていて合意しているかどうか」です。ポリアモリーは関係者全員に伝え、合意を得た上で複数と交際します。隠し事をした時点で浮気になります。
Q. きのコさんとはどんな人ですか?
A. 1983年福岡県生まれ、九州大学大学院修了の文筆家です。2018年に著書『わたし、恋人が2人います。』を出版し、交流会「ポリーラウンジ」を主催するポリアモリーの第一人者です。
Q. ポリアモリーの人は嫉妬しないのですか?
A. 嫉妬しないわけではありません。きのコさんの交際相手Aさんも「付き合い初めは嫉妬した」と語っています。毎日の話し合いで2〜3年かけて乗り越えたそうです。
Q. 日本でポリアモリーは法律的に認められていますか?
A. 日本は一夫一婦制が前提のため、婚姻関係がある場合は「不貞行為」に該当する可能性があります。そのため、多くのポリアモリスト は意図的に結婚しない選択をしています。
参考文献
- 共同通信「恋人が複数、でも浮気じゃない。全員同意「ポリアモリー」とは」
- IDEAS FOR GOOD「ポリアモリーとは・意味」
- シブヤ大学 きのコさんプロフィール
- きのコ『わたし、恋人が2人います。』(WAVE出版)
- 深海菊絵『ポリアモリー 複数の愛を生きる』(平凡社)