
2025年11月28日、中国・上海で開催されていた「バンダイナムコフェスティバル2025」で、歌手の大槻マキさんがステージで歌っている最中、突然照明が落ち、音楽が止まるという事態が発生しました。
動画はSNSで瞬く間に拡散され、「怖すぎる」「ゾッとした」といった声が相次いでいます。
なぜこんなことが起きたのでしょうか。
大槻マキさんとはどんなアーティストなのか、そして背景にある日中関係の問題まで、分かりやすく解説します。
この記事でわかること
上海フェスで何が起きた?—突然の暗転と強制退場の一部始終
結論から言うと、大槻マキさんは歌唱中に照明と音声を突然遮断され、スタッフに促されてステージを去ることになりました。
事件が起きたのは11月28日の午後、上海・西岸ドームアートセンターで開催されていた「バンダイナムコフェスティバル2025」でのことです。
中国のSNS「微博(ウェイボ)」や動画サイト「ビリビリ動画」、そして日本のXには、複数の角度から撮影された動画が投稿されています。
動画に映っていたこと
動画には、大槻さんがアニメ『ONE PIECE』の楽曲を歌い、観客と一体になって盛り上がっている様子が映っています。
ところが、その最中に突然会場が真っ暗になり、音楽がピタリと止まりました。
約10秒間の暗闘の後、照明が戻ると、ステージ上で呆然とする大槻さんの姿がありました。
2人のスタッフがステージに上がり、何かを説明しているようでした。
その後、大槻さんは促されるようにステージ袖へと退場していきました。
公式発表の内容
大槻さんの公式サイトは29日に更新され、以下のように説明しています。
「パフォーマンス中ではございましたが、やむを得ない諸事情により急遽中断せざるを得ない状況となってしまいました」
翌29日の出演も「同様の事情により中止」となったことが報告されました。
📌 注目ポイント
イベント全体が中止になったわけではありません。TBSの報道によると、展示エリアや物販など「キャラクターイベント」としての部分は継続されており、日本人アーティストによるライブパートだけが止められた形です。
では、強制的にステージを降ろされた大槻マキさんとは、どんなアーティストなのでしょうか。
大槻マキとは—ONE PIECE初代ED歌手、25年の軌跡
大槻マキさんは、1999年にアニメ『ONE PIECE』の初代エンディングテーマ「memories」でデビューした歌手です。
「memories」は、1999年10月20日の第1話から第30話まで使用された楽曲で、オープニングテーマ「ウィーアー!」(きただにひろし)と同時期にONE PIECEを彩りました。
続く「RUN!RUN!RUN!」(第31話〜第63話)もヒットし、知名度を一気に上げました。
25年間の主なONE PIECE主題歌
| 年 | 楽曲 | 使用話数 |
|---|---|---|
| 1999年 | memories | 第1話〜第30話 |
| 2000年 | RUN!RUN!RUN! | 第31話〜第63話 |
| 2016年 | Destiny | 夏SP主題歌 |
| 2024年 | Dear sunrise | エッグヘッド編ED |
その後はバンド活動などを経て、2016年には約15年ぶりにONE PIECEの主題歌「Destiny」を担当。
そして2024年1月からは、約8年ぶりとなるテレビシリーズのエンディングテーマ「Dear sunrise」を担当しています。
💡 実は…
ONE PIECEの主題歌を4曲も担当しているアーティストは、実はそう多くありません。初代オープニングの「ウィーアー!」を歌うきただにひろしさんと並んで、作品の「顔」とも言える存在です。
中国でもONE PIECEは絶大な人気を誇り、大槻さんの楽曲を知るファンは少なくありません。
だからこそ、今回の強制中断は大きな衝撃を与えました。
では、なぜ彼女のステージは中断されたのでしょうか。
なぜ中断されたのか—高市首相の台湾発言と日中関係悪化
公式発表では「やむを得ない諸事情」「不可抗力」としか説明されていませんが、背景には日中関係の急速な悪化があると見られています。
発端となったのは、2025年11月7日の衆議院予算委員会での高市早苗首相の答弁です。
高市首相は何を言ったのか
立憲民主党の岡田克也議員から「台湾有事においてどのような場合に存立危機事態となるのか」と問われた高市首相は、こう答えました。
「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだと、私は考えます」
「存立危機事態」とは?
簡単に言えば「日本が集団的自衛権を使って武力行使できる状態」のことです。
つまり、台湾で戦争が起きた場合、日本が軍事的に関与する可能性を示唆したわけです。
📌 なぜこれが問題なのか
実は、歴代の首相たちはこの問題について意図的に曖昧な表現を使ってきました。台湾問題は中国にとって最も敏感なテーマであり、明言することは外交上のタブーとされてきたからです。
中国側の激しい反発
高市首相の発言に、中国は激しく反発しました。
中国の薛剣・駐大阪総領事はXに「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」と投稿(後に削除)。
外交官としては異例の過激な表現が国際的な波紋を呼びました。
11月14日には、中国外務省が中国国民に対し「日本への渡航を当面控えるように」と注意喚起を発表。
留学についても「慎重に検討するように」と呼びかけました。
この流れの中で、日本人アーティストの中国公演が次々と中止に追い込まれていったのです。
大槻マキさんだけではありません。
同じ時期に、驚くほど多くの公演が中止となりました。
中止の連鎖—浜崎あゆみ、ゆず、セーラームーン…影響はどこまで
11月中旬以降、日本人アーティストの中国公演は軒並み中止となっています。
主な中止・延期イベントを整理すると、その規模の大きさが分かります。
音楽関連
- 浜崎あゆみ(上海公演):11月29日予定が前日に中止発表
- ゆず(香港・上海・台北):ツアー中止
- シド:公演中止
- 上原ひろみ:コンサート中止
アイドル・グループ関連
- JO1(広州ファンイベント):11月28日予定が中止
- ももいろクローバーZ(バンダイナムコフェス):出演中止
- 前島亜美、斉藤朱夏など声優のソロイベント:中止
アニメ・エンタメ関連
- ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(北京・杭州):公演中止
- リスアニ!LIVE SHANGHAI 2025:中止
- バーチャルシンガー花譜ワンマンライブ:中止
- 吉本興業「よしもとコメディスペシャル」(上海):中止
⚠️ 特に衝撃的だったのは浜崎あゆみさんの上海公演です
日本と中国のスタッフ総勢200名で5日間かけてステージを組み上げ、リハーサルまで終えていました。しかし、公演当日の午前に中止の要請を受けたのです。
浜崎さんは「今はまだ信じられず、言葉になりません」とSNSで無念の思いを綴りました。
👉 浜崎あゆみの上海公演中止についてはこちらで詳しく解説しています
いずれの主催者も「不可抗力」「やむを得ない事情」を理由として挙げており、具体的な説明はありません。
しかし、このタイミングと規模から見て、日中関係の悪化が影響していることは明らかです。
では、こうした事態を中国のファンはどう受け止めているのでしょうか。
中国ファンの声—「礼儀がない」「尊重していない」
意外かもしれませんが、中国のファンからも運営への批判の声が上がっています。
朝日新聞の報道によると、中国のSNS「小紅書(シャオホンシュー)」には、大槻マキさんの強制退場動画が投稿され、多くのコメントが寄せられています。
「礼儀がない」
「パフォーマーや観客を尊重しない行為だ」
こうした批判の声が相次いでいるのです。
現場で飛び交った言葉
また、現場では興味深い言葉が飛び交いました。
💡「一刀切(イータオチェ)だ!」
これは中国語のスラングで、「一律に切る」「問答無用で処分する」という意味があります。政府が細かい事情を考慮せず、一律に規制をかける強権的な手法を批判する際に使われる表現です。
つまり、中国のファンの中にも「やり方が酷い」「政府の対応は行き過ぎだ」と感じている人が少なくないのです。
日本人アーティストの公演を楽しみにしていた中国のファンにとっても、この事態は大きな失望となっています。
政治の問題と文化交流は別という思いは、国境を越えて共通しているようです。
今後の日中文化交流はどうなるのか
当面は厳しい状況が続く見通しです。
高市首相は発言の撤回を拒否しており、中国側も態度を軟化させる気配はありません。
政府間の対立が続く限り、日本人アーティストの中国公演には「リスク」が付きまとうことになります。
完全な断絶ではない
ただし、完全な「断絶」ではないという点は注目に値します。
バンダイナムコフェスティバルでも、ライブパートは中止になりましたが、展示エリアや物販は継続されています。
日本のアニメ・ゲームコンテンツ自体が禁止されているわけではありません。
過去の事例から見る今後
過去の日中関係の悪化局面を振り返ると、一定の冷却期間を経て文化交流が再開されるパターンが多く見られます。
2010年の尖閣諸島問題、2012年の反日デモの際も、時間の経過とともに交流は回復しました。
今回も、政治状況の変化や両国の実利的な判断によって、状況が改善する可能性はあります。
一方で、「チャイナリスク」を再認識した企業やアーティストが、中国以外のアジア市場(東南アジア、台湾、韓国など)へのシフトを加速させる動きも予想されます。
いずれにしても、今回の一件は日中関係の難しさを改めて浮き彫りにしました。
まとめ
今回の出来事のポイントを整理します。
- 2025年11月28日、上海のバンダイナムコフェスで大槻マキさんが歌唱中に照明・音声を遮断され強制退場となった
- 大槻マキさんはONE PIECE初代ED「memories」でデビューし、25年間作品と共に歩んできたアーティスト
- 背景には高市首相の台湾有事発言(11月7日)による日中関係の急速な悪化がある
- 浜崎あゆみ、ゆず、セーラームーンなど多数の日本関連イベントが中止に
- 中国のファンからも「礼儀がない」と運営への批判の声が上がっている
政治と文化は切り離せるのか、それとも不可分なのか。
今回の事件は、そんな難しい問いを私たちに投げかけています。
よくある質問
Q. 大槻マキさんは無事なのか?
A. 無事です。公式サイトでファンへの謝罪コメントが掲載されており、身体的な被害は報告されていません。強制退場後、イベントスタッフに促されてステージを降りた形です。
Q. なぜ歌唱中に中断されたのか?
A. 公式には「やむを得ない諸事情」としか説明されていません。ただし、高市首相の台湾有事発言(11月7日)をきっかけに日中関係が悪化しており、日本人アーティストの公演が次々と中止されている状況から、政治的な影響があると見られています。
Q. 大槻マキとはどんなアーティスト?
A. 1999年にアニメ『ONE PIECE』の初代エンディングテーマ「memories」でデビューした歌手です。25年間で「memories」「RUN!RUN!RUN!」「Destiny」「Dear sunrise」の4曲のONE PIECE主題歌を担当しており、作品を象徴するアーティストの一人です。
Q. 他にも中止になった公演はある?
A. 多数あります。浜崎あゆみの上海公演、ゆずのアジアツアー、ミュージカル「セーラームーン」の中国公演、JO1のファンイベントなど、11月中旬以降、日本人アーティストの中国関連イベントが軒並み中止となっています。