📋 この記事でわかること
2025年10月11日午前、大阪市福島区の交差点で、誰もが「なぜ?」と思う痛ましい事故が発生しました。
自転車に乗っていた25歳の女性が、左折してきた10トントラックに巻き込まれ、約250メートルも引きずられて亡くなったのです。
⚠️ 250メートルといえば、学校のグラウンドを1周する距離。
東京タワーの高さの約0.75倍にもなります。
なぜ、これほどの距離を引きずっても運転手は気づかなかったのでしょうか。
運転していたのは、ミャンマー国籍の57歳の男性でした。この事故の背景には、大型トラック特有の構造的問題と、外国人運転手の免許取得制度をめぐる課題が浮き彫りになっています。

📍【事故の全容】大阪・福島区で何が起きたのか
2025年10月11日午前9時40分ごろ、大阪市福島区野田6丁目の交差点で事故は起きました。
関西テレビの報道によると、被害に遭ったのは大阪市西区在住の会社員、竹本可奈さん(25歳)。自転車で交差点を東に進んでいたところ、左折してきた10トントラックに巻き込まれました。
竹本さんは自転車ごと約250メートルにわたって引きずられ、搬送先の病院で死亡が確認されました。
警察は、トラックを運転していた名古屋市緑区在住のミャンマー国籍、アウン・チョウ・ミイン容疑者(57歳)を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕。容疑者は容疑を認めているといいます。
警察は、容疑を過失運転致死に切り替えて調べる方針です。また、ひき逃げの疑いも視野に捜査を進めています。
しかし、多くの人が疑問に思うのは「なぜ250メートルも引きずって気づかなかったのか」ということでしょう。
🚛 なぜ250メートルも引きずったのか - トラックの「死角」と「内輪差」
実は、大型トラックには運転手から全く見えない「死角」が存在します。
大阪府警の公式解説によると、大型トラックは車体の左側に大きな死角ができてしまう構造になっています。
👁️ トラックの死角はどれくらい広い?
運転席から見ると、車体の真横にいる自転車や歩行者は完全に見えなくなります。
サイドミラーでも確認できない範囲があり、特に運転席の真横から少し後ろにかけての左側は「完全な死角」となるのです。
普通車とは違い、トラックの運転席は高い位置にあります。そのため、車体のすぐそばの低い位置にいる自転車は視界から消えてしまいます。
⚙️ 内輪差という危険な現象
もう一つの問題が「内輪差」です。
内輪差とは、車が曲がるときに後輪が前輪よりも内側を通る現象のこと。
💡 普通車でも内輪差は発生しますが、大型トラックの場合は車体が長いため、内輪差が最大2.5メートル以上にもなります。
これは自転車約2台分の幅に相当します。
つまり、運転手が「前輪は自転車を避けて曲がった」と思っても、後輪は自転車のいる位置を通過してしまう可能性があるのです。
❓ なぜ引きずられても気づかないのか
10トントラックは、荷物を積んでいない状態でも車両総重量が11トン以上あります。これは普通車の約5倍の重さです。
車体下部に自転車が巻き込まれても、運転手は重さの変化をほとんど感じません。
さらに、エンジン音や走行音が大きいため、異常な音にも気づきにくいのです。
こうした複数の要因が重なり、250メートルという長距離を引きずってしまう事故が起きてしまいました。
では、このトラックを運転していたミャンマー人の運転手は、どうやって大型免許を取得したのでしょうか。
🪪 ミャンマー人運転手はどうやって大型免許を取得したのか
10トントラックを運転するには、日本の大型自動車免許が必要です。
外国人が日本で大型トラックを運転する場合、いくつかの方法があります。その一つが「外免切替」と呼ばれる制度です。
📋 外免切替とは?
外免切替とは、外国の運転免許証を日本の運転免許証に切り替える手続きのことです。
しかし、ここで重要な事実があります。
🌍 実は、ミャンマーはジュネーブ条約(運転免許の国際ルールを決めた条約)に加盟していません。
そのため、ミャンマー・ユニティの解説によると、ミャンマー人が日本の免許を取得する場合、以下の手順が必要です。
📝 ミャンマー人の免許取得手順
- ミャンマーで運転免許証を取得する
- その後、ミャンマーで最低でも3ヶ月滞在する
- 日本に入国後、免許センター・試験場で書類審査を受ける
- 適性検査(視力検査など)を受ける
- 知識確認(学科試験)を受ける
- 実技試験を受ける
つまり、「外国人は簡単に日本の免許が取れる」という印象がありますが、ミャンマー人の場合は試験を受ける必要があるのです。
📖 どんな試験を受けるのか
知識確認は、ミャンマー語を含む20言語で受けることができます。
ただし、試験の内容は日本の交通ルールに関するものです。標識の意味、右側通行と左側通行の違い、交差点での優先順位など、日本特有のルールを理解していなければ合格できません。
実技試験では、実際に日本の道路で車を運転できる技能があるかが確認されます。
それでも、なぜ外国人運転手による事故が問題になっているのでしょうか。その背景には、制度そのものの課題がありました。
📅 事故の10日前に厳格化されたばかりの制度 - 2025年10月の大改正
実は、この事故が起きたのは2025年10月11日。
そのわずか10日前の2025年10月1日、外免切替制度が大幅に厳格化されたばかりだったのです。
🤔 なぜ厳格化されたのか
日本経済新聞の報道によると、2024年に外免切替で日本の免許を取得した外国人は約6万8千人と過去最多を記録しました。これは10年前の約2.7倍にもなります。
外国人運転手による交通事故も増加傾向にあり、2024年には7286件発生しています。
✨ 2025年10月1日からの主な変更点
1. 住所確認の厳格化
これまでは、観光ビザで日本に短期滞在している外国人でも、ホテルの住所を使って免許の切り替えができる「抜け道」がありました。
新制度では、原則として住民票の写しの提出が義務付けられ、住民票がない外国人観光客には切り替えが認められなくなりました。
2. 知識確認の難易度アップ
これまでの知識確認は10問程度で、合格ラインも比較的低いものでした。
新制度では、問題数が50問に増加。合格ラインも引き上げられ、日本の交通ルールをより深く理解していないと合格できなくなりました。
3. 技能確認の厳格化
実技試験も、日本の交通環境に適した運転ができるかどうか、より厳しくチェックされるようになりました。
⏰ 制度改正の皮肉なタイミング
この厳格化は、まさに事故を防ぐために実施されたものでした。
しかし、改正からわずか10日後に、このような痛ましい事故が起きてしまったのです。
今回の容疑者がいつ、どのような形で免許を取得したのかは明らかにされていません。しかし、この事故は制度の問題だけでは説明できない、より深い構造的な課題を示しています。
🔄 繰り返される大型トラック巻き込み事故 - 構造的な問題
実は、大型トラックによる左折巻き込み事故は、今回が初めてではありません。
アトム法律事務所の解説によると、大型トラックが左折する際に自転車やバイクを巻き込む事故は、毎年多数発生しています。
⚖️ 事故の過失割合はどうなる?
法律上、このような巻き込み事故の基本的な過失割合は「車90:自転車10」とされています。
つまり、ほとんどのケースで車側の責任が重いと判断されます。
これは、車両の運転者には「優者の危険負担」という考え方が適用されるためです。破壊力のある車両を運転する側には、より高い注意義務が課せられるのです。
🌙 特に危険な夜間の事故
交通事故の統計を見ると、驚くべき事実があります。
四輪車と自転車の死亡事故を事故類型別に見ると、追突事故が最も死亡率が高いのです。出会い頭事故や右左折時の事故に比べて約8倍も死亡事故の発生率が高くなっています。
📊 さらに、昼夜別で見ると、追突事故が占める割合は昼間が30%なのに対し、夜間は62%。
夜間は昼間の約2倍も追突による死亡事故が多いのです。
これは、夜間では視認性が悪くなり、四輪車が自転車に気づくのが遅れるためと考えられています。
📈 年間7286件という重い数字
2024年に外国人運転手が関与した交通事故は7286件。
これは決して少ない数字ではありません。1日平均で約20件の事故が起きている計算になります。
もちろん、事故の原因は運転手の国籍だけで決まるものではありません。しかし、言語の壁、交通文化の違い、標識の理解度など、様々な要因が事故のリスクを高めている可能性があります。
では、こうした事故を防ぐために、これから何ができるのでしょうか。
💡 これからどうなる - 雇用企業の責任と今後の対策
今回の事故を受けて、様々な議論が起きています。
🏢 雇用企業の責任は?
SNS上では「外国人労働者を雇用している企業にも責任があるのではないか」という声が上がっています。
確かに、企業が外国人運転手を雇用する場合、以下のような責任があると考えられます。
- 運転手が適切な免許を持っているかの確認
- 日本の交通ルールを理解しているかの確認
- 定期的な安全教育の実施
- 事故を起こした場合の賠償責任
特に、大型トラックのような危険性の高い車両を扱う場合、企業側のより厳しい管理が求められるでしょう。
🔧 最新の安全技術
実は、最新の大型トラックには「アクティブサイドガードアシスト」という安全装置が搭載されているものがあります。
これは、走行中に車両左側の歩行者や車両を感知すると、運転手に警告を発する機能です。
しかし、すべてのトラックにこうした装置が搭載されているわけではありません。義務化にはまだ時間がかかりそうです。
🏛️ 国の動き
くるまのニュースの報道によると、2025年3月の衆議院予算委員会で、国家公安委員長が外免切替制度のさらなる改正について検討を進めると発言しています。
10月の厳格化だけでは不十分だという認識が、政府内でも広がっているようです。
🙋 私たちにできること
では、私たち一般の人々には何ができるのでしょうか。
🚴 自転車に乗るとき
- 大型トラックの近くを走らない
- 左折しようとしているトラックの左側に入らない
- トラックの運転手と目を合わせて、気づいてもらう
- 夜間は必ずライトをつける
🚗 車を運転するとき
- 左折前に必ず左側を確認する
- サイドミラーだけでなく、目視でも確認する
- 自転車が近くにいるときは、十分な距離を取る
🌐 社会として
- 外国人運転手への適切な教育の必要性を認識する
- 企業の安全管理責任を明確にする
- 自転車専用道路の整備を進める
📝 まとめ - 複合的な問題として考える
大阪・福島区で起きた痛ましい事故は、私たちに多くのことを考えさせます。
この記事のポイント
- 2025年10月11日、25歳の女性が10トントラックに250メートル引きずられ死亡
- 大型トラックには死角と内輪差という構造的な問題がある
- ミャンマー人運転手も試験を受けて免許を取得している
- 事故の10日前に外免切替制度が厳格化されたばかり
- 年間7286件の外国人運転手による事故が発生している
- 雇用企業の責任と最新の安全技術の導入が課題
重要なのは、「外国人だから」という単純な図式ではなく、大型トラックという車両の特性、免許制度の実態、雇用企業の責任など、複合的な要因を正しく理解することです。
制度は厳格化されました。しかし、本当に大切なのは、制度の整備だけでなく、私たち一人ひとりが交通安全を意識し、大型車両の死角や内輪差を理解することではないでしょうか。
竹本可奈さんのご冥福を心よりお祈りします。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1: なぜトラック運転手は250メートルも引きずって気づかなかったのですか?
大型トラックには車体左側に大きな死角があり、自転車が完全に見えなくなります。また10トントラックは車両総重量が11トン以上あるため、車体下部に自転車が巻き込まれても重さの変化をほとんど感じません。エンジン音も大きく、異常な音に気づきにくいことも要因です。
Q2: ミャンマー人はどうやって日本の大型免許を取得するのですか?
ミャンマーはジュネーブ条約非加盟国のため、外免切替でも試験が必須です。ミャンマーで免許取得後、最低3ヶ月滞在し、日本で書類審査・適性検査・知識確認(学科試験)・実技試験を受ける必要があります。決して「簡単に取れる」わけではありません。
Q3: 2025年10月の外免切替制度の厳格化とは何ですか?
2025年10月1日から、住民票の提出が義務化され観光客は申請不可になりました。また知識確認の問題数が10問から50問に増加し、合格ラインも引き上げられました。実技試験も日本の交通環境に適した運転ができるかより厳しくチェックされるようになりました。
Q4: 大型トラックの巻き込み事故はどれくらい発生していますか?
2024年に外国人運転手が関与した交通事故は7286件発生しています。大型トラックによる左折巻き込み事故は毎年多数発生しており、特に夜間の追突事故は昼間の約2倍も死亡事故の発生率が高くなっています。
🙏 この事故を教訓に、私たち一人ひとりができることから始めましょう