フランス 82% / 日本 13%
この数字、何のことかわかりますか?
出産時に麻酔を使って痛みを和らげる「無痛分娩」を選んだ人の割合です。
同じ先進国なのに、なぜこんなに差があるのか。
その答えが、日本に根強く残る「母性神話」という考え方にありました。
2025年12月、ABEMA Primeである女性の体験談が話題になっています。
夫に無痛分娩を猛反対され、自然分娩で出産。その後、夫婦関係は悪化し、離婚に至ったというのです。
「痛みに耐えてこそ母親になれる」
そんな価値観に苦しむ女性は、今も少なくありません。
この記事では、なぜ日本で無痛分娩が広まらないのか、その背景にある母性神話の正体、そして2025年10月から始まった東京都の助成金制度まで、わかりやすく解説します。

📋 この記事でわかること
「痛みに耐えてこそ母親」は本当?無痛分娩を阻む母性神話の正体
結論から言うと、「母性神話」とは「出産の痛みに耐えることで母親になる資格が得られる」という日本特有の価値観です。
💡 実は…
この考え方は海外にはほとんど存在しません。
「お腹を痛めて産んだ子だから可愛い」
「陣痛を乗り越えてこそ、母親になれる」
こうした言葉、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
昭和の時代から続くこの価値観は、当時の女性の存在感を高めようとする動きから生まれたとされています。
痛みに耐えることが「強さ」であり「美徳」であるという考え方ですね。
でも、冷静に考えてみてください。
痛みを感じなかったら、我が子を愛せないのでしょうか?
帝王切開で生まれた子は、愛情が薄くなるのでしょうか?
もちろん、そんなことはありません。
神奈川県立保健福祉大学の田辺けい子准教授は、無痛分娩の本来の目的について「無痛にすることではない」と説明しています。
痛みを軽減して「このぐらいの痛みなら産めそう」という状態に調整し、お母さんが自分の力で産む。
それが無痛分娩の本質なのです。
では、この母性神話を信じる人たちは、具体的にどんな理由で無痛分娩に反対するのでしょうか。
夫が無痛分娩に反対する3つの理由とは
夫が無痛分娩に反対する理由は、主に3つあります。
- ①麻酔によるリスクへの恐怖
- ②費用がかかる
- ③「痛みに耐えてこそ母親」という価値観
これは、ABEMA Primeに出演した40代女性「でかまる子さん」の元夫が挙げた理由そのものです。
でかまる子さんは第一子出産時、無痛分娩を希望していました。
しかし夫に猛反対され、自然分娩で出産することに。
「すごく男尊女卑の考え方が根強かったため、痛みに耐えてこそ母親になれるんだという思考が強かった」
元夫についてこう振り返っています。
話し合いを試みても、どうしても口論になってしまう。
お腹に子どもがいる状態で血が上るのは良くないと思っても、うまくいかなかったそうです。
⚠️ 実は…
当時、担当の医師や助産師にも相談したそうですが、結局「自然で産んだ方がいいんじゃないか」と、でかまる子さん側を説得する形になったとのこと。
医療者でさえ、夫を説得してはくれなかったのです。
ネット上では今も「無痛分娩はぜいたく」「甘えだ」という声があふれています。
でも、産むのは女性自身。
痛みを感じるのも、命をかけるのも女性自身です。
Yahoo!ニュースのコメント欄には「夫側には出産に関して何を言う資格もない」という声も多く寄せられています。
日本ではこうした考えが根強いですが、海外ではどうなっているのでしょうか。
海外では常識!フランス82%・アメリカ73%の無痛分娩率
日本の無痛分娩率は13.8%。
これに対して、フランスは82.7%、フィンランドは89%、アメリカは73.1%です。
| 国名 | 無痛分娩率 |
|---|---|
| 🇫🇮 フィンランド | 89% |
| 🇫🇷 フランス | 82.7% |
| 🇺🇸 アメリカ | 73.1% |
| 🇧🇪 ベルギー | 68% |
| 🇸🇪 スウェーデン | 66.1% |
| 🇬🇧 イギリス | 60% |
| 🇯🇵 日本 | 13.8% |
日本産科麻酔学会の調査によると、北米やヨーロッパでは無痛分娩がごく一般的な選択肢として定着しています。
先進国の中で、日本は圧倒的に低い水準にあります。
なぜこんなに差があるのでしょうか。
理由はいくつかあります。
まず、海外では大規模な医療センターで出産するのが一般的で、麻酔科医や設備が十分に確保されていること。
そして、国によっては無痛分娩が保険適用されており、妊婦の自己負担がほぼゼロのケースもあります。
フランスがわかりやすい例です。
1981年、フランスの無痛分娩率はわずか4%でした。
日本の現状とそれほど変わりません。
しかし40年後の2021年には82.7%まで上昇。
医療制度の整備と、社会の意識変化によって、これほど劇的に変わったのです。
🌎 実は…
アメリカのミシガン州に住む日本人の無痛分娩率は63.2%。
環境が整えば、日本人も無痛分娩を選ぶということです。
「日本人は痛みに強いから無痛分娩を選ばない」わけではないんですね。
選べる環境がないから、選ばないだけなのです。
こうした状況を変えようと、東京都が2025年から助成金制度を開始しました。
東京都が2025年10月から最大10万円助成を開始
東京都は2025年10月1日から、無痛分娩の費用を最大10万円助成する制度をスタートさせました。
都道府県では初めての取り組みです。
東京都福祉局の公式ページによると、助成を受けるには以下の条件があります。
- 令和7年10月1日以降に出産していること
- 硬膜外麻酔または脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔による無痛分娩を受けたこと
- 東京都が公表する対象医療機関で出産したこと
- 都内で妊娠届を提出し、申請日まで都内に住民登録があること
無痛分娩の追加費用は一般的に10〜15万円程度かかります。
この助成があれば、経済的なハードルはかなり下がりますね。
東京都は2025年度予算案に11億円を計上。
約9,500件の助成を見込んでいます。
💰 実は…
出産が保険診療であれば、麻酔代自体は1万円程度なんです。
お産が保険適用外だからこそ、無痛分娩に10万円近い費用がかかっているわけですね。
東京都以外では、群馬県下仁田町や茨城県取手市でも同様の助成制度が始まっています。
今後、他の自治体にも広がっていく可能性があります。
ただ、費用の問題が解決しても「リスクが怖い」という声は根強く残っています。
無痛分娩のリスクは本当?専門家が語る「誤解と事実」
麻酔を使う以上、リスクがゼロということはありません。
ただし、現代医療では十分に管理可能なレベルです。
まず、よくある誤解から解いていきましょう。
❌「無痛分娩だと赤ちゃんに影響がある」
これについて、日本産科麻酔学会は「赤ちゃんへの影響はほとんどない」と説明しています。
❌「無痛分娩は発達障害のリスクを高める」
これも現時点で因果関係を示すエビデンスは確認されていません。
ネット上には不安を煽る情報があふれていますが、科学的根拠のない話が多いのが実情です。
実際に起こりうる副作用としては、足の感覚が鈍くなる、血圧が下がるといったものがあります。
だからこそ、麻酔科医や麻酔に精通した医師がいる医療機関を選ぶことが重要なんですね。
💊 実は…
「無痛分娩」という名前ですが、完全に痛みがなくなるわけではありません。
多くの施設では「和痛分娩」と呼んでいるほどです。
痛みを完全にゼロにするのではなく、「このくらいなら産める」というレベルまで和らげます。
意識ははっきりしているので、生まれた瞬間の赤ちゃんを抱くこともできます。
お産のプロセス自体は自然分娩と変わりません。
産後の体の回復過程も同じです。
「楽に産める」というより「痛みに振り回されずに産める」という表現が正確かもしれませんね。
リスクを正しく理解しても、パートナーとの話し合いがうまくいかないケースがあります。
最後に、実際の体験談を見ていきましょう。
夫を説得できなかった女性の末路 ― 離婚に至ったケースも
冒頭で紹介したでかまる子さんは、夫の反対で無痛分娩を諦めた後、夫婦関係が悪化していきました。
第一子を産んだ頃から喧嘩が絶えなくなり、第二子が生まれた後、離婚。
出産方法の選択が直接の原因ではないかもしれません。
でも、妻の体のことなのに意見を聞いてもらえなかった。
その不満が積み重なっていったのは想像に難くありません。
一方で、全く違う体験をした人もいます。
ライター・エッセイストの神田なりさんは、第一子を自然分娩、第二子を無痛分娩で出産しました。
第一子のときは「痛みを伴ってこそ」という思い込みがあったそうです。
でも、隣の分娩室で無痛分娩をしていた人が、静かな状態から急に産声を上げたのを見て考えが変わりました。
第二子では、妊娠中の体調不良で長男が取り乱したことがきっかけで無痛分娩を選択。
「自分が産後の体力を温存した上で、長男にも向き合えることがいい」と考えたからです。
母性神話について聞かれると「当然ない」と断言しています。
🌸 実は…
「長男のときはやりきった達成感。次男は痛みがなかったからこそ『やっと会えた』と涙が出ちゃうぐらいだった」
無痛分娩だからといって、感動が薄れるわけではない。むしろ、痛みに耐えることに必死にならなくて済んだ分、赤ちゃんとの対面に集中できたという声もあるのです。
モデルの益若つばささんも「少しでも楽な時間を女性が選択するのは絶対賛成するべき」と発言しています。
「産む前も辛くて、産んでから怒涛の日々が待っている。この先も辛いのにどうして出産でとどめを刺されなきゃいけないのか」
まさにその通りではないでしょうか。
まとめ
📝 この記事のポイント
- 「母性神話」は日本特有の価値観で、海外にはほとんど存在しない
- 日本の無痛分娩率は13.8%、フランスは82.7%と大きな差がある
- 東京都は2025年10月から最大10万円の助成を開始(都道府県初)
- 無痛分娩のリスクは現代医療で管理可能、発達障害との因果関係は未確認
- 「無痛」といっても完全に痛みがなくなるわけではなく「和痛」に近い
出産方法を決めるのは、産む本人です。
パートナーや家族と話し合うことは大切ですが、最終的には自分の体のことを自分で決める権利があります。
もし無痛分娩を検討しているなら、まずは対応している医療機関を調べてみてください。
日本産科麻酔学会が運営する無痛分娩Q&Aで、詳しい情報を確認することができます。
痛みに耐えることが「母親の条件」ではありません。
どんな形で産んでも、我が子を愛する気持ちに変わりはないのですから。
❓ よくある質問
Q. 母性神話とは何ですか?
「出産の痛みに耐えることで母親になる資格が得られる」という日本特有の価値観です。海外にはほとんど存在しない考え方で、無痛分娩の普及を妨げる要因のひとつとされています。
Q. 夫が無痛分娩に反対する理由は?
主に3つあります。①麻酔によるリスクへの恐怖、②追加費用がかかること、③「痛みに耐えてこそ母親」という伝統的な価値観です。
Q. 海外の無痛分娩率はどのくらい?
フランス82.7%、フィンランド89%、アメリカ73.1%と、日本の13.8%と比べて圧倒的に高い水準です。アメリカ在住の日本人は63.2%が無痛分娩を選んでいます。
Q. 東京都の無痛分娩助成金はいくら?
2025年10月1日から最大10万円の助成が始まりました。都道府県では初の取り組みで、対象医療機関での出産など一定の条件があります。
Q. 無痛分娩にリスクはありますか?
麻酔の副作用リスクはゼロではありませんが、現代医療では十分に管理可能です。発達障害との因果関係は確認されておらず、赤ちゃんへの影響もほとんどないとされています。
📚 参考文献
- 日本産科麻酔学会 無痛分娩Q&A(無痛分娩率・リスク・海外比較データ)
- 東京都福祉局 無痛分娩費用助成制度(助成制度詳細)
- Yahoo!ニュース/ABEMA TIMES(当事者インタビュー・番組内容)