2025年10月25日、プロ野球の日本シリーズで信じられない光景が起きました。
阪神タイガースの村上頌樹投手が投げた球の速度は、なんと「59キロ」。
球場のビジョンにこの数字が表示された瞬間、観客席が騒然となりました。どよめきと歓声が同時に沸き起こる異様な雰囲気。なぜなら、59キロは自転車と同じくらいの速度だからです。
プロ野球の投手が投げる球は通常140キロ前後。それなのに59キロ。遅すぎて逆に打てないという、野球の奥深さを見せつける一球でした。
しかもこの超遅球、ただのお遊びではありません。2球目に144キロの速球を投げ込んで、打者を簡単にアウトにしてしまったのです。
この記事では、日本シリーズで披露された59キロの超遅球について、野球を知らない人でも分かるように解説していきます。
📋 この記事でわかること
⚾ 村上投手の59キロ超遅球、日本シリーズで炸裂

2025年10月25日、みずほPayPayドーム福岡。
日本一を決める日本シリーズの第1戦が始まりました。福岡ソフトバンクホークス対阪神タイガース。2014年以来11年ぶりの対戦です。
阪神の先発投手は村上頌樹。背番号41の右腕投手です。
試合は2回を迎えました。
2死ランナーなしの場面で、ソフトバンクの牧原大選手が打席に入ります。
村上投手が投げた初球。ゆっくりとしたカーブが、低めのコースに決まりました。
そのとき、球場のビジョンに表示された球速は「59キロ」。
一瞬の沈黙の後、観客席がざわつき始めました。「え、今のマジで59キロ?」「遅すぎじゃない?」驚きと戸惑いの声が混ざり合います。
しかしこの超遅球は、ただ遅いだけではありませんでした。
低めにコントロールされた完璧なストライク。打者はタイミングが合わず、手を出すこともできません。
そして2球目。
今度は一転して144キロのカットボール。速球と遅球の差は、なんと85キロ。
打者は完全にタイミングを外され、打ったボールは三塁へのゴロ。あっさりアウトになりました。
これが「緩急」の極致。速い球と遅い球を使い分けて打者を翻弄する、野球の技術の真髄です。
日本シリーズという最高の舞台で、村上投手は自転車並みの遅球と高速道路を走る車並みの速球を武器に、打者と真剣勝負を繰り広げたのです。
(参考:デイリースポーツ 日本Sで球速「59キロ」表示に球場騒然)
👤 村上頌樹投手とは?阪神の若きエース
では、この59キロという超遅球を投げた村上頌樹投手とは、いったい誰なのでしょうか。
📝 基本プロフィール
村上頌樹(むらかみ しょうき)投手は、27歳の右腕投手です。
- 生年月日:1998年6月25日
- 出身地:兵庫県南あわじ市
- 身長:175cm、体重:83kg
- 投打:右投左打
- 背番号:41
2020年のドラフト会議で、阪神タイガースから5位指名を受けて入団しました。
(参考:阪神タイガース公式サイト 村上頌樹選手プロフィール)
🏆 輝かしい実績
村上投手の凄さは、その実績を見れば一目瞭然です。
2023年、プロ3年目でいきなり大ブレイク。シーズン14勝を挙げて、新人王とMVP(最優秀選手賞)を同時に受賞しました。
💡 実は、この2つのタイトルを同時に獲得したのは、セントラル・リーグでは史上初の快挙だったのです。
さらに驚くのは、2023年のWHIP(1イニングあたりの出塁許与率)が0.741を記録したこと。これはNPB(日本プロ野球)の歴代最高記録です。
そして2025年、村上投手は最多勝・最高勝率・最多奪三振の投手三冠を達成。阪神の開幕投手として、シーズンを通してエースとして活躍しました。
(参考:Wikipedia 村上頌樹)
🎯 遅球の使い手としての一面
今回話題になった59キロの超遅球ですが、実は村上投手はレギュラーシーズンから遅球を使うことで知られていました。
普段から90キロに届かないような遅球を織り交ぜながら、打者のタイミングを外す投球術。それが村上投手の武器の一つなのです。
低めに集まる精密なコントロールと、144キロの速球。そこに極端に遅いカーブを加えることで、打者を幻惑する。
27歳の若きエースは、技巧派としての顔も持っていたのです。
日本シリーズの大舞台で、その技術の集大成を見せつけた形となりました。
(参考:スポーツナビ 村上頌樹選手成績)
🔬 59キロの超遅球、その仕組みと効果
「なんでそんなに遅い球で、プロの打者を抑えられるの?」
多くの人が抱くこの疑問。実は、遅球が効く理由には科学的な根拠があります。
📊 緩急の理論:20%ルール
人間の目と脳には、面白い特性があります。
それは、速度の違いを認識するには、平均速度の20%以上の変化が必要だということ。
村上投手の場合、速球は144キロ。遅球は59キロ。その差は85キロです。
144キロの20%は約29キロ。つまり、115キロより遅い球を投げれば、打者は明確に「遅い」と感じるはずです。
しかし村上投手の59キロは、115キロよりもさらに56キロも遅い。差の割合は約59%にもなります。
✅ 理論上必要な20%の差を、はるかに超えているのです。
(参考:緩急は何km差をつければ良いのか - Little Rock Heart)
⚡ 打者のタイミングが狂う理由
プロ野球の打者は、投手の腕の振りやフォームを見て、ボールの速度を予測します。
144キロの速球を待っている打者に、突然59キロの超遅球が来たらどうなるでしょうか。
打者の体は、すでに144キロのタイミングでスイングを開始しています。ところがボールは予想よりはるかに遅い。
結果として、バットが大きく空を切るか、当たっても詰まった弱い打球になるのです。
実は、遅球の本当の効果は「遅球そのものでアウトを取る」ことではありません。
遅球を見せることで、次の速球がより速く感じられるようになる。それが緩急の真髄です。
村上投手の場合、59キロの超遅球を見た後に144キロの速球が来たら、打者には160キロくらいに感じられているかもしれません。
👁️ 視覚的な錯覚も味方につける
さらに、遅球には視覚的なトリックもあります。
投手の腕の振りは同じでも、ボールの速度が極端に遅いと、打者は「まだボールが来ない」という違和感を覚えます。
この違和感が、判断を鈍らせるのです。
プロ野球の打者は、0.4秒ほどの時間でボールを見極め、スイングするかどうかを決めます。
その短い時間の中で、予想と大きく異なる遅球が来ると、脳の処理が追いつかない。
結果として、見逃したり、中途半端なスイングになったりするのです。
村上投手の59キロ超遅球は、理論に裏打ちされた、科学的にも正しい投球術だったのです。
📜 球速59キロは反則じゃない?野球のルール
「そんなに遅い球、反則じゃないの?」
こう疑問に思った人も多いでしょう。結論から言うと、全く問題ありません。
⚖️ 野球に球速制限のルールは存在しない
💡 実は、野球の公式ルールには、球速に関する制限が一切ないのです。
最高球速の制限もありません。最低球速の制限もありません。
つまり、どんなに速い球を投げても、どんなに遅い球を投げても、それだけでは反則にならないのです。
プロ野球では、過去に170キロ近い剛速球が記録されています。一方で、今回の59キロのような超遅球も合法です。
ルールで規定されているのは、投球動作やボークなど、投げ方に関することだけ。球の速度そのものは、投手の自由なのです。
📋 投球に関するルールは別にある
もちろん、野球には投球に関する細かいルールがあります。
- ボーク(不正な投球動作)
- 危険球(打者に向かって投げる)
- 投球時間の制限(ピッチクロック)
これらのルールに違反すれば、もちろんペナルティがあります。
しかし村上投手の59キロの超遅球は、正しい投球フォームで、ストライクゾーンに投げ込まれた、完全に合法的なボールでした。
低めにコントロールされたストライク。打者に危険もなく、ボークでもない。
何も問題のない、完璧な投球だったのです。
🎯 極端な遅球は技術の証
むしろ、59キロという極端な遅球を投げられること自体が、投手の技術の高さを示しています。
普通の投手が極端に遅い球を投げると、コントロールが定まりません。ボールになったり、真ん中に浮いて打たれたりします。
村上投手は、59キロという超遅球を、狙ったコースに正確に投げ込みました。
これは、体の使い方やボールの握り方、リリースのタイミングなど、すべてを完璧にコントロールできているからこそできる技術です。
ルール上、全く問題のない、技術の結晶のような一球だったのです。
📊 プロ野球史上の遅球記録と村上の位置づけ
村上投手の59キロは、プロ野球史上でも極めて珍しい記録です。では、他にはどんな遅球の記録があるのでしょうか。
🌍 MLB史上の遅球記録
メジャーリーグ(MLB)では、50キロ前後の投球記録があります。
2021年、テキサス・レンジャーズの試合で、野手が登板した際に50キロ台の投球を記録しました。
ただし、これは大差がついた試合で、野手が投手として登板したケース。本職の投手が投げたわけではありません。
本職の投手が、真剣勝負の場面で50キロ台の超遅球を投げることは、ほとんどないのです。
その意味で、村上投手の59キロは、日本シリーズという最高の舞台で、現役トップクラスの投手が投げたという点で、非常に価値のある記録と言えます。
🇯🇵 日本の有名な遅球投手
日本プロ野球には、遅球を武器にした名投手が何人もいます。
⭐ 三浦大輔(元横浜DeNA)
「ハマの番長」として知られる三浦投手。90キロ前後のスローカーブを武器に、通算172勝を挙げました。
2013年のオールスターでは、当時日本ハムの大谷翔平選手(現ロサンゼルス・ドジャース)に対し、球速表示されないほどの超遅球を投げ、ピッチャーゴロに抑えたことで話題になりました。
⭐ 星野伸之(元阪神など)
「遅球王」と呼ばれた左腕投手。平均球速120キロ台で、通算200勝以上を記録した伝説的な技巧派です。
力で押すのではなく、制球力と緩急で打者を翻弄するスタイルは、多くの後輩投手に影響を与えました。
⭐ 加藤貴之(日本ハム)
現役投手の中でも屈指の技巧派。精密機械のような制球力と、極端に遅いスローカーブが武器です。
打者が真ん中の球を見送った後、3秒間フリーズしたという逸話もあるほど、タイミングが合わない球を投げます。
(参考:スローボールピッチャー 打者を惑わす遅球を武器に打者を翻弄する投手は誰だ - モルツの野球日誌)
🏆 村上投手の59キロの位置づけ
これらの名投手と比較しても、村上投手の59キロは際立っています。
90キロ前後の遅球を使う投手は何人もいます。しかし、50キロ台の超遅球を、日本シリーズという大舞台で投げた投手は、ほとんどいません。
しかも村上投手は、2025年に投手三冠を達成したトップクラスの投手。速球も140キロ台を投げられます。
速球と遅球の両方を高いレベルで使いこなせる、現代野球における技巧派エースの一人なのです。
⚾ 試合結果と村上の投球内容
では、59キロの超遅球を投げた村上投手は、この試合でどんな投球をしたのでしょうか。
😰 初回の立ち上がり
村上投手は、試合の立ち上がりで苦戦しました。
初回、先頭の柳田選手に四球を与えると、制球が乱れ始めます。
最多勝・最高勝率・最多奪三振の投手三冠に輝いた村上投手ですが、自慢の制球力が発揮できません。
そして4番の近藤選手に、詰まった当たりながら中前安打を打たれ、先制点を許してしまいました。
初回だけで29球を投げ、険しい表情でベンチに戻る村上投手。日本シリーズの緊張感が、エースにもプレッシャーを与えていたようです。
💪 2回の立て直し
しかし2回、村上投手は見事に立て直しました。
三者凡退。そのハイライトが、先ほど紹介した59キロの超遅球だったのです。
牧原選手に対して59キロのカーブでストライクを取り、次の144キロのカットボールで三塁ゴロに仕留めました。
初回の失点から学び、緩急を効果的に使って打者を抑える。これぞプロのエースの投球術です。
🎯 試合の展開
(※この記事執筆時点では試合が進行中のため、最終的な結果は確定していません)
日本シリーズ第1戦は、みずほPayPayドーム福岡で行われています。
ソフトバンクが初回に1点を先制。その後の展開は、両チームの投手戦になる可能性が高そうです。
村上投手が何回まで投げ、最終的にどんな成績を残したかは、試合終了後に明らかになります。
ただ一つ確かなのは、59キロという超遅球が、日本シリーズの歴史に残る一球になったということです。
🏆 日本シリーズの行方
2025年の日本シリーズは、阪神タイガースと福岡ソフトバンクホークスの対決。
両チームとも、セ・リーグ、パ・リーグのレギュラーシーズンを制した強豪です。
阪神は藤川球児監督の1年目。圧倒的な強さでリーグ優勝を果たし、クライマックスシリーズも危なげなく勝ち上がりました。
一方のソフトバンクは、クライマックスシリーズで日本ハムに3連敗を喫した後、最終戦で勝利。ギリギリで日本シリーズに進出しました。
この日本シリーズ第1戦の結果が、シリーズ全体の流れを決める可能性があります。
村上投手の59キロ超遅球は、ただの話題作りではなく、勝利のための技術だったのです。
📝 まとめ:技巧の極致、59キロの真価
村上頌樹投手が日本シリーズで投げた59キロの超遅球。それは単なる珍プレーではなく、科学的根拠に基づいた技術の結晶でした。
✅ この記事のポイント
- 2025年10月25日、日本シリーズ第1戦で村上頌樹投手が59キロの超遅球を披露
- 144キロの速球との差は85キロ。緩急理論上、必要な20%の差を大きく上回る効果的な配球
- 村上投手は2023年に新人王・MVP同時受賞(セ・リーグ史上初)、2025年に投手三冠を達成した27歳のエース
- 野球のルールに球速制限は存在せず、どんなに遅い球も合法
- 日本プロ野球では三浦大輔、星野伸之、加藤貴之など、遅球を武器にした名投手が活躍
59キロは自転車並みの速度。それでもプロの打者を抑えられるのは、投手の技術と緩急の理論があるからです。
野球は力だけのスポーツではありません。知恵と技術で相手を上回る。その奥深さを、村上投手の一球が教えてくれました。
日本シリーズはまだ始まったばかり。阪神とソフトバンク、どちらが日本一に輝くのか。最高峰の技術がぶつかり合う戦いから、目が離せません。
あなたは、村上投手の59キロ超遅球について、どう思いましたか?
❓ よくある質問(FAQ)
Q1: 村上頌樹投手が投げた59キロは本当に合法なの?
はい、完全に合法です。野球の公式ルールには球速に関する制限が一切なく、どんなに速くても遅くても反則にはなりません。村上投手の59キロは、正しい投球フォームでストライクゾーンに投げ込まれた、完全に合法的なボールでした。
Q2: なぜ59キロという遅い球でプロの打者を抑えられるの?
緩急の効果によるものです。144キロの速球と59キロの遅球の差は85キロもあり、人間が速度の違いを認識するのに必要な20%以上の差を大きく上回ります。この極端な球速差により、打者のタイミングが完全に狂い、適切にバットを振ることができなくなるのです。
Q3: 村上頌樹投手はどんな実績を持っているの?
村上投手は2023年に新人王とMVPを同時受賞(セ・リーグ史上初)、2025年には最多勝・最高勝率・最多奪三振の投手三冠を達成した27歳の阪神のエースです。2023年のWHIP 0.741はNPB歴代最高記録となっています。
Q4: プロ野球史上、他に遅球を武器にした投手はいるの?
はい、日本プロ野球には遅球の名手が何人もいます。「ハマの番長」三浦大輔投手(90キロ前後のスローカーブ)、「遅球王」星野伸之投手(平均球速120キロ台で通算200勝以上)、現役では加藤貴之投手などが有名です。ただし、50キロ台の超遅球を日本シリーズで投げた投手は極めて珍しいです。