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森永ラムネが「受験生」に賭けた理由──なぜ大人向け商品は全部失敗したのか

📅 公開日:2026年1月11日🔄 更新:2026年1月11日⏱️ 読了時間:約7分

東大生の79%が、受験時に食べていたお菓子がある。

森永ラムネだ。1973年に発売された「子供向けのお菓子」が、今や受験生やビジネスパーソンの「集中力の相棒」として愛されている。2025年の販売規模は2018年比で約5倍。受験トレンド白書では「一番食べたお菓子」として2年連続1位に輝いた。

なぜ、50年以上も前に生まれた「夏のお菓子」が、これほど大人に売れるようになったのか。

その答えは、「ぶどう糖90%」という機能ではない。森永製菓が経験した「2つの失敗」と、その後の「逆転の一手」にあった。

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売上5倍、東大生の8割が食べていた「夏のお菓子」

森永ラムネの勢いは、数字が物語っている。

📊 森永ラムネの急成長

2025年の販売規模は、2018年と比べて約5倍。ドラッグストアでの売上は2021年度比で210%を記録。東大新聞の調査によると、東大生の79%が受験時にラムネを食べていた。

クラスに5人いたファンが、いつの間にか25人に増えたようなものだ。100人中79人。ほぼ全員だ。

受験トレンド白書2024では、「受験期に一番食べていたお菓子」として2年連続で1位を獲得。河合塾とのコラボ企画も実施され、受験生の「必需品」としての地位を確立している。

でも、ちょっと待ってほしい。

森永ラムネは1973年発売。もともとは子供向けの「夏のお菓子」だった。ビンの形をしたパッケージ、シュワッと溶ける食感。夏休みに駄菓子屋で買った記憶がある人も多いだろう。

そんな「子供のお菓子」が、なぜ大人に売れるようになったのか。

実は、森永製菓は「大人に売る」ために、いくつかの挑戦をしていた。そして、その多くは失敗に終わっている。

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「らしさ」を捨てた新商品は、なぜ失敗したのか

2015年、森永製菓は「ラムネのチカラ」という商品を発売した。

ウコンを配合し、大人向けに開発された新商品。パッケージデザインも一新し、従来の森永ラムネのロゴは使わなかった。

⚠️ 「らしさ」を消した決断

「ラムネのチカラ」は、あえて「森永ラムネ」のイメージと切り離して発売された。従来のロゴを使わず、森永ラムネだと分からないパッケージにした。

結果は、1年で終了。

2017年には「スパークリングラムネ」を投入。炭酸飲料のような爽快感を意識した、これも大人向けの新商品だった。

結果は、同じく1年で終了。

なぜ、大人向けに作った商品は売れなかったのか。

ここに、ブランドの本質がある。

消費者が「森永ラムネ」に求めていたのは、新しい機能ではなかった。子供の頃に食べた「あの味」「あの形」だったのだ。

ラムネのチカラは、機能を足すために「らしさ」を捨てた。従来のロゴを使わず、森永ラムネだと分からないパッケージにした。その結果、消費者の記憶と結びつかなくなった。

「ぶどう糖90%」という成分は、競合も真似できる。実際、トップバリュはぶどう糖95%のラムネを販売しているし、春日井製菓も90%配合の商品を出している。

しかし、「子供の頃、親が買ってくれた記憶」は真似できない

では、失敗から何を学んだのか。

2018年3月、森永製菓は「大粒ラムネ」を発売する。今度は「らしさ」を徹底的に守った。パッケージは従来のラムネと同じイメージ。成分もぶどう糖90%のまま。変えたのは、粒の大きさだけだった。

🎯 「らしさ」を守った結果

結果は、年間計画をわずか1ヶ月で売り切り、半年間の休売を余儀なくされるほどの大ヒット。「らしさを捨てたら失敗し、らしさを守ったら成功した」──これが、森永製菓が学んだ教訓だった。

しかし、大粒ラムネのヒットだけでは、売上5倍は説明できない。森永製菓は次に、もう一つの大きな決断を下す。

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なぜ「受験生」に賭けたのか──人生で一度は経験する節目

2022年、森永製菓は思い切った決断をした。

メインターゲットを「受験生」に絞るという選択だ。

一見すると、市場を狭めているように見える。受験生は年齢が限られるし、受験が終われば「卒業」してしまう。ビジネスパーソン全体をターゲットにした方が、市場は大きいはずだ。

「受験は、人生で一度は経験するイベントだ」

高校受験、大学受験、資格試験。形は違えど、ほぼ全員が人生のどこかで「試験」を経験する。そして、その記憶は強烈に残る。

行動経済学でいう「アンカリング効果」がここで働く。受験という人生の節目で食べた記憶は、その後の行動に影響を与え続ける。社会人になって「集中したいな」と思ったとき、真っ先に思い浮かぶのは、受験時代に食べていたあのお菓子だ。

つまり、受験生をターゲットにすることは、その後の人生すべてで想起される「入り口」を押さえることを意味していた。

2023年1月、森永製菓は20年ぶりにテレビCMを制作。『よび覚ませ、集中力。』と題されたそのCMは、赤シートをモチーフにしたアニメーションで、受験生の日常を描いた。

キャラクターデザインは、『四月は君の嘘』で知られる漫画家・新川直司。楽曲は、SNS総フォロワー110万人の人気ボーカリスト「にんじん」が担当した。

📈 CM「よび覚ませ、集中力。」の効果

オンエアから1ヶ月でYouTube再生200万回突破。売上は前年比約20%増を記録した。

▲ 森永ラムネCM「よび覚ませ、集中力。」篇(2023年)

なぜ、このCMは刺さったのか。

赤シートは、受験生なら誰もが使ったことのある「暗記の相棒」だ。CMでは、主人公がラムネを食べると、誘惑や雑音が赤シートで消えていく演出が使われた。

「森永ラムネを食べると集中できる」という機能を、受験生の記憶と結びつけたのだ。これは単なる広告ではない。受験という「人生の通過儀礼」に、森永ラムネを組み込む戦略だった。

あなたは受験のとき、何を食べていただろうか。

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夏のお菓子が「1月」にも売れる──季節の壁を超えた瞬間

受験生への集中は、思わぬ変化をもたらした。

森永ラムネは、もともと夏に売上が集中する「季節商品」だった。暑い日にシュワッと溶ける爽快感。子供たちが夏休みに買う定番のお菓子。販売のピークは7〜8月だった。

ところが今、森永ラムネにはもう一つの販売ピークが生まれている

1月だ。

受験シーズンの到来とともに、森永ラムネの売上が跳ね上がる。2025年1月、大粒ラムネは前年同月比115%を記録。「夏のお菓子」が「冬のお菓子」にもなったのだ。

🔄 季節の壁を超えた構造変化

森永ラムネは、「夏」と「1月」の二峰性を持つ通年商品へと変貌した。季節商品の最大の弱点である「売上の集中」を克服し、経営の安定化を実現。

2025年1月には、「ラムネドットアート」というOOH広告も展開された。39,061粒のラムネを使い、10時間かけて巨大なアート作品を制作。東京、大阪、愛知の駅に掲出された。

数字を実感してみよう。39,061粒。ラムネを1粒1秒で並べても、10時間以上かかる計算だ。

この広告は、受験生への応援メッセージであると同時に、「森永ラムネ=受験」というイメージを強化するものだった。

しかし、ここで一つの疑問が浮かぶ。

競合も同じことができるのではないか。トップバリュも春日井製菓も、ぶどう糖90%以上のラムネを作っている。受験生向けのマーケティングも、真似しようと思えばできる。

では、なぜ森永ラムネだけが売れ続けるのか。

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まとめ

ぶどう糖90%という成分は、明日から真似できる。

受験生向けのCMも、パッケージも、キャンペーンも、競合が本気を出せば似たようなものは作れる。

「50年かけて積み上げた記憶」は、絶対に真似できない。

小学校の遠足でリュックに入れたこと。学校の帰り道に友達と分け合ったこと。受験の日、緊張を和らげてくれたこと。この記憶の積み重ねが、森永ラムネの本当の強みだった。

森永製菓が学んだ教訓はシンプルだ。「らしさ」を捨てた新商品は失敗し、「らしさ」を守った商品は成功した。そして、ターゲットを「狭めた」ことで、むしろ市場が「広がった」。

50年の歴史を持つブランドが、なぜ今も成長しているのか。その答えは、機能ではなく記憶にあった。

あなたの会社には、何年分の「記憶」があるだろうか。

よくある質問

Q. 森永ラムネの売上はどのくらい伸びた?

2025年の販売規模は2018年比で約5倍に成長しています。また、ドラッグストアでの売上は2021年度比で210%を記録しました。

Q. なぜ大人向けの新商品は失敗したの?

「ラムネのチカラ」や「スパークリングラムネ」は、従来の森永ラムネのロゴやイメージを使わず、「らしさ」を捨てて発売されました。その結果、消費者の記憶と結びつかず、どちらも1年で終了しました。

Q. 東大生の何%が受験時に森永ラムネを食べていた?

東大新聞の調査によると、東大生の79%が受験時にラムネを食べていたと回答しています。

Q. なぜ「受験生」という狭いターゲットに絞ったの?

受験は「人生で一度は経験するイベント」であり、その記憶は強烈に残ります。受験時に食べた記憶が「アンカリング効果」として働き、社会人になっても「集中したいときはラムネ」という行動を誘発する長期戦略です。

Q. 夏のお菓子なのに、なぜ1月にも売れるの?

受験生をターゲットにしたことで、受験シーズンの1月にも販売ピークが生まれました。現在は「夏」と「1月」の二峰性を持つ通年商品へと変貌しています。

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リアルタイムニュース.com 編集部

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