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李琴峰とは誰?芥川賞から炎上・訴訟まで|美しいニッポン発言の真相

✨ 2021年7月、日本文学界に歴史的な瞬間が訪れました。

台湾出身の李琴峰(り・ことみ)さんが、第165回芥川賞を受賞したのです。

15歳から独学で日本語を学び始め、来日からわずか8年での快挙でした。

しかし、受賞を祝う声の一方で、記者会見でのある発言が大きな波紋を呼びます。

さらに過去のSNS投稿が発掘され、激しい議論に発展。

ネット上の誹謗中傷は訴訟にまで発展しました。

 

一体何が起きたのか?

事実を時系列で整理します。

 

 

芥川賞のトロフィーと『彼岸花が咲く島』の本を持つアジア系女性作家のイメージ

芥川賞のトロフィーと『彼岸花が咲く島』の本を持つアジア系女性作家のイメージ



 

🏆 李琴峰とは - 台湾出身初の芥川賞作家

李琴峰さんは1989年、台湾で生まれました

15歳のとき、「ある日突然、そうだ日本語を習ってみよう」と思い立ち、独学で日本語の学習を開始。

 

💡 実は…

特別なきっかけがあったわけではなく、本当に「なんとなく」始めたそうです。

アニメソングを歌いながら平仮名を覚え、中学生の頃から趣味が「日本語と文学」という学生でした。

 

台湾の国立台湾大学を卒業後、2013年に来日。

早稲田大学大学院で日本語教育を学び、2017年に日本語で書いた小説『独り舞』で群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビューを果たします。

 

 

 

そして2021年7月、『彼岸花が咲く島』で第165回芥川賞を受賞

台湾出身者として初めて、そして第二言語である日本語での芥川賞受賞は史上2人目という快挙でした。

 

⏱️ 来日から受賞までわずか8年

中学1年生が大学を卒業するまでの期間で、日本文学の頂点に立ったのです。

 

しかし、この栄光の瞬間から、予想外の論争が始まることになります。

 

📖 受賞作『彼岸花が咲く島』はどんな作品?

芥川賞を受賞した『彼岸花が咲く島』は、架空の島を舞台にした物語です。

記憶を失った少女・宇実(うみ)が、彼岸花の咲く砂浜に流れ着くところから物語は始まります。

 

この島には、大きな特徴がありました。

「ニホン語」と「女語」という2つの言語が使われているのです。

 

 

 

島では「ノロ」と呼ばれる女性たちが統治者として社会を治めており、男性はノロになることができません。

宇実は島に留まる条件として「ノロになること」を求められ、「女語」を学び始めます。

 

🌸 物語が進むにつれ、この島の隠された歴史が明らかになっていきます。

かつて「日本」という国があり、疫病が流行し、男たちは殺戮を繰り返した。

島に逃れた人々も争いを続けたが、やがて男たちは自分たちの愚かさに気づき、歴史を女性に託した——。

 

李さんは日本語と中国語を融合させた「女語」を創造し、言語そのものの持つ力を問いかけました。

ジェンダー、言語、国家、歴史。

複数のテーマが絡み合う、独創的な作品でした。

 

この作品で芥川賞を受賞した李さんですが、受賞記者会見である質問が飛びました。

 

🎤 記者会見での「美しいニッポン」発言

2021年7月14日、芥川賞の受賞記者会見が開かれました。

ニコニコ動画のユーザーから、こんな質問が寄せられます。

 

「最初に好きになった日本語と、忘れてしまいたい日本語を教えてください」

 

李さんは「好きな日本語」として「一期一会」「せせらぎ」「木漏れ日」などを挙げました。

問題となったのは、次の質問への回答でした。

 

 

 

「忘れてしまいたい日本語は?」

李さんは少し考えた後、クスッと笑いながら答えました。

「美しいニッポン」

 

会場がざわめきます。

 

💡 実は、この「美しいニッポン」という言葉は…

李さんの受賞作『彼岸花が咲く島』の中に登場する言葉でした

作品の内容を踏まえた回答で、「政治への警鐘」という意味を込めていたと、後に李さん本人が説明しています。

 

李さんによれば、答えを思いついた瞬間の「思い出し笑い」だったそうです。

しかし、この何気ない笑顔と発言が、ネット上で大きな波紋を呼ぶことになります。

 

🌊 なぜ大きな論争になったのか

記者会見の動画がSNSで拡散されると、李さんの過去のTwitter投稿が次々と発掘されました。

2020年、李さんは当時の政治状況について複数の投稿をしていました。

 

 

 

「美しいニッポン」発言と過去の投稿が結びつけられ、「反日だ」「日本を侮辱している」という批判が殺到します。

 

⚠️ ネット上に溢れた言葉

  • 「外国人は日本の悪口を言うな」
  • 「反日は出ていけ」

こうした攻撃的な言葉がネット上に溢れました。

 

日本だけでなく、台湾でも報道される事態に発展。

台湾のネットユーザーからも賛否両論が巻き起こりました。

 

李さん本人は、記者会見での発言について「作品の内容を踏まえた回答で、政治への警鐘を込めたもの」と説明。

しかし、批判者は李さんの「クスッとした笑い」を「日本を鼻で笑った」と解釈していました。

 

李さん自身の言葉によれば、これは「思い出し笑い」が「反日笑い」と曲解された事例だったのです。

 

 

 

ネット上の批判は激しさを増し、李さんは心身の不調に苦しむようになります。

不眠、めまい、抑うつ症状。

医師から適応障害と診断されました。

 

「上階の生活音や床の軋みが伝わってくるたびに、誰かが自分を殺しに来たのではないかとおののいた」

 

李さんは後にこう振り返っています。

それほどまでに、世界の敵意を感じていたのです。

 

激しい批判の嵐の中、李さんはどう対応したのでしょうか?

 

⚖️ 本人の説明と訴訟での勝訴

2021年8月27日、芥川賞の授賞式が開かれました。

李さんは「生き延びるための奇跡」と題したスピーチで、自らの思いを語ります。

 

 

 

💬 授賞式でのスピーチより

「一部では『李琴峰は外省人だから、本物の台湾人じゃない、だから反日だ』といった、二重も三重も間違っているデマも流されていました」

「人間というのはいかに、他者をカテゴライズすることによって安心したがる生き物なのかということを、まざまざ見せつけられる形となりました」

「そのような暴力的で、押し付けがましい解釈は、まさしくこれまで、私が文学を通して、一貫して抵抗しようとしてきたものなのです」

 

李さんは静かに、しかし力強く反論しました。

しかし、ネット上の誹謗中傷は続きます。

李さんは、複数の誹謗中傷者に対して法的措置を取る決断をしました。

 

📋 訴訟の経過

  • 2023年:台湾の40代男性が有罪判決を受け、民事裁判でも賠償命令
  • 2024年7月:日本の元SF作家に対しても賠償命令

 

 

 

賠償金は16.5万円

短編小説1本分の原稿料程度の額です。

 

💸 衝撃の事実

しかし、この勝訴を勝ち取るために李さんが払った裁判費用や弁護士費用、時間的コストは、優に100万円を超えていました

勝訴しても大赤字だったのです。

 

李さんは自身のnote記事で、こう書いています。

 

「結局誰も得しないのです。圧倒的な不毛にして、絶対的な空虚。このように、誰も得しない一番愚かな行為こそが、誹謗中傷・名誉毀損なのです」

 

訴訟を通じて、李さんは誹謗中傷問題の深刻さを社会に訴えかけました。

 

✍️ 李琴峰が伝えたかったこと

現在も李さんは作家として活動を続けています

2024年には新作『言霊の幸う国で』を発表。

翻訳活動も行い、台湾の作家の作品を日本に紹介しています。

 

 

 

📚 李さんの作品に一貫するテーマ

「カテゴライズされることの苦しみへの抵抗」

 

「あなたは○○だから、○○であるべきだ」

「あの人は○○だ、道理で○○なわけだ」

こうした単純な決めつけに対して、李さんは文学を通じて問いかけ続けています。

 

今回の論争と訴訟を通じて明らかになったこと。

それは、言葉の持つ力の両面性でした。

 

💬 李さんの言葉

「文学によって狭い世界から解放された。自分の小説を読んで、やっと自分の声がすくい上げられたと思ってくれたら、本当にうれしい」

そして同時に、ネット上の言葉の暴力についても警鐘を鳴らし続けています。

 

表現の自由は大切です。

しかし、その自由には責任が伴います。

SNSで何気なく投稿した言葉が、誰かを深く傷つけることがある。

 

 

 

誹謗中傷で訴訟を起こしても、被害者は精神的にも経済的にも大きな負担を強いられる。

李さんの物語は、私たち一人ひとりに問いかけています。

 

あなたは、SNSでどんな言葉を使っていますか?

その言葉は、誰かを傷つけていませんか?

 


 

📌 この記事のポイント

  • 李琴峰さんは台湾出身で、15歳から独学で日本語を学び、2021年に芥川賞を受賞(台湾出身初)
  • 受賞記者会見で「忘れたい日本語」として「美しいニッポン」と答え、論争に発展
  • 過去のSNS投稿が発掘され、激しい誹謗中傷を受けて適応障害と診断された
  • 複数の誹謗中傷者を提訴し勝訴したが、賠償金16.5万円に対し弁護士費用は100万円超で大赤字
  • 李さんは「カテゴライズされる苦しみ」をテーマに作品を書き続け、誹謗中傷問題を社会に問いかけている

 

❓ よくある質問

Q1: 李琴峰とは誰ですか?

李琴峰さんは1989年台湾生まれの作家で、15歳から独学で日本語を学び、2021年に『彼岸花が咲く島』で第165回芥川賞を受賞しました。台湾出身者として初めて、第二言語での受賞は史上2人目の快挙でした。

Q2: 「美しいニッポン」発言とは何ですか?

2021年7月の芥川賞受賞記者会見で、「忘れてしまいたい日本語」を問われた李さんが「美しいニッポン」と回答したことです。この言葉は受賞作品に登場する言葉で、政治への警鐘を込めた回答でしたが、批判を受けることになりました。

Q3: なぜ論争になったのですか?

記者会見での発言に加え、過去のSNS投稿が発掘され、「反日だ」という批判が殺到しました。李さん本人の意図と批判者の解釈に大きなズレがあり、激しい誹謗中傷に発展しました。

Q4: 訴訟の結果はどうなりましたか?

李さんは複数の誹謗中傷者を提訴し、2023年に台湾の男性、2024年7月に日本の元作家に対して勝訴しました。しかし賠償金16.5万円に対し、弁護士費用は100万円を超える大赤字でした。

Q5: 李琴峰さんは現在何をしていますか?

現在も作家として活動を続けており、2024年には新作『言霊の幸う国で』を発表。翻訳活動も行い、「カテゴライズされる苦しみへの抵抗」というテーマで作品を書き続けています。

 


 

📚 参考文献

 

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