2025年10月16日、北海道は倶知安町の農地約2.7ヘクタール(サッカーコート約4個分)を住宅地に変えることを許可しました。この判断に、地元住民は大きな衝撃を受けています。
なぜなら、町の農業委員会が全会一致で反対し、4315人もの署名が集まっていたにもかかわらず、その声が届かなかったからです。
最大1200人が住むこの外国人労働者向け住宅街は、人口約1万4000人の倶知安町にとって、人口の約8%に相当する規模。10人に1人が一気に増える計算です。いったい何が起きているのでしょうか。

📋 この記事でわかること
📍 倶知安町の農地転用、住民反対を押し切り許可へ その全容
まず、何が起きたのか整理しましょう。
2025年10月16日、北海道は倶知安町の約2.7ヘクタールの農地を、外国人労働者向けの住宅地に変えることを正式に許可しました。
この土地は、JR倶知安駅から南東約700メートルの場所にある市街地の農地。
周りは住宅に囲まれ、近くには小学校もあります。
HTB北海道ニュースの報道によると、この開発を担うのは「ニセードサービシーズ」という、町内に本社を置く外資系の不動産会社です。
計画では、2〜3階建ての共同住宅30棟を建設。
想定される居住者数は最大1200人で、これは倶知安町の人口の約8%に相当します。
事業者側は「冬のリゾートエリアで働く人の住むところが圧倒的に足りない。2000〜3000人規模の方たちを住まわせるための従業員寮や住宅が不足していて、賃貸価格もすごく高騰している状況」と説明しています。
⚠️ しかし、この計画に地元住民は強く反対してきました
2025年7月31日、町の農業委員会は全会一致で農地転用に反対する意見書を北海道に送ることを議決。
これは極めて異例のことでした。
住民らは262人分の署名を町と農業委員会に提出。
その後、オンラインでも署名を集め、最終的に4315人分の反対署名を北海道に提出しました。
それでも、北海道は許可を出しました。
💭 なぜ、これほど多くの反対の声が届かなかったのでしょうか。
⚖️ なぜ住民の反対を押し切って許可されたのか?
ここが多くの人が疑問に思うポイントです。
実は、この土地は法律上「第3種農地」というカテゴリーに分類されていました。
💡 第3種農地とは?
「市街地化が進んだ区域の農地」のこと。簡単に言うと、もう十分に街になっているエリアの農地です。
農地転用の専門解説によると、第3種農地は以下のような条件を満たす農地です:
- 水道管、下水道管、ガス管のうち2種類以上が埋設された道路の近く
- 500メートル以内に教育施設や医療施設などの公共施設が2つ以上ある
- 駅や市役所などから300メートル以内
そして、第3種農地の最大の特徴は「原則として転用が許可される」という点です。
農地は本来、食料生産のために守られるべき土地です。
しかし、既に市街地化が進んだエリアでは、農業生産への影響が少ないと判断され、転用のハードルが低く設定されているのです。
今回の倶知安町の土地は、この第3種農地の条件をすべて満たしていました。
さらに、8月25日に開かれた北海道農業会議では「農地転用に問題はなく許可相当」と判断されました。
この判断を受けて、当初は反対の意見書を送っていた町の農業委員会も、9月には「転用はやむを得ない」とする意見書に切り替えて北海道に送っていたのです。
🔍 北海道の判断基準
✓ 周辺農地への影響がない
✓ 転用の条件を満たしている
✓ 第3種農地である
法律上、これらの条件を満たしていれば、許可を出さざるを得ない。
それが今回の結論でした。
しかし、「法律上は問題ない」という判断と、「地域住民の不安」は別の問題です。
💭 では、1200人という規模は、倶知安町にどんな影響を与えるのでしょうか。
📊 町の人口1割に相当する1200人 その影響は?
1200人という数字の重みを実感してみましょう。
倶知安町の公式サイトによると、2025年9月末時点の町の人口は14,411人。
1200人は、この人口の
約8%
町民10人に1人が一気に増える計算です
しかも、実は倶知安町では既に外国人人口が急増しています。
産経新聞の報道によると、2025年1月時点で倶知安町の外国人住民は3627人。
前年より833人も増加し、全国の町村で増加数トップとなりました。
これは町の人口の約20%以上。
つまり、既に5人に1人が外国人という状況なのです。
そこにさらに最大1200人が加わるとどうなるか。
学校、医療機関、交通インフラなど、様々な面での影響が懸念されています。
近隣住民からは「近くに小学校もありますし、小さい子も多いので心配」「大規模な建物ができて、たくさんいらっしゃるので、トラブルとかがないか不安」という声が上がっています。
また、今回の住宅街は季節労働者向けのため、冬季に人口が一気に増え、夏には減るという変動も大きな課題です。
「せいぜい半年だからね。冬の間だけ、雪が解けたら帰っちゃう」という住民の声からは、地域コミュニティが形成されにくいことへの懸念も読み取れます。
💭 でも、なぜそもそもこれほど多くの外国人労働者が必要なのでしょうか。
🎿 ニセコの外国人労働者問題 住宅不足の深刻な実態
倶知安町を含むニセコエリアは、世界的なスキーリゾートとして知られています。
訪日ラボの調査によると、ニセコ観光圏(倶知安町、ニセコ町など)には年間27万人以上の外国人観光客が訪れています。
冬はスキーリゾートの働き手として、夏は宿泊施設の建設作業員として、1年を通じて多くの外国人労働者が必要とされているのです。
事業者の説明では「2000〜3000人規模の方たちを住まわせるための従業員寮や住宅が不足していて、賃貸価格もすごく高騰している状況」とのこと。
実際、ニセコエリアでは家賃が数十万円というマンションもあり、それでもすぐ満室になる状況だといいます。
📢 事業者側の主張
「一か所に集めてきちんと決まったルールの中で住んでもらった方が、ごみの処理なども管理会社が行うことで、いままで町中で起こっていた問題も少しは解消できるはず」
分散して住むよりも、集約して管理する方が、トラブルを防げるという考え方です。
確かに、リゾート産業を維持するためには外国人労働者は不可欠。住宅不足も深刻。これは事実です。
💭 しかし、住民の不安も決して根拠のないものではありません。
🚨 地元住民が懸念する「治安悪化」の根拠とは
住民が「治安悪化」を懸念する背景には、具体的なデータと過去の経験があります。
UHB北海道文化放送の報道によると、ニセコ地域で2024年冬季に起きた交通事故は前年同月比133件増の1024件。
そして驚くべきことに、そのうち
45%
を外国人が占めていました
ほぼ半分です。
大半は冬道に不慣れな人の操作ミスが原因とされていますが、地元住民にとっては大きな不安材料となっています。
また、住民からは以下のような声も上がっています:
- 「町中でゴミの問題とか、夜中に騒ぐとか、そういうことで住民といざこざもある」
- 「夜なんて安心して寝られない。ちょっと心配ですね」
さらに、外国人スキーヤーが仲間と連絡を取るために無線を使用し、「パトカーや消防、航空機の通信が妨害され、人命に危険を及ぼす可能性がある」と北海道総合通信局が警告を出す事態も発生しています。
悪意はないとみられますが、明らかな違法行為です。
こうした積み重ねが、住民の不安を大きくしているのです。
💭 では、この計画は今後どうなるのでしょうか。
🔮 今後の展開 着工はいつ?住民の動きは?
Yahoo!ニュースの報道によると、北海道が10月16日付けで農地転用を正式に許可したことで、開発事業者は速やかに造成に向けた作業を始めるとしています。
事業者は「正式に許可を受け次第、近隣の町内会との地域協定を進めながら、造成作業を開始する」方針を示しています。
では、住民側に対抗手段はあるのでしょうか。
法的には、行政不服審査請求などの手段が考えられますが、第3種農地で条件を満たしている以上、許可を覆すのは極めて困難です。
今後の焦点は、実際に住宅街が完成した後の「地域共生」にあります。
事業者側は管理体制を整えるとしていますが、1200人規模の季節労働者コミュニティと地域住民がどのように共存していくのか。
ゴミ出しルール、騒音対策、交通安全対策など、具体的な対応策が求められます。
🌏 そして、この問題は倶知安町だけの問題ではありません
人口減少が進む日本の地方都市では、外国人労働者の受け入れは避けられない課題です。倶知安町の事例は、全国の地方都市が今後直面する問題の先行事例と言えるでしょう。
✅ まとめ:倶知安町農地転用問題の要点
この記事の要点を整理します:
- 北海道が10月16日付けで農地転用を許可:住民4315人の反対署名があったにもかかわらず、法的根拠に基づき許可された
- 第3種農地は「原則許可」:市街地化が進んだ区域の農地は、法律上転用が認められやすい土地である
- 1200人は町人口の約8%:既に外国人比率20%超の町に、さらに大規模な外国人住宅街ができる
- 住宅不足は深刻な現実:リゾート産業を支える2000〜3000人の労働者の住居が不足している
- 治安懸念には根拠がある:交通事故の45%が外国人関連など、具体的なデータが存在する
- 全国の地方都市が直面する課題:外国人労働者との共生は、今後多くの地域で直面する問題となる
倶知安町の農地転用問題は、「法律上は問題ない」開発計画と「地域住民の不安」という、両者の正当性がぶつかり合う典型的な事例です。
今後、この1200人規模の住宅街が実現すれば、倶知安町は外国人労働者との共生という課題に、より本格的に向き合うことになります。
それは同時に、人口減少と外国人労働者受け入れという、日本全体が抱える問題の縮図でもあるのです。
あなたは、この問題についてどう思いますか?地域住民の不安と、リゾート産業を支える労働者の必要性。どちらも無視できない現実です。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 倶知安町の農地転用はなぜ住民の反対を押し切って許可されたのですか?
この土地は「第3種農地」という市街地化が進んだ区域の農地で、法律上「原則として転用が許可される」土地でした。水道・下水道・ガス管が整備され、周辺農地への影響がないなどの条件を満たしていたため、北海道は許可を出しました。
Q2. 1200人という規模は倶知安町にとってどのくらいの影響がありますか?
倶知安町の人口は約14,411人(2025年9月末時点)で、1200人は人口の約8%に相当します。町民10人に1人が一気に増える計算です。既に外国人人口が20%以上を占める中、さらに大規模な増加となります。
Q3. 地元住民はなぜ治安悪化を懸念しているのですか?
ニセコ地域で2024年冬季に起きた交通事故1024件のうち45%を外国人が占めていたことや、ゴミ出しルール違反、夜間騒音などの生活トラブルが実際に発生していることが背景にあります。また季節労働者で半年で帰国するため、地域コミュニティが形成されにくい点も不安要因となっています。
Q4. なぜニセコエリアでは外国人労働者がこれほど必要なのですか?
ニセコは世界的なスキーリゾートで年間27万人以上の外国人観光客が訪れます。冬季のリゾート運営や宿泊施設建設のために2000〜3000人規模の労働者が必要ですが、住宅不足が深刻で家賃も高騰しているため、集約管理できる住宅街が必要とされています。
Q5. 今後の開発スケジュールはどうなっていますか?
北海道が10月16日付けで農地転用を正式に許可したことで、事業者は速やかに造成作業を開始する予定です。近隣町内会との地域協定を進めながら、2〜3階建ての共同住宅30棟を建設する計画となっています。
📚 参考文献