そんな衝撃的なキャッチコピーで紹介された昆虫の動画が、今ネットで話題になっています。
YouTubeチャンネル「昆虫ハウス101号室」が公開したこの動画は、記事執筆時点で1万回再生を突破。
「こんなカマキリいるんだ……!」「まぁゴキブリはカマキリの仲間だから間違いではないな」といったコメントが続々と寄せられています。
でも、ちょっと待ってください。

実はこの姿、進化的には"正しい"姿なんです。
この記事では、話題の「キノカワカマキリ」の正体から、カマキリとゴキブリの意外な関係まで、わかりやすく解説していきます。
キノカワカマキリとは?「頭はカマキリ、体はゴキブリ」の正体
キノカワカマキリは、インドネシアのジャワ島に生息する、樹皮に擬態するカマキリです。
体長は約4.5〜5cmで、最大の特徴はその扁平な体。
普通のカマキリは体が縦に長いですよね。
でもキノカワカマキリは、まるでゴキブリのように体が横に平べったくなっています。
動画を投稿したのは、YouTubeチャンネル「昆虫ハウス101号室」の蜂丸さん。
虫好き芸人3人が昆虫を飼育するために借りた「昆虫ハウス」から配信するチャンネルで、登録者数は約5万人を誇ります。
蜂丸さんは動画内で「カマキリとゴキブリって同じ仲間みたいに言われてますけど、本当その中間というか」と紹介していました。
実際、キノカワカマキリの動きを見ると納得です。
頭は三角形でカマキリそのものなのに、前傾姿勢でチョロチョロと地面を這う姿はまさにゴキブリ。
体色は「チョコミントカラー」と表現される緑と茶色のまだら模様で、これは樹皮や苔に擬態するため。
木の幹にじっとしていると、どこにいるかわからなくなるほどです。
この独特な体型には理由があるということ。
樹皮に張り付いて隠れるためには、体が平べったい方が都合がいいんです。
そして、この飼育には意外な落とし穴がありました。
なぜ脱皮不全で死んだ?キノカワカマキリ飼育の難しさ
キノカワカマキリの飼育で最も重要なのは「湿度管理」です。
動画内で蜂丸さんは「悲しいお知らせではあるんですけど」と、もう1匹のキノカワカマキリが脱皮不全で死んでしまったことを報告しています。
カマキリが古い皮を脱ぐときに失敗してしまうこと。
カマキリは成長するために何度も脱皮を繰り返しますが、この過程で失敗すると命に関わります。
なぜキノカワカマキリは脱皮不全になりやすいのでしょうか?
答えは、生息地の環境にあります。
インドネシアの熱帯雨林は、年間を通じて高温多湿。
キノカワカマキリはそんな環境に適応しているため、日本の冬場の乾燥した空気は大敵なんです。
使うのは「ピュアソイルブラック」というアクアリウム用の底砂。
保湿力がとても高く、霧吹きで加水すればしっとりとした状態を長く保てます。
さらに樹皮を差し込んで足場を作れば、キノカワカマキリにとって居心地のいいお家の完成。
新しい環境にもすぐ慣れたようで、エサのショウジョウバエを一瞬でハントする様子も動画に収められています。
ちなみに、キノカワカマキリの販売価格はオークションサイトの相場を見ると数百円〜千円程度。
ただし、入荷数が多くないため、常に手に入るわけではありません。
飼育を考えている方は、まず湿度管理の知識と設備を整えてからにした方がよさそうです。
ところで、そもそもなぜこのカマキリはゴキブリに似ているのでしょうか?
実は、2014年に発表されたある研究が、その答えのヒントを与えてくれます。
2014年に19種が新発見されていた!キノカワカマキリの知られざる多様性
キノカワカマキリの仲間(Liturgusa属)は、2014年に一度に19種もの新種が発見されています。
この発見により、それまで10種しか知られていなかったキノカワカマキリの多様性は、一挙に3倍近くに跳ね上がりました。
研究を行ったのは、アメリカ・クリーブランド自然史博物館のギャビン・スベンソン氏。
中米から南米にかけての熱帯雨林で調査を行い、博物館に保管されていた標本も含めて徹底的に分析しました。
ナショナルジオグラフィックの記事によると、スベンソン氏は「キノカワカマキリは頭の細いゴキブリにそっくりだ」とコメントしています。
研究者の目から見ても、やはりゴキブリに似ているんですね。
・「Liturgusa algorei」→ 環境活動家アル・ゴア元米副大統領に敬意を表して命名
・「Liturgusa krattorum」→ アメリカの子ども向け動物番組の司会者にちなんで命名
・スベンソン氏は自分の娘たちの名前「テッサ」と「ゾーイ」も2種に使用
この研究では、キノカワカマキリの興味深い行動も明らかになりました。
危険を察知すると、木の反対側にサッと回り込んで姿を隠す。
それでも逃げられないと判断すると、木から飛び降りて「死んだふり」をする。
― ギャビン・スベンソン氏
では、なぜキノカワカマキリはゴキブリに似た姿をしているのでしょうか?
その答えは、2億6000万年前にさかのぼります。
カマキリとゴキブリは2億6000万年前に分岐した「親戚」だった
「え、カマキリとゴキブリが親戚?」と思うかもしれません。
でも、昆虫の分類学では、カマキリ・ゴキブリ・シロアリは「網翅類(もうしるい)」という同じグループに属しているんです。
2億6000万年前というと、恐竜が地球を支配するよりも前の時代。
その頃、ゴキブリに似た昆虫の一部が「前足を獲物を捕まえる鎌に進化させる」という道を選びました。
それがカマキリの祖先です。
普通のカマキリは進化の過程で体が縦長になり、草や枝に擬態するようになりました。
でもキノカワカマキリは、樹皮に擬態する生態を選んだため、祖先に近い「扁平な体」と「素早い動き」を残しています。
つまり、キノカワカマキリがゴキブリに似ているのは偶然ではありません。
2億6000万年前の共通祖先の面影を、今も色濃く残しているからなんです。
言い換えれば、キノカワカマキリは「進化の生き証人」。
カマキリとゴキブリをつなぐ、生きた化石のような存在と言えるかもしれません。
動画には、キノカワカマキリ以外にも珍しいカマキリが登場しています。
動画に登場した「エダカマキリ」と「ダブルシールドマンティス」とは
キノカワカマキリと同じ動画で紹介された2種のカマキリも、それぞれ個性的な特徴を持っています。
その名の通り木の枝そっくりの姿をしたカマキリ。
近縁種の「オオカレエダカマキリ」は体長が最大20cmにも達し、カマキリ目の中では世界最大級です。
体だけでなく、足には葉っぱのような突起がついていて、腹の先端は折れた枝のように見えます。
木にぶら下がって体を揺らし、風に吹かれている小枝に完璧に擬態する姿は、まさに自然の芸術品。
学名は「Pnigomantis medioconstricta」で、インドネシアのフローレス島に生息。
このカマキリの最大の特徴は、その凶暴性とパワー。
実は「カマキリ界最強」と呼ばれるほどの戦闘能力を持っています。
前足の鎌が太く頑丈に発達していて、上半身は盾のように硬い。
カマキリの中では珍しく「防御力」も兼ね備えた種類です。
オオスズメバチやキリギリスといった強敵にも臆することなく立ち向かい、小型のクワガタを装甲ごと噛み砕いてしまうことも。
動画では、この3種のカマキリそれぞれに適した飼育環境を整える様子が紹介されています。
擬態型のキノカワカマキリ、枝に化けるエダカマキリ、戦闘型のダブルシールドマンティス。
同じ「カマキリ」でも、これだけ多様な進化を遂げているんですね。
まとめ:キノカワカマキリが教えてくれること
「頭はカマキリ、体はゴキブリ」という奇妙な姿のキノカワカマキリ。
最初は「気持ち悪い」と思った方もいるかもしれません。
でも、この記事を読んでいただいた今なら、その姿の意味がわかるはずです。
✅ キノカワカマキリは樹皮に擬態するため、扁平な体を持つインドネシア産のカマキリ
✅ 飼育には高湿度の維持が必須で、日本の冬場は脱皮不全のリスクが高い
✅ 2014年の研究で19新種が発見され、多様性は一挙に3倍に
✅ カマキリとゴキブリは約2億6000万年前に共通祖先から分岐した「親戚」
✅ キノカワカマキリがゴキブリに似ているのは、祖先の特徴を残しているから
その扁平な体と素早い動きは、カマキリとゴキブリをつなぐ進化の証拠なんです。
もし興味を持った方は、「昆虫ハウス101号室」の動画をチェックしてみてください。
蜂丸さんの軽快なトークとともに、キノカワカマキリのチョコミントカラーの美しさと、ショウジョウバエを一瞬でハントする最強ハンターぶりを見ることができますよ。
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