2025年11月26日、週刊新潮の報道によって、衝撃的な事件が明らかになりました。
「命を削って描いた原画が盗まれた」―桂正和氏本人が怒りの告発に踏み切ったこの事件。実は、警察は当初この被害届すら受理しなかったといいます。
しかし、その後の調査で、犯人の目星がついてきました。
ヤフオクで立て続けに売買される原画、浮かび上がる引っ越し業者と古物商の影、そしてデジタル時代ならではの決定的証拠―。
一体、何が起きたのでしょうか。

この記事でわかること
桂正和『電影少女』原画2500枚が盗難|被害総額は最大7.5億円
事件の概要
2024年10月、漫画家・桂正和氏(62歳)がアトリエの引っ越しを行った際、『電影少女』全15巻分の原画が消えていたことが判明しました。
原画の枚数は約2500枚。1枚あたり30万円と計算すると、被害総額は7.5億円にもなります。
Yahoo!ニュースの報道によると、桂氏は「命を削って描いた原画を、手違いで処分してしまうことなんて絶対あり得ません」と強い憤りを表明しています。
『電影少女』とは
『電影少女』は1989年から1992年まで週刊少年ジャンプで連載されたSF恋愛漫画です。
モテない男子高校生が、レンタルビデオを再生したところ、テレビ画面から不思議な少女"ビデオガール"が登場するという物語で、累計1400万部を超える大ヒット作となりました。
現在もヤフオクで売買される盗品
驚くべきことに、現在もヤフオクでは『電影少女』の原画が次々と出品されています。
デイリー新潮の報道によると、1枚あたり約10万円から数十万円で取り引きされており、中には100万円を超えるものもあるとのこと。
扉絵から最終回のラストページまで、作品全体が盗まれているのです。
実は、警察は被害届を受理しなかった
しかし、その後、桂氏の元には数多くのタレ込み情報が寄せられました。
代理人を務めるサン綜合法律事務所の酒井奈緒弁護士によると、情報を精査した結果、犯行に及んだ可能性の高い業者が特定されつつあるといいます。
では、なぜ『電影少女』だけが狙われたのでしょうか?
なぜ『電影少女』だけ?徹底管理していた原画が消えた謎
徹底した原画管理
桂氏は引っ越しを始める前から、原画を1巻分ごとに封筒に入れてロッカーで厳重に保管していました。
「『ウイングマン』など他のメジャーな作品の原画は運良く別の場所に預けていたのですが、それ以外の貴重な物はロッカーにしまっていました」と桂氏は語っています。
引っ越し時の細心の注意
引っ越しの際、桂氏は約1カ月をかけて大量の私物を整理しましたが、原画の取り扱いには特に目を光らせていたといいます。
週刊新潮の報道によると、桂氏は以下のような対策を講じていました:
- 買取業者に売った不用品は一つひとつ自分の目で確認
- 産廃業者に「腕時計やカメラなどの私物、特に原画は決して捨てないでください」とくぎを刺す
- 引っ越し業者にロッカーを開けて「ここの原画は、倉庫内のしかるべき場所に運んでほしい」と細かく指示
実は、他の作品は無事だった
つまり、『電影少女』の原画だけが選別的に盗まれたのです。
これは、犯人が原画の価値を知っており、最も高額で売れるものを狙った可能性を示唆しています。
では、『電影少女』の原画には実際にどれほどの価値があるのでしょうか?
本当に7.5億円?漫画原画の驚きの価値とヤフオク取引の実態
漫画原稿の市場価格
オークファンのデータによると、漫画原稿全般の直近30日の平均落札価格は約9.5万円です。
しかし、これはあくまで平均値。人気作品や有名漫画家の原画となると、価格は跳ね上がります。
実は、1枚で10万円以上する
- 通常のページ:10万~数十万円
- 扉絵や重要シーン:数十万~100万円超
なぜそんなに高いのか
『電影少女』の原画が高額な理由は以下の通りです:
作品の人気
累計1400万部を超える大ヒット作品であり、今なおファンが多い
桂正和氏の画力
桂氏は「日本で最も美少女を描くのが上手い漫画家」として知られ、その緻密な作画技術は業界でも高く評価されています
希少性
原画は世界に1枚しかない一点物であり、印刷物とは比較にならない価値があります
連載時期の特別性
1989~92年の連載時期は、週刊少年ジャンプの黄金時代。その時代を象徴する作品の原画という歴史的価値もあります
被害総額7.5億円の根拠
原画約2500枚 × 1枚30万円 = 7.5億円
この計算は、決して大げさではありません。実際のヤフオク取引価格を見れば、むしろ控えめな見積もりとさえ言えるでしょう。
これほど高額な原画がヤフオクで売買されているなら、出品者を追跡すれば犯人に辿り着くはず。実際、弁護士の調査によって驚くべき事実が判明しました。
犯人の目星は「引っ越し業者」と「古物商」|浮かび上がった証拠
デジタル時代の犯罪追跡
桂氏の代理人を務めるサン綜合法律事務所の酒井奈緒弁護士は、週刊新潮の取材に対してこう述べています。
「私たちが情報を精査した結果、引っ越しに立ち会った業者の中に、犯行に及んだ可能性の高い業者が含まれていそうなことが分かりました」
決定的証拠:ヤフオクのアカウント
さらに決定的だったのが、ヤフオクのアカウント情報です。
「弁護士会を通じてサイト側に情報開示請求をかけたところ、盗まれた原画を出品していたアカウントの一つは、なんと件の古物商が作成したものだったのです」
実は、ヤフオクのアカウント情報から犯人の正体が浮かび上がったのです。
浮かび上がった犯行ルート
調査により、以下のような犯行ルートが浮かび上がってきました:
- 引っ越し業者が原画をドサクサに紛れて持ち去る
- 古物商に原画を売却(または共犯として協力)
- 古物商がヤフオクで原画を出品・販売
引っ越し業者と古物商が通じている共犯者である可能性が高いとされています。
数多く寄せられたタレコミ
警察が当初被害届を受理しなかった後、桂氏の元には数多くのタレコミが寄せられました。
これらの情報が、犯人特定の重要な手がかりとなったのです。
刑事告訴の準備
酒井弁護士は「書類上はあくまでも"被疑者不詳"になると思いますが、疑惑の業者と古物商に関する証拠をそろえ、窃盗罪などでの刑事告訴を予定しています」と述べています。
ここで、この事件の被害者である桂正和氏とはどんな漫画家なのか、改めて振り返ってみましょう。
桂正和とは?『ウイングマン』『I's』を生んだ美少女漫画の巨匠
プロフィール
Wikipediaの情報によると:
- 生年月日:1962年12月10日(現在62歳)
- 出身地:福井県
- デビュー:1981年「転校生はヘンソウセイ!?」
- 連載デビュー:1983年「ウイングマン」
代表作品
『ウイングマン』(1983~85年)
特撮ヒーローに変身する少年の活躍を描いた作品。アニメ化もされ、桂氏の名を世に知らしめた出世作です。
『電影少女』(1989~92年)
今回盗難被害に遭った作品。SF恋愛漫画の金字塔と称され、累計1400万部の大ヒットとなりました。
『I's(アイズ)』(1997~2000年)
SF要素を一切排した純粋な恋愛漫画。瀬戸一貴と葦月伊織の恋愛を描き、桂氏の作風の幅広さを示しました。
『ZETMAN』(2003~14年)
ダークヒーローを描いた作品。アニメ化もされました。
『TIGER & BUNNY』シリーズ
アニメのキャラクター原案を担当。2011年から続く人気シリーズです。
「美少女を描く天才」
福井新聞のインタビューによると、桂氏は特撮ヒーローから美少女漫画まで幅広いジャンルを手がけ、特に女性キャラクターの描写には定評があります。
尊敬を集める漫画家・鳥山明氏とは40年来の親友で、よく電話する仲だったといいます。
画業40年を超える巨匠
2022年には画業40周年記念展覧会が開催されるなど、日本の漫画界を代表する巨匠の一人です。
こうした巨匠の作品が盗まれた今回の事件。犯人は逮捕されるのか?盗まれた原画は戻ってくるのか?
刑事告訴へ|原画は戻る?古物商と盗品取引の法的責任
刑事告訴の見込み
桂氏の代理人弁護士によると、疑惑の引っ越し業者と古物商に関する証拠を揃え、窃盗罪などでの刑事告訴を予定しています。
書類上は「被疑者不詳」となる可能性が高いものの、具体的な業者名や証拠は揃いつつあるとのことです。
実は、盗品は1年以内なら返さないといけない
ここで重要なのが、古物商の法的責任です。
古物商の盗品返還義務
古物商が盗品を買い取った場合、たとえ善意(盗品と知らなかった)であっても、被害者から請求があれば以下の義務を負います:
- 盗難から1年以内:無償で返還しなければならない
- 盗難から1年超~2年以内:返還義務はあるが、購入代金を請求できる場合もある
- 盗難から2年超:返還義務なし
今回のケースの適用
今回の盗難は2024年10月。現時点(2025年11月)で約1年が経過していますが、まだ1年以内です。
つまり、古物商は盗品であることが証明されれば、無償で返還しなければならない可能性が高いのです。
過去の漫画原稿盗難・流出事件
実は、漫画業界では過去にも原稿の盗難や流出事件が起きています。
弁護士による解説サイトによると:
- 2003年:さくら出版倒産に伴う大量の原稿流出事件
- 2018年:『プラモ狂四郎』原作者による盗難疑惑(後にフィクションと判明)
これらの事件を受けて、2003年には漫画家・弘兼憲史氏を会長とする「漫画原稿を守る会」が設立され、原稿管理の重要性が訴えられました。
引っ越し業界の問題
また、引っ越し時の盗難は漫画原稿に限った話ではありません。
一般的な引っ越しでも、貴重品や現金の盗難被害は発生しています。引っ越し業界全体の課題として、作業員の管理体制が問われています。
今後の展開
桂氏側は以下の対応を予定しています:
- 刑事告訴:証拠を揃えて窃盗罪で告訴
- 民事請求:被害額の賠償請求
- 原画の回復:古物商への返還請求
週刊新潮は11月27日発売号で、古物商への直撃取材結果を詳報するとしています。
まとめ
桂正和氏『電影少女』原画盗難事件について、重要なポイントをまとめます。
- 被害内容:2024年10月の引っ越し時に『電影少女』原画約2500枚が盗難、被害総額は最大7.5億円
- 犯行の特徴:他の作品は無事なのに『電影少女』だけが狙われた計画的犯行
- 原画の価値:1枚10万~100万円以上で取引され、累計1400万部の人気作品の一点物
- 犯人の目星:引っ越し業者と古物商の共犯が疑われ、ヤフオクのアカウント情報から証拠が浮上
- 桂正和氏:週刊少年ジャンプ黄金時代を築いた「美少女描写の天才」として知られる巨匠
- 今後の展開:刑事告訴を予定、古物商には1年以内の無償返還義務がある
漫画家が命を削って描いた原画は、単なる「紙」ではありません。それは作品の歴史そのものであり、かけがえのない文化的資産です。
今回の事件が、原画保護の重要性を再認識するきっかけとなることを願います。
あなたは、この事件についてどう思いますか?芸術作品を守るために、私たちができることは何でしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q1. なぜ『電影少女』の原画だけが盗まれたのですか?
A. 『電影少女』は累計1400万部の大ヒット作品で、原画1枚あたり10万~100万円以上の価値があります。犯人は原画の価値を知っており、最も高額で売れる作品を選別的に狙ったと考えられています。他の代表作『ウイングマン』は別の場所に保管されていたため無事でした。
Q2. 盗まれた原画は戻ってきますか?
A. 古物営業法第20条により、古物商が盗品を買い取った場合、盗難から1年以内であれば無償で返還する義務があります。今回の盗難は2024年10月なので、まだ1年以内。盗品であることが証明されれば、返還される可能性は高いです。
Q3. どうやって犯人の目星がついたのですか?
A. 弁護士会を通じてヤフオクのサイト側に情報開示請求を行った結果、盗品を出品していたアカウントの一つが古物商によって作成されたものであることが判明しました。このデジタル証拠により、引っ越し業者と古物商の共犯疑惑が浮上しました。
Q4. 桂正和氏はどんな漫画家ですか?
A. 1962年生まれ、現在62歳。1983年『ウイングマン』で連載デビューし、『電影少女』『I's』『ZETMAN』などの代表作を持つ巨匠です。「日本で最も美少女を描くのが上手い漫画家」として知られ、週刊少年ジャンプ黄金時代を築いた一人です。