「農林水産大臣には意地でも屈しません」
この強気な発言の裏には、おこめ券にかかる"経費の無駄"への疑問がありました。

つまり、5億円の予算があっても、1億円近くが経費で消えてしまう計算です。
代わりに市長が選んだのは、経費がほぼゼロの「給食無償化」と「水道料金免除」でした。
国と地方自治体の対立、そして私たちの税金の使い方。
この記事では、市長の宣言の全容から、おこめ券の仕組み、市長の意外な経歴まで詳しく解説します。
この記事でわかること
【全容】交野市長「おこめ券配りません」宣言|何を言った?
事の発端は2025年11月28日。
鈴木憲和農林水産大臣が記者会見で「おこめ券を使うか使わないかは自治体の自由」と発言したことでした。
この発言を報じたニュース記事を引用する形で、山本市長は自身のX(旧Twitter)にこう投稿しました。
「交野市はお米券を配布しません」
理由も2点、明確に示しています。
- 経費率が10%以上と高い
- 今高い米をムリして買う必要はない
さらに翌29日、市長は再びXを更新。
メディアで報道されたことを受けて、より詳細な説明を加えました。
「繰り返しますが、交野市は、市民のためにお米券を配りません」
そして、こう締めくくりました。
2日連続で同じ宣言を繰り返したこと、そして「意地でも屈しません」という強い表現が、SNSで大きな反響を呼んでいます。
では、市長が問題視する「経費率」とは、具体的にどれくらいなのでしょうか。
経費率20%超の衝撃|市長が示した内訳とは
この数字を聞いて「え、そんなに?」と思った方も多いのではないでしょうか。
市長がXで示した経費の内訳は以下のとおりです。
| 項目 | 経費率 | 担当 |
|---|---|---|
| おこめ券自体の経費 | 12% | JA全農 or 全米販 |
| 郵送等の事務手数料 | 約8% | 郵便局等 |
| 合計 | 約20% | ― |
具体的な金額で考えてみましょう。
交野市が受け取る予定の重点支援地方交付金は約5億円です。
5億円 × 20% = 約1億円が経費で消える
実は、おこめ券には「500円で440円分しか買えない」という仕組みがあります。
差額の60円は印刷代や流通経費として発行元に支払われます。
60円 ÷ 500円 = 12%
これがおこめ券自体の経費率です。
さらに、券を市民に届けるための郵送費や事務作業の人件費が加わり、市長の言う「約20%」という数字になるわけです。
毎日新聞の報道によると、鈴木農相も「おこめ券は1枚500円の購入費に対し、実際の換金価値は440円」と認めています。
差額の60円分は券の印刷代や流通経費、マージン(利益)などになっているとのことです。
では、この経費を削減して、市長は何に使おうとしているのでしょうか。
5億円の使い道|給食無償化・水道料金免除の中身
具体的には以下の2つです。
1. 給食無償化:経費率0%
すでにある給食の仕組みを使うだけなので、新たな印刷費も郵送費もかかりません。
市長の言葉を借りれば「経費のかからない」施策です。
2. 上下水道基本料金免除:経費率約1%
水道料金の請求システムを通じて減額するため、ほとんど追加の経費が発生しません。
| 施策 | 経費率 |
|---|---|
| おこめ券配布 | 約20% |
| 給食無償化 | 0% |
| 水道料金免除 | 約1% |
同じ5億円を使うとして、おこめ券なら約4億円しか市民に届きません。
一方、給食無償化なら5億円がほぼ丸ごと市民の利益になります。
交野市はすでに中学校の給食無償化を実現していました。
市長就任後、北河内7市(枚方市、寝屋川市、門真市、守口市、大東市、四條畷市、交野市)の中で最も早く恒久的な給食無償化を達成したとのことです。
こうした「数字で効率を判断する」姿勢は、市長の経歴を知ると納得できます。
山本景市長とは?大学生で1億円企業を売却した異色経歴
1980年3月12日生まれの45歳。
交野市出身で、現在は交野市長として1期目を務めています。
学歴
- 大阪桐蔭高等学校 卒業
- 和歌山大学経済学部 卒業
- 大阪大学大学院経済学研究科 修了
ビジネス経歴
大学在学中の1999年、和歌山県でIT企業「有限会社トリプルエーコミュニケーションズ」を設立しました。
この会社は無料レンタル掲示板などのサービスを提供していましたが、2004年にライブドア(当時の堀江貴文氏が率いた会社)に1億円で営業譲渡されました。
当時、山本氏は20代前半。大学生や大学院生の頃に、すでに1億円規模の事業を作り上げていたことになります。
金融業界での経験
その後は金融の世界へ。
信金中央金庫に就職し、2007年には野村證券に転職。課長代理まで昇進しています。
政治家としてのキャリア
- 2011年:大阪府議会議員選挙で初当選(大阪維新の会公認)
- 2014年:大阪維新の会を離党
- 2015年:交野市議会議員選挙でトップ当選
- 2019年:交野市議選で人口10万人以下の市議選における全国最多得票記録を樹立(4,543票)
- 2022年9月:交野市長選挙で初当選
実は、市長になるまでの道のりは平坦ではありませんでした。
2014年には市長選への出馬を予定していましたが、LINEに関するスキャンダルで断念。2018年の市長選では落選しています。
しかし2022年、自民・公明・立憲・国民が推薦する現職市長を破って初当選。
得票率50.7%で、市民の過半数の支持を得ました。
起業経験、証券会社での勤務経験から「数字」に強く、効率を重視する姿勢は、今回のおこめ券拒否にも表れています。
そして、この「上からの方針に従わない」姿勢は、今回が初めてではありませんでした。
万博でも知事に反発|過去の「直言」エピソード
2025年に開催された大阪・関西万博でも、吉村洋文大阪府知事が進めた施策に異を唱えて話題になりました。
問題になったのは、府内在住の子どもを万博に無料招待する事業です。
1回目の招待は大阪府が主導して実施されました。
ところが2回目の招待について、山本市長はこう指摘したのです。
「無料招待としてますが、費用は市町村負担」
つまり、「無料」と言いながら、実際には各市町村が費用を負担する仕組みになっていたというわけです。
この指摘はSNSで拡散され、「それって本当に"無料"なの?」という疑問の声が広がりました。
日刊スポーツの報道によると、吉村知事はSNS上でこの指摘を「事実ではない」と否定。
「2回目以降の招待は各市町村が地域の状況や予算などを考慮して独自に判断して実施する仕組み」と説明しています。
ただ、山本市長の指摘によって「そもそも市町村負担があるのか」という点が広く知られるきっかけになったのは事実です。
今回の「意地でも屈しません」という発言も、こうした山本市長の一貫したスタンスの延長線上にあると言えそうです。
では、市長が問題視している「おこめ券」とは、そもそもどんな仕組みなのでしょうか。
そもそも「おこめ券」とは?500円で440円分の理由
「え、60円分損じゃない?」
そう思いますよね。
実はこの差額60円が、印刷代や流通経費として発行元に支払われる仕組みになっています。
基本情報
| 価格 | 1枚500円(非課税) |
| 交換価値 | 440円分のお米 |
| 有効期限 | なし |
| 使える場所 | お米屋さん、スーパー、デパートなど全国約10万店舗 |
発行元は2団体だけ
おこめ券を発行しているのは、実は2つの団体だけです。
- 全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)
「全国共通おこめ券」を発行。1983年から発行開始 - 全国農業協同組合連合会(JA全農)
「全国共通おこめギフト券」を発行
Wikipediaの記載によると、おこめ券は1983年から存在しており、なんと40年以上の歴史があります。
なぜ60円の差額が生まれるのか
発行元の説明では、差額の60円は以下の用途に使われています。
- 券の印刷代
- 流通経費(券を店舗に届ける費用など)
- マージン(発行元の利益)
この60円(12%)に加えて、自治体が市民に郵送する費用や事務手数料がかかるため、山本市長は「合計で約20%」と試算したわけです。
おこめ券への批判
政府がおこめ券配布を推奨していることに対しては、さまざまな批判の声が上がっています。
鈴木農水大臣は「業界への利益誘導ではないか」という批判に対し、「おこめ券を使うか使わないかは自治体の自由」と反論。
また、「おこめ券の存在自体を知らない首長もいる」として、12月3日から自治体向けのオンライン説明会を開催すると発表しています。
では、他の自治体はおこめ券についてどう対応しているのでしょうか。
他の自治体はどうする?おこめ券配布の動向
おこめ券を配布する自治体
東京都台東区では、2025年10月から区内の全世帯にJA全農のおこめギフト券を配り始めました。
現物支給を選んだ自治体
愛知県大府市は、0歳から18歳までの子どもがいる世帯を対象に、お米の現物支給を発表しました。
子ども1人につき2キロを配り、早ければ12月中旬にも地元の新米が届く予定とのことです。
市長は「年末年始におコメを食べてもらい、健やかに成長していただく」と説明しています。
検討中の自治体が大多数
テレビ朝日の報道によると、東京23区や関東の主要都市への聞き取り調査では、交付金の使い道について「検討中」「決まっていない」と回答したのが31自治体中24にのぼりました。
実施時期も「なるべく早く」「年度内を目指す」が合わせて7自治体で、残りは「分からない」「年度をまたぐ可能性あり」と答えています。
実は、多くの自治体は「おこめ券」の存在自体を知らなかったようです。
鈴木農水大臣は会見で「自治体から一番多い問い合わせは『そもそもおこめ券って何ですか』という質問」と明かしています。
「自治体自体がおこめ券を刷って配らないといけないと思っていた、という話もある。『すでにあるものですよ』と言ったら『あ、こんなものあったんですね』という反応もあった」
こうした状況を受け、農水省は12月3日から自治体向けのオンライン説明会を開催する予定です。
まとめ
- 交野市の山本景市長は「おこめ券を配布しません」と宣言
経費率が約20%と高すぎることが理由。「農林水産大臣には意地でも屈しません」と強気の姿勢 - おこめ券の経費内訳
おこめ券自体の経費12%+郵送・事務手数料約8%=合計約20%が経費で消える - 交野市が選んだ代替施策
給食無償化(経費率0%)と水道料金免除(経費率約1%)で、同じ5億円でも市民に届く金額を最大化 - 山本市長の経歴
大学在学中に会社を設立、ライブドアに1億円で売却。野村證券で課長代理まで昇進。万博でも吉村知事に反発した「直言」の実績あり - 他自治体の動向
対応はバラバラで検討中が大多数。現物支給やデジタルクーポンを選ぶ自治体も
物価高対策として配られる交付金をどう使うか。
おこめ券か、給食か、水道料金か。それぞれの自治体の判断が、今後注目されそうです。
あなたの住む自治体は、どんな対応をするでしょうか?
よくある質問(FAQ)
Q. 交野市長はなぜおこめ券を配らないのですか?
経費率が約20%と高すぎるためです。市長は「5億円の交付金のうち1億円近くが経費で消える」と試算し、経費率0%の給食無償化や経費率約1%の水道料金免除に充てる方が、市民に届く金額が大きくなると判断しました。
Q. おこめ券はなぜ500円で440円分しか買えないのですか?
差額の60円は、券の印刷代、流通経費、発行元のマージン(利益)に充てられています。発行元はJA全農と全国米穀販売事業共済協同組合(全米販)の2団体のみです。
Q. 山本景市長はどんな人ですか?
1980年生まれの45歳で、大学在学中にIT企業を設立しライブドアに1億円で売却した経歴を持ちます。野村證券で課長代理まで昇進後、政界入り。2022年に交野市長に初当選しました。
Q. 他の自治体はおこめ券を配布しますか?
自治体によって対応は異なります。東京都台東区のように配布を開始した自治体もあれば、愛知県大府市のようにお米の現物支給を選ぶ自治体もあります。多くの自治体は「検討中」の状態です。