2025年10月26日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが、自身が監督を務めた映画について謝罪文を公表しました。
アカデミー賞にノミネートされ、世界50カ国以上で公開されたこの映画が、なぜ日本では観られないのか。そして、なぜ今になって謝罪が必要になったのか。
💡 実は、この映画には「映像の無断使用」という問題があり、さらに驚くことに、批判しているのは伊藤さんを8年間支えてきた元弁護士だったのです。
この記事では、映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』をめぐる問題の全体像を、時系列でわかりやすく解説します。
📋 この記事でわかること

📰 伊藤詩織さんがタクシー運転手に謝罪した経緯
まず最新の出来事から見ていきましょう。
2025年10月26日、伊藤詩織さんは自身のホームページで謝罪文を公表しました。謝罪の相手は、ある重要な証言をしてくれたタクシー運転手です。
このタクシー運転手は、伊藤さんの性被害事件の際、重要な目撃者でした。加害者とされる人物が伊藤さんをタクシーに乗せる場面を目撃していたのです。
伊藤さんは映画を作る際、このタクシー運転手の証言映像を撮影しました。ところが、本人に撮影の許可を取っていなかったのです。
さらに、映画化が決まってから本人に連絡を試みたものの、半年以上も連絡が取れませんでした。それでも伊藤さんは、その映像をそのまま映画で使用してしまいました。
謝罪文で伊藤さんは「判断は間違いであり、心よりおわび申し上げます」と述べています。現在は修正した新しいバージョンの使用許可を、タクシー運転手から得たとのことです。
でも、ここで疑問が湧きますよね。なぜタクシー運転手だけに謝罪?
🔍 実は、これは一連の問題の"最後の謝罪"でした。
では、この映画には一体どんな問題があったのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
🎬 映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』で何が問題になっているのか
映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は、伊藤詩織さんが自身の性被害を記録したドキュメンタリー映画です。
2017年に性被害を公表してから約6年、小学校入学から卒業するくらいの長い期間をかけて制作されました。自身が撮影したスマートフォンの映像なども使い、どう生きてきたかを記録した作品です。
この映画には、実は複数の無断使用問題がありました。
東京新聞の報道によると、無断使用された映像は以下の4種類以上です:
⚠️ 無断使用された映像の内訳
1️⃣ ホテルの防犯カメラ映像(最も重大)
性被害があったとされるホテルの監視カメラの映像です。実はこの映像、伊藤さんは45万円を支払って入手していました。
ただし、ホテル側との約束は「裁判でのみ使用する」というものでした。つまり、映画で使うことは約束違反だったのです。
2️⃣ タクシー運転手の音声と映像
先ほど説明した、目撃証言をしてくれたタクシー運転手の映像です。撮影自体が無断で行われていました。
3️⃣ 元弁護士との電話音声
伊藤さんの裁判を支えた弁護士との電話でのやり取りも、許可なく録音され使用されていました。
4️⃣ 捜査官の音声・映像
事件の捜査に関わった警察官の音声や映像も含まれていました。
5️⃣ 集会の映像
性被害について語る女性たちの集会を撮影した映像も、参加者の一部から許可を得ていませんでした。
これらの問題点を元代理人の弁護士らが会見で指摘しており、「取材源の秘匿が守られない」「人権上の問題がある」と批判しています。
時事通信の報道では、弁護団が2025年2月20日に再度記者会見を開き、改めて映像の削除や修正などの対応を求めたことが伝えられています。
特に防犯カメラ映像は、裁判のためだけに使うという約束を破ってしまったため、最も重大な問題とされています。
でも、ここで不思議に思いませんか?なぜ弁護士が批判しているのでしょう?
普通、弁護士は依頼者の味方のはず。でも、この件では違いました。その背景には、驚くべき事情があったのです。
⚖️ 元代理人弁護士との対立の背景
💥 実は、批判している弁護士は8年間も伊藤さんを支えてきた味方だったのです。
西広陽子弁護士は、伊藤さんの民事訴訟で代理人を務めていました。2017年から裁判を一緒に戦い、勝訴まで導いた人物です。
その弁護士が、なぜ今になって批判する側に回ったのでしょうか。
🔍 対立のきっかけ
問題が表面化したのは、2024年10月21日のことでした。西広弁護士ら3人が司法記者クラブで記者会見を開き、映画の問題点を初めて公に指摘したのです。
西広弁護士は会見で「弁護士と依頼者は信頼関係がないと仕事ができません。それが、何年も前から崩れていた」と述べています。
特に大きな問題は、西広弁護士自身との電話での会話が、許可なく録音され映画で使われていたことでした。
⚔️ 双方の主張
| 西広弁護士側の主張 | 伊藤さん側の主張 |
|---|---|
| • 防犯カメラ映像は「裁判のみ使用」の約束違反 • 弁護士との会話を無断録音することは信頼関係を壊す • 海外の配給会社にこの問題を説明していない |
• 防犯カメラ映像は公益性があり、どうしても必要だった • ホテルとは交渉を尽くした • 映像は加工してプライバシーに配慮している • 西広弁護士が会見で秘密を暴露したことは弁護士規程違反 |
2025年2月20日には、西広弁護士らが外国特派員協会で再度会見を開きました。同じ日に予定されていた伊藤さんの会見は、体調不良を理由にキャンセルされました。
伊藤さんは声明を発表し、西広弁護士に「心からお詫び申し上げます」と謝罪しましたが、西広弁護士側は「直接の謝罪はない」と反論しています。
現在、両者は法的にも対立しており、伊藤さん側は弁護士会に紛議調停を申し立てています。
8年間一緒に戦ってきた弁護士との対立。これが、映画の運命を大きく変えることになります。
しかし、国内での対立をよそに、この映画は海外で大きな評価を受けていました。
🏆 アカデミー賞ノミネートと授賞式の結果
一方、この映画は海外で高い評価を受けていました。
2025年1月23日、『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされました。
🌟 日本人監督として史上初の快挙でした 🌟
映画は2024年1月のサンダンス映画祭を皮切りに、世界50カ国以上で上映されました。スイスのチューリッヒ映画祭では、最優秀ドキュメンタリー賞である「ゴールデン・アイ」を獲得。さらに全作品の中から観客賞も受賞し、観客からの高い支持を得ていました。
全体で18の映画賞を受賞しており、世界的には高く評価されていたのです。
🎭 授賞式の結果
2025年3月3日(日本時間)、ロサンゼルスのドルビー・シアターでアカデミー賞授賞式が開催されました。
長編ドキュメンタリー賞の発表で、伊藤さんは美しいドレス姿で会場に登場しました。
しかし、ELLE DIGITALの報道によると、受賞したのは別の作品でした。受賞作は「ノー・アザー・ランド(故郷は他にない)」。パレスチナ人青年とイスラエル人青年の友情を描いた作品でした。
伊藤さんの映画は、惜しくも受賞を逃しました。
😢 でも、日本では誰も映画館でこの映画を観ていません。
なぜでしょうか?
世界中で称賛された映画が、なぜ自国では観られないのか。その理由を探っていきます。
🇯🇵 なぜ日本では公開されていないのか
アカデミー賞候補になった映画が、自国で観られない。
これは非常に珍しい状況です。
🌍 海外と日本の対比
映画は世界50カ国以上で公開されており、多くの国で劇場公開されています。機内上映でも視聴可能で、実際に海外便で観たという日本人の感想もSNSで見られます。
しかし日本では、劇場公開の目処が全く立っていません。
❓ 公開されない理由
最大の理由は、元弁護士らの指摘による配給会社の慎重な姿勢と考えられます。
伊藤さんは海外メディアに対し、日本で公開されない理由を「政治的にセンシティブな問題で、配給会社や映画館が上映のリスクを恐れている」と説明しています。
一方、西広弁護士らは「伊藤さんは海外で、許諾問題について説明していない」と批判しています。
実際、多くの配給会社は、法的・倫理的な問題が指摘されている作品の配給には慎重になります。特に、元弁護士という法律の専門家が問題を指摘していることは、大きな懸念材料となっているようです。
📱 視聴方法
現在、日本で映画を観る方法は限られています:
- 海外の動画配信サービス(国によっては配信中)
- 国際線の機内上映
- 海外の映画館(渡航が必要)
日本での劇場公開については、今のところ発表されていません。
それでは、この問題は今後どのように展開していくのでしょうか。現在の状況を整理してみましょう。
🔮 今後の展開と現在の状況
では、この問題は今後どうなるのでしょうか。
🎞️ 修正版をめぐる対立
伊藤さん側は、問題が指摘された映像について「修正版を作成した」と主張しています。日本経済新聞の報道によると、個人が特定できないように加工し、海外で今後上映する場合は「差し替えなどできる限り対応する」としています。
しかし、西広弁護士側は2025年3月の時点で「修正された映像の提示がない」「1カ月たっても修正を確認できていない」と反論しています。
⚖️ 法的対立の継続
両者の法的対立は続いています:
- 伊藤さん側が弁護士会に紛議調停を申し立て
- 懲戒請求も視野に入れているとされる
- 西広弁護士側は「謝罪広告を求めた」との報道も
産経新聞の報道によると、修正の確認ができないまま対立が続いている状況です。
💭 問題の本質
この問題は、ドキュメンタリー制作における難しい問題を浮き彫りにしています。
真実を伝えることと、個人の権利を守ること。
公益性と、許諾を得ること。
どちらも重要ですが、両立は簡単ではありません。
特に、裁判のためだけに入手した証拠を映画で使うことは、今後の裁判にも影響を与える可能性があります。「裁判に協力したら、後で勝手に使われるかもしれない」と思われれば、証拠提供に協力する人が減るかもしれません。
🎬 日本公開の見通し
現時点では、日本での劇場公開の見通しは不透明です。
修正版が完成し、元弁護士側との対立が解決するか、あるいは法的に問題ないと判断されれば、公開の可能性はあります。
しかし、解決の糸口はまだ見えていません。
📝 まとめ:アカデミー賞候補の映画が日本で観られない理由
伊藤詩織さんの映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』をめぐる問題についてまとめます。
✅ 重要なポイント
📌 2025年10月26日の謝罪
伊藤さんがタクシー運転手への映像無断使用を謝罪
📌 複数の無断使用問題
特に「裁判のみ使用」の約束を破った防犯カメラ映像が重大
📌 元弁護士との対立
8年間伊藤さんを支えた弁護士が、無断録音された本人として批判
📌 アカデミー賞ノミネート
日本人監督初のノミネート(受賞は逃す)も、世界50カ国以上で公開
📌 日本未公開の理由
元弁護士の指摘により配給会社が慎重で、劇場公開の目処は立っていない
📌 今後の鍵
修正版の完成や法的対立の解決が、日本公開の鍵となる
この問題は、ドキュメンタリー制作における「真実を伝えること」と「個人の権利を守ること」のバランスという、難しい課題を提起しています。
世界では評価されながら、自国では観られない映画。この状況がいつ、どのような形で解決するのか、今後も注目が集まります。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 伊藤詩織さんが謝罪した理由は何ですか?
映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』で、タクシー運転手の証言映像を本人の許可なく撮影・使用したことが理由です。さらに、防犯カメラ映像や元弁護士との電話音声など、複数の映像・音声を無断使用していました。
Q2. 映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』の無断使用問題とは何ですか?
「裁判のみ使用」と約束した防犯カメラ映像を映画で使用したこと、タクシー運転手・元弁護士・捜査官の音声や映像、集会の映像を許可なく使用したことが問題となっています。特に防犯カメラ映像の誓約違反が最も重大とされています。
Q3. なぜ元弁護士が伊藤詩織さんの映画を批判しているのですか?
8年間伊藤さんを支えた西広陽子弁護士は、自身との電話が無断録音され映画で使用されたことや、裁判のみ使用という約束が破られたことを問題視しています。「信頼関係が崩れていた」として、法的・倫理的問題を指摘しています。
Q4. 映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』はアカデミー賞を受賞しましたか?
2025年1月23日に日本人監督初の長編ドキュメンタリー賞ノミネートを果たしましたが、3月3日の授賞式で受賞は逃しました。受賞作は「ノー・アザー・ランド」でした。ただし、世界50カ国以上で公開され、18の映画賞を受賞しています。
Q5. なぜ映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』は日本で公開されていないのですか?
元弁護士らによる無断使用問題の指摘により、配給会社が慎重な姿勢を取っていることが主な理由と考えられます。法的・倫理的な問題が解決していないため、日本での劇場公開の目処は立っていません。
Q6. 映画『ブラック・ボックス・ダイアリーズ』を日本で観る方法はありますか?
現在、日本での劇場公開はされていません。海外の動画配信サービス、国際線の機内上映、または海外の映画館で観ることが可能です。日本での公開予定は未定です。
💬 この問題について、あなたはどう思いますか?
真実を伝えることと、個人の権利を守ること、どちらも大切な価値です。
📚 参考文献リスト
- 東京新聞「映画が賞をとれば無断使用にお墨付き」弁護士が追及
- 弁護士JPニュース:伊藤詩織氏監督映画をめぐる問題
- 弁護士ドットコム:伊藤詩織さんには「映画祭への説明責任もある」
- 東京新聞「伊藤詩織さん、真実から目を背けないで」全文
- 共同通信:伊藤詩織さんが謝罪文
- 時事通信:伊藤詩織さん、監督映画で謝罪
- 東京新聞:伊藤詩織さん監督映画に「人権上の問題」
- 弁護士ドットコム:伊藤詩織さん監督映画めぐる双方の主張
- 神奈川新聞:「生きて伝えたかった」伊藤詩織さんが声明
- 映画.com:伊藤詩織監督、日本人初の快挙
- シネマトゥデイ:伊藤詩織さん、受賞ならず
- ELLE DIGITAL:伊藤詩織監督『Black Box Diaries』、米アカデミー賞受賞逃す
- 映画.com:Black Box Diaries 作品情報
- 東京新聞:伊藤詩織さん映画「差し替える」と言ったのに
- 日本経済新聞:伊藤詩織さん、映画「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」巡り謝罪
- Newsweek:伊藤詩織の映画論争に欠けている「本当の問題」
- 産経新聞:伊藤詩織氏、映画の無断使用部分に差し替え表明も