2025年11月26日、香港で大惨事が起きました。
高層マンション8棟のうち7棟に火が燃え広がり、44人が亡くなっています。
これは香港史上、死者数が最も多い火災となりました。
「なぜそんなに燃え広がったの?」と思いますよね。
実は、建物を覆っていた「竹の足場」と「発泡スチロール」が原因だったのです。
この記事では、香港マンション火災の最新情報と、世界でも珍しい「竹の足場」について詳しく解説します。

⚠️ 最終更新:2025年11月27日午前
死者数が44人に増加しました。また、工事関係者3人が「誤殺罪」で逮捕されています。
この記事でわかること
香港マンション火災で44人死亡―香港史上最悪の高層住宅火災に
結論から言うと、これは香港史上、死者数が最も多い火災となりました。
2025年11月26日午後2時51分(現地時間)、香港北部・大埔(タイポ)区にある高層マンション「宏福苑(ワンフクコート)」で火災が発生しました。
火は約1時間で8棟中7棟に燃え広がり、44人が死亡、56人が負傷しています。
さらに279人と連絡が取れない状態が続いています。
- 死者:44人(うち40人が現場で死亡、4人が搬送後に死亡)
- 負傷者:56人(うち12人が危篤)
- 行方不明:279人
- 消防士殉職:1人(何偉豪さん、37歳)
ロイター通信の報道によると、この火災は1996年の「嘉利大厦大火」(41人死亡)を超え、香港史上最悪の火災となりました。
香港の火災には1級から5級までのレベルがあり、5級が最も深刻です。
今回は午後6時22分に最高レベルの「5級」に引き上げられました。
Bloombergの報道によると、5級火災は2008年の「嘉禾大厦大火」以来、17年ぶりです。
現場となった宏福苑は、1983年に建てられた築42年のマンション群です。
32階建ての建物が8棟あり、約2000戸に約4600人が暮らしていました。
つまり、数千人が暮らす大規模な団地が、一夜にして焼け野原になったということです。
亡くなった消防士は何偉豪(ホー・ワイホウ)さん(37歳)。勤続9年のベテランでした。
消防処長の発表によると、何さんは宏昌閣での救助活動中に連絡が取れなくなり、その後倒れているところを発見されました。
病院に搬送されましたが、午後5時45分に死亡が確認されています。
香港の李家超行政長官は記者会見で、この火災を「重大災難」と表現しました。
習近平国家主席も救出に全力を尽くすよう指示を出しています。
では、なぜ32階建ての高層マンション7棟にここまで火が燃え広がったのでしょうか。
その原因は、建物を覆っていた"あるもの"にありました。
なぜ8棟に燃え広がった?「竹の足場」と「煙突効果」が生んだ最悪の連鎖
火災を急速に拡大させたのは、「竹の足場」「可燃性ネット」「煙突効果」の3つでした。
「え、竹?」と驚いた人も多いと思います。
実は、燃えたのは建物本体ではなく、外壁を覆っていた竹製の足場と安全ネットだったんです。
宏福苑では2024年7月から大規模な改修工事が行われていました。
8棟すべての建物が竹の足場で覆われ、その上から可燃性の安全ネットがかけられていた状態です。
「煙突効果」とは?
香港メディアの報道によると、今回の急速な延焼には「煙突効果」が関係しています。
竹の足場は建物の外壁に密着して設置されていました。
低層階で火がつくと、外壁と足場の間の狭い空間が「煙突」のような役割を果たします。
上昇する熱気が強烈な対流を生み、火は外壁に沿って一気に最上階まで駆け上がりました。
これが「煙突効果」です。
- 香港天文台が「紅色火災危険警告」を発令中(火災リスクが極めて高い)
- 相対湿度40〜50%と非常に乾燥
- 強い北風が吹いていた
足場の竹に火がつくと、風にあおられて隣の建物の足場に次々と燃え移りました。
燃える竹の残骸が風で飛ばされ、延焼を加速させたとも報じられています。
現場では爆発音も何度も聞こえたという証言があります。
これは足場を固定していた部材や、建物内のガスボンベなどが破裂した音と考えられています。
窓を封鎖した「発泡スチロール」も原因か
警察の発表によると、もう一つの原因として「発泡スチロール」が指摘されています。
改修工事中、各住戸の窓は発泡スチロールで封鎖されていました。
この発泡スチロールは可燃性であり、火災時に延焼を加速させた可能性があるとされています。
「竹の足場」+「可燃性ネット」+「発泡スチロール」+「煙突効果」+「乾燥」+「強風」という最悪の組み合わせが、この大惨事を引き起こしました。
ところで、なぜ香港では高層ビルに"竹"の足場を使うのでしょうか。
香港名物「竹の足場」とは?世界で珍しい建築文化の光と影
香港は、世界でも珍しく建設現場で竹製の足場を広く使っている地域です。
「高層ビルの足場=金属製」というのが世界の常識ですよね。
でも香港では、なんと足場の約80%が竹で作られています(2025年1月時点)。
香港に旅行したことがある人は、ビルの周りに竹が組まれている光景を見たことがあるかもしれません。
竹の足場が使われる3つの理由
1つ目は、コストが安いこと。
竹は中国本土から安く調達でき、金属に比べて圧倒的に安価です。
2つ目は、軽くて扱いやすいこと。
AFP通信の報道によると、金属の足場は竹の2〜3倍の重さがあるそうです。
軽い竹なら、狭い香港の街でも運搬や組み立てが簡単にできます。
3つ目は、職人の高い技術があること。
香港では竹の足場を組むのに国家資格が必要です。
熟練した職人が組む竹の足場は、実は金属と同程度の安全性があるとされています。
建設現場での死亡事故率は、日本と香港でほぼ同じというデータもあります。
竹の足場でも、職人の技術があれば安全性は確保できるんです。
しかし、竹には致命的な弱点がありました。
それが「燃えやすい」ということです。
2025年は竹足場火災が相次いでいた
実は、今回の火災の前にも、2025年は香港で竹足場の火災が複数発生していました。
- 10月:中環・華懋大厦(3級火災)
- 10月:啓徳・房協の工事現場
- 10月:香港大学・西苑宿舎の工事現場
- 年初:荃湾・徳士古道の工事現場
これらの火災を受けて、香港当局も規制強化に動いていました。
規制強化が発表された直後の悲劇
時事通信の報道によると、2025年3月に香港政府は「公共工事の50%で金属足場の使用を義務化する」と発表したばかりでした。
公式統計では、2018年以降、竹の足場が関係した労働災害で23人が亡くなっています。
つまり、規制強化が発表された直後に、その懸念が最悪の形で現実になってしまったということです。
では、この火災の責任は誰にあるのでしょうか。
警察はすでに動き出しています。
3人が「誤殺罪」で逮捕―防火基準違反の疑い
11月27日未明、警察は工事関係者3人を「誤殺罪」の疑いで逮捕しました。
逮捕されたのは、52〜68歳の男性3人。
建築工事会社の取締役2人と、工事顧問1人です。
逮捕の理由は「防火基準違反」
香港警察の発表によると、逮捕の理由は以下の通りです。
- 外壁の保護ネット、防水シート、プラスチックシートが防火基準を満たしていなかった疑い
- 各住戸の窓を発泡スチロールで封鎖していたことが延焼を加速させた可能性
- 工事会社の責任者が「重大な過失」を犯したと判断
警察は、「工事会社責任者の重大な過失が、火災の急速な拡大と重大な死傷者を招いた」との見解を示しています。
また、警察と消防は合同で専門調査チームを結成。
外壁の足場に使われていた材料を採取し、防火基準を満たしていたかどうかの検証を進めています。
この事件は死因審問(日本の死因裁判に相当)に送られることが決まっています。
出火原因はまだ調査中
なお、出火原因自体はまだ特定されていません。
SNS上では、工事作業員が足場でタバコを吸っている映像が拡散され、「これが原因では?」という指摘も出ています。
ただし、これが実際に今回の火災と関係しているかは確認されていません。
消防処は「火災の蔓延速度は異常だった」との見解を示しており、詳細な調査が続けられています。
では、現地ではどのような反応が起きているのでしょうか。
現地の反応と救助活動―279人が行方不明
11月27日午前時点で、279人と連絡が取れない状態が続いています。
李家超行政長官は記者会見で、「消防は現場を制御しつつあるが、救助活動は継続中」と述べました。
888人の消防士を動員
消防処によると、現場には888人の消防士が動員されています。
消防処長の発表によると、27日凌晨時点で以下の状況でした。
- 7棟が被害を受け、1棟(宏志閣)は被害を免れた
- 3棟の火勢が初期制御下に
- 4棟にはまだ散発的な火種が残っている
- 消防士は17〜18階まで進んで消火活動中
高層階の消火が難航しており、消防士は「1階ずつ消火を完了させ、上へ進んでいく」作戦を取っています。
住民からの深刻な証言
香港メディアによると、多くの住民が深刻な状況を証言しています。
複数の住民が「火災警報が鳴らなかった」と証言しています。
火災初期の映像でも、路上の市民が「なぜ警報が鳴らないんだ」「誰も警報を押していない」と叫ぶ声が記録されています。
「もし誰かが寝ていたら、逃げられなかったはずだ」と語る住民もいます。
また、ある住民は「竹の足場が炎に包まれるまで、わずか数十秒だった」と証言。
1階から最上階まで、あっという間に火が駆け上がったと語っています。
救助・支援体制
香港政府は以下の支援体制を整えています。
- 臨時避難所:9か所を開設(約900人が避難)
- 医療体制:医管局が9病院を戒備態勢に
- 援助ホットライン:大埔那打素医院(2658 4040)、威爾斯親王医院(3505 1555)
- 死傷者情報ホットライン:1878 999(警察)
- 心理支援ホットライン:5164 5040(香港紅十字会、11月28日まで)
地元企業も支援に動いています。
- 通信会社CSL:被災者に無料でモバイルバッテリー貸し出し、追加データ通信を提供
- 大埔超級城:商業施設を24時間開放、水とビスケットを配布
- 3香港:無料で予備携帯電話とSIMカードを貸し出し
日本人への影響はどうなっているのでしょうか。
日本人被害は?大埔には日本人学校も
外務省と在香港日本総領事館によると、日本人の被害は確認されていません。
時事通信の報道でも、邦人被害は確認されていないと伝えられています。
ただし、火災現場のある大埔区には日本人学校があります。
大埔は香港北部の郊外エリアで、日本人駐在員や家族も暮らしている地域です。
もし香港に家族や知人がいる方は、安否確認をおすすめします。
また、香港への旅行を予定している方は、現地の最新情報をこまめにチェックしてください。
火災現場周辺の道路は封鎖されており、公共交通機関にも影響が出ています。
警察は11月27日〜30日まで現場周辺を「飛行制限区域」に指定し、ドローンの飛行を禁止しています。
まとめ
今回の香港マンション火災について、重要なポイントをまとめます。
- 被害状況:44人死亡(消防士1人含む)、56人負傷、279人行方不明
- 火災レベル:最高の5級(2008年以来17年ぶり)
- 香港史上最悪:1996年の嘉利大厦大火(41人死亡)を超え、死者数が最多に
- 延焼原因:竹の足場、可燃性ネット、発泡スチロール、煙突効果が重なった
- 逮捕者:工事会社取締役2人と工事顧問1人が「誤殺罪」で逮捕
- 日本人被害:現時点で確認されていない
香港名物だった「竹の足場」の危険性が、最悪の形で現実になってしまいました。
この火災をきっかけに、竹足場の規制がさらに強化されるのは確実です。
しかし、279人の行方不明者の捜索は今も続いており、死者数はさらに増える可能性があります。
被害に遭われた方々のご冥福と、行方不明者の早期発見をお祈りします。
日本でも大規模な火災が発生しています。火災の原因や対策について関心がある方は、大分佐賀関火災で170棟が燃えた理由や京王井の頭線火災の原因と復旧までの経緯もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 香港マンション火災の死者数は何人?
2025年11月27日午前6時時点で、44人が死亡しています。40人が現場で死亡、4人が搬送後に死亡しました。うち1人は消防士です。また56人が負傷(12人が危篤)し、279人と連絡が取れていません。これは1996年の嘉利大厦大火(41人死亡)を超え、香港史上最悪の火災となりました。
Q. なぜ8棟に燃え広がったの?
建物を覆っていた「竹の足場」と可燃性の安全ネット、窓を封鎖していた発泡スチロールが原因です。また、外壁と足場の間で「煙突効果」が発生し、火が一気に上層階へ駆け上がりました。乾燥した気候と強風も重なり、約1時間で7棟に延焼しました。
Q. 香港ではなぜ竹の足場を使うの?
コストが安く、軽くて扱いやすいためです。香港では足場の約80%が竹製で、職人には国家資格が必要です。ただし可燃性という弱点があり、2025年3月に規制強化が発表されたばかりでした。2025年は他にも複数の竹足場火災が発生しており、問題視されていました。
Q. 逮捕された3人は誰?
建築工事会社の取締役2人と工事顧問1人(52〜68歳の男性)が「誤殺罪」の疑いで逮捕されました。外壁の保護ネットや発泡スチロールが防火基準を満たしていなかった疑いがあり、「重大な過失」があったと判断されています。
Q. 日本人の被害は?
外務省と在香港日本総領事館によると、日本人の被害は確認されていません。ただし火災現場のある大埔区には日本人学校があり、日本人駐在員も暮らしている地域です。香港に知人がいる方は安否確認をおすすめします。