2025年10月21日午前8時44分頃、埼玉県鴻巣市のJR高崎線北鴻巣~鴻巣駅間の踏切で、上り列車と乗用車が接触する事故が発生しました。
警察の発表によると、列車が踏切を通過中に乗用車が踏切内に進入し、列車の側面に接触したとみられています。
この事故で、車を運転していた54歳の女性が軽いケガをしました。事故の影響で、JR高崎線は一部区間で運転を見合わせ、多くの通勤・通学客に影響が出ました。
「まさか自分が踏切事故に遭うなんて...」誰もがそう思うかもしれません。
しかし、踏切事故は決して他人事ではありません。
国土交通省の最新データによると、2023年に全国で発生した踏切事故は257件。つまり、2日に1件以上のペースで踏切事故が起きているのです。
もし、あなたが踏切内で立ち往生したら、正しく対処できますか?
この記事では、今回の事故を教訓に、踏切事故の原因と絶対に知っておくべき対処法を詳しく解説します。

📋 この記事でわかること
🚨 「側面衝突」とは?列車通過中に起きる踏切事故の危険性
今回の鴻巣市で起きた事故は「側面衝突」と呼ばれるタイプの踏切事故である可能性が高いとみられています。
「側面衝突」とは、列車が既に踏切を通過している最中に、自動車や歩行者が踏切内に進入して列車の側面に衝突する事故のことです。
一見、よくある「直前横断」と似ているように思えますが、大きな違いがあります。
📌 直前横断
列車が接近している時に「間に合うと思って」踏切に進入してしまう
⚠️ 側面衝突
既に列車が通過中なのに踏切に進入してしまう
つまり、側面衝突は「もう列車が通っているのに、なぜか踏切に入ってしまう」という、より危険な状況なのです。
なぜ危険なのか?
それは、列車が既に通過中であるため、運転士が気づいて急ブレーキをかけても、事故を回避することがほぼ不可能だからです。直前横断なら、運転士が早めに気づいてブレーキをかける余地がありますが、側面衝突では既に列車が踏切内に入っているため、どうすることもできません。
運輸安全委員会のデータでは、2019年の踏切事故全体の約13.3%が側面衝突・限界支障によるものです。件数としては決して多くありませんが、一度起きれば重大な被害につながる可能性が高い事故といえます。
では、なぜこのような踏切事故は起きてしまうのでしょうか?
📊 踏切事故はなぜ起きる?原因TOP3と統計データ
国土交通省の最新データ(2023年)によると、全国で発生した踏切事故は257件。死亡者は103人に達しています。
これを日数で計算すると、驚くべき事実が見えてきます。
⚠️ 重要な事実
2日に1件以上のペースで踏切事故が発生し
4日に1人が命を落としている
カップラーメンを食べるのに3分かかりますが、その2日後にはまた別の場所で誰かが踏切事故に遭っているのです。
では、踏切事故はなぜ起きてしまうのでしょうか?運輸安全委員会の統計から、原因TOP3を見てみましょう。
🥇 第1位: 直前横断 108件(51.2%)
踏切事故の原因で圧倒的に多いのが「直前横断」です。
列車が接近しているにもかかわらず、「間に合う」と判断して踏切内に進入してしまうケースが半数以上を占めています。
「警報機が鳴り始めたけど、まだ列車は見えないから大丈夫だろう」
「遮断機が降り始めているけど、急げば渡れるはず」
こうした油断が、重大な事故につながっているのです。
🥈 第2位: 落輪・エンスト・停滞 65件(30.8%)
踏切内で車が落輪(タイヤが線路の溝にはまる)、エンジンストップ、交通渋滞や運転操作の誤りなどにより進退不可能となり、列車と衝突するケースです。
特に危険なのが、踏切の先が渋滞していて進めない状況なのに、「前の車が進んだら自分も行けるだろう」と踏切内に進入してしまうことです。予想以上に渋滞が解消せず、踏切内で警報機が鳴り始めてしまうと、逃げ場がなくなります。
🥉 第3位: 側面衝突・限界支障 28件(13.3%)
今回の鴻巣市の事故のように、列車通過中に踏切内に進入する側面衝突や、停止位置が不適切で列車に接触する限界支障が含まれます。
💡 実は...
これらの原因の多くは「ドライバーや歩行者の判断ミス」によるものです。警報機や遮断機があっても、「大丈夫だろう」という油断や焦りが重大な事故を引き起こしているのです。
そして、踏切事故には、もう一つ見過ごせない特徴があります。
それは、高齢者が事故の半数以上を占めているという事実です。
👴 高齢者が踏切事故の半数以上を占める理由
踏切事故の年代別データを見ると、驚くべき事実が浮かび上がります。
60歳以上の高齢者が踏切事故の56%以上を占めているのです。
📈 踏切事故の年代別内訳(2019年データ)
- 🔴 70歳代: 44件(20.9%)← 最多
- 🟠 80歳代: 40件(19.0%)
- 🟡 60歳代: 35件(16.6%)
- 🟢 その他: 92件(43.5%)
70代が最も多く、次いで80代、60代と続きます。つまり、踏切事故の半数以上が高齢者によるものなのです。
なぜ、高齢者に踏切事故が多いのでしょうか?
理由1: 反応速度の低下
加齢に伴い、視覚・聴覚の機能や身体の反応速度が低下します。
警報音が聞こえにくい、列車の接近に気づくのが遅れる、とっさの判断ができないなどの要因が事故につながります。若い頃なら「あ、列車が来る!」とすぐに反応できたことが、年齢を重ねるとワンテンポ遅れてしまうのです。
理由2: 判断力の問題
高齢ドライバーは「列車までの距離」で判断する傾向があり、列車の速度を正しく認識できないことがあります。
「まだ列車は遠いから大丈夫」と判断しても、実際には高速で接近しているため、間に合わないケースが多いのです。列車は見た目よりもずっと速く進んでいます。
理由3: 「気づいていないことに気づいていない」
実は、これが最も深刻な問題です。
🔍 研究結果
実践女子大学の松浦常夫教授の研究によると、高齢者は「歩行者や自転車に気づかない」「信号や標識を見落とす」といった認知的問題について、本人は「安全確認をしている」と思っているため、自覚がないことが明らかになっています。
つまり、自分では注意しているつもりでも、実際には見落としているのです。
「自分は大丈夫」と思っている人ほど、実は危険な状態にあるかもしれません。
運輸安全委員会のリーフレットでも、「踏切事故は、60歳以上の運転者による場合に比較的多く発生しています」と注意を呼びかけています。
高齢者本人だけでなく、家族や周囲の人が踏切の危険性について話し合うことが重要です。
では、もし自分が踏切内で立ち往生してしまったら、どうすればいいのでしょうか?
🆘 踏切内で立ち往生したら絶対にやるべき3つのこと
万が一、踏切内で立ち往生してしまった場合、パニックになってしまうかもしれません。
しかし、正しい対処法を知っていれば、命を守ることができます。
ここから説明する3つのことは、必ず覚えておいてください。
✅ 最重要:やるべきこと3つ
① 車が動くなら遮断機を押し破って即座に脱出
② 車が動かないなら非常ボタンを押す
③ 車から離れて安全な場所に避難
① 車が動くなら遮断機を押し破って即座に脱出!
遮断機が降りていても、車で押せば遮断機は跳ね上がります。
JAFによると、遮断機の棒は車で押しても折れないよう設計されており、斜め上に跳ね上がる構造になっています。ボディに擦り傷ができるかもしれませんが、列車と衝突するリスクに比べれば何でもありません。
⏰ 時間的余裕は極めて少ない
・警報機が鳴り始めてから約30秒で列車が到達
・遮断機が降りてから約15秒で列車が通過
30秒というのは、カップラーメンにお湯を注いでから1/6程度の時間です。15秒は、深呼吸を3回する時間もありません。
「遮断機を壊していいの?」と躊躇している時間はないのです。車が動く状態なら、迷わずアクセルを踏んで遮断機を押し破り、踏切の外に脱出してください。
② 車が動かないなら、即座に非常ボタンを押す
車が故障・脱輪・エンストなどで動かない場合は、すぐに車から降りて、警報機の柱に設置されている非常ボタンを押してください。
非常ボタンを押すと、運転士に危険を知らせる停止信号が点灯し、列車に異常を伝えることができます。
非常ボタンの場所は、踏切の警報機の柱にある赤い大きなボタンです。ボタンは誤作動防止のため固く設計されているので、強く押し込む必要があります。
「押していいのかな...」と躊躇せず、ためらわずに押してください。
③ 車から離れて、安全な場所に避難
非常ボタンを押したら、車に戻らず、踏切の外の安全な場所に避難してください。
列車は非常ブレーキを使っても約600メートル近くは止まれません。600メートルは、東京タワーの高さの約2倍です。それだけの距離を走らないと止まれないのです。
つまり、非常ボタンを押しても衝突を完全に防げるとは限りません。自分の命を守ることが最優先です。
避難後、非常ボタンの下に書かれている連絡先に電話して、事情を説明してください。
🔘 非常ボタンの押し方と損害賠償の心配は不要な理由
「非常ボタンを押したら、列車を止めて損害賠償を請求されるのでは?」
このような心配から、非常ボタンを押すのをためらう人がいます。
しかし、正当な理由があれば損害賠償請求されることはありません。
非常ボタンは「命を守る装置」
JR西日本はホームページで、「トラブルが起こった際は、ためらわずに非常ボタンを押してください」と明言しています。
JR北海道も、「もし踏切で車が動かなくなったら、非常ボタンを押してください」と呼びかけています。
非常ボタンは、踏切内の危険を運転士に知らせるための重要な安全装置です。危険を回避するために押した場合、たとえ列車が止まったとしても、損害賠償を請求されることはありません。
押した後に車が脱出できても大丈夫
「非常ボタンを押したけど、その後に車が動いて脱出できた」という場合でも、問題ありません。
危険を回避するために非常ボタンを押したという事実は変わらないため、結果的に車が脱出できたとしても、それは結果論です。「無駄に列車を止めてしまった」と罪悪感を感じる必要はまったくありません。
📍 非常ボタンの押し方
- 踏切の警報機の柱を探す
- 赤い大きなボタン(透明カバーで覆われている場合もある)を見つける
- 誤作動防止のため固く設計されているので、強く押し込む
- ボタンを押すと、その場でブザー音が鳴り、停止信号が点灯する
- 非常ボタンの下に書かれている連絡先に電話して事情を説明
非常ボタンは、あなたや家族、そして列車の乗客の命を守るための装置です。危険を感じたら、ためらわずに押してください。
🚧 遮断機は本当に押し破れる?脱出方法の真実
「遮断機を押し破るなんて本当にできるの?」と疑問に思うかもしれません。
実は、遮断機の棒は、車で押せば跳ね上がるように設計されています。
これは、踏切内で立ち往生した車を脱出させるための安全設計なのです。
遮断機の構造
JAFによると、遮断機の遮断棒は「クルマで押しても折れずに斜め上に上がるような構造」になっています。
つまり、車の前部で遮断棒をゆっくり押すと、遮断棒は斜めにググっと押し上がっていくのです。もし勢いよくぶつかって遮断棒が折れてしまったとしても、命を守ることが最優先です。
折れてしまった場合の対処法
JR北海道によると、折れてしまった遮断棒をそのままにしておくと、次の列車が来た時に正常に踏切を遮断できなくなってしまいます。そのため、脱出後に警報機に設置されている看板の連絡先へ電話してください。
遮断機を壊したことで損害賠償を請求されることはありません。緊急避難として認められます。
⏱️ 時間的余裕はわずか15秒
遮断機が完全に降りてから列車が通過するまでの時間は、最短で15秒です(JR西日本の場合)
15秒という時間は、思っている以上にあっという間です。「1、2、3...」と数えている間に、列車が到達してしまいます。
「どうしよう」と考えている時間はありません。車が動く状態なら、迷わずアクセルを踏んで遮断機を押し破り、踏切の外に脱出してください。
🛡️ 踏切事故を防ぐために今日からできること
踏切事故の多くは、ドライバーや歩行者の注意不足や判断ミスによって起きています。
つまり、正しい知識と行動で防げる事故なのです。
今日から実践できる踏切事故防止策をまとめました。
① 踏切手前で必ず一時停止
踏切の手前では、警報機や遮断機の有無にかかわらず、必ず一時停止してください。
道路交通法でも、踏切での一時停止と安全確認が義務付けられています。運転席の窓を少し開けて、警報音が鳴っていないか耳で確認することも大切です。
「いつも通る道だから大丈夫」という油断が事故につながります。
② 踏切の先が詰まっていたら絶対に進入しない
踏切の先が渋滞していて車が詰まっている場合、たとえ警報機が鳴っていなくても踏切内に進入してはいけません。
踏切内で停滞してしまうと、警報機が鳴り始めた時に逃げ場がなくなります。「前の車が進んだら自分も行ける」と思っても、予想以上に渋滞が解消しないことがあります。
踏切の向こう側に自分の車が完全に入れるスペースがあるか、必ず確認してください。
③ 警報機が鳴ったら絶対に進入しない
警報機が鳴り始めたら、たとえ遮断機が降りていなくても、踏切内に進入してはいけません。
「まだ列車は来ていない」「間に合うだろう」という油断が、重大な事故につながります。警報機が鳴り始めてから約30秒で列車が到達します。30秒は、思っている以上にあっという間です。
④ 複線の場合は反対方向からも列車が来る
線路が複数ある複線区間では、一方向から列車が通過した直後に、反対方向からも列車が来る場合があります。
「列車が通り過ぎたから大丈夫」と思って踏切内に進入すると、反対方向から別の列車が来て事故になるケースがあります。必ず左右を確認してください。
⑤ 高齢者の家族がいる場合は話し合いを
高齢者が踏切事故の半数以上を占めているという事実を、家族で共有してください。
「自分は大丈夫」と思っていても、実際には反応速度が低下していたり、判断ミスをしていたりする可能性があります。定期的に運転について話し合い、必要に応じて運転免許の自主返納も検討しましょう。
特に、「最近、車をこすることが増えた」「駐車が難しくなった」と感じている場合は、踏切での反応も遅れている可能性があります。
📌 まとめ:踏切事故から命を守るために
- ✓ 全国で2日に1件以上のペースで踏切事故が発生
- ✓ 事故の半数以上は「間に合うと思って渡った」判断ミス
- ✓ 60歳以上の高齢者が事故の56%以上を占めている
- ✓ 立ち往生したら:①遮断機を押し破って脱出、②非常ボタン、③避難
- ✓ 遮断機は押せば跳ね上がる構造、非常ボタンで損害賠償なし
- ✓ 予防策:一時停止、先が詰まっていたら進入しない、警報機が鳴ったら絶対に進入しない
今朝、鴻巣市で発生した踏切事故は、決して他人事ではありません。
命を守ることが最優先です。「自分は大丈夫」という油断が、重大な事故につながります。
今日から、踏切を渡る時の意識を変えてください。
あなたとあなたの大切な人の命を守るために、この記事で学んだ知識を忘れずに、安全運転を心がけましょう。
📚 参考情報
💬 よくある質問(FAQ)
Q1: 踏切事故はどのくらいの頻度で起きていますか?
2023年の統計では、全国で257件の踏切事故が発生しており、これは2日に1件以上のペースです。また、4日に1人が命を落としているという深刻な状況です。
Q2: 踏切事故の最も多い原因は何ですか?
最も多い原因は「直前横断」で、全体の51.2%を占めています。これは列車が接近しているにもかかわらず、「間に合う」と判断して踏切内に進入してしまうケースです。次いで、落輪・エンスト・停滞が30.8%、側面衝突・限界支障が13.3%となっています。
Q3: なぜ高齢者に踏切事故が多いのですか?
60歳以上の高齢者が踏切事故の56%以上を占めています。理由は、①反応速度の低下、②列車の速度を正しく認識できない判断力の問題、③「気づいていないことに気づいていない」という認知の問題が挙げられます。
Q4: 踏切内で立ち往生したらどうすればいいですか?
①車が動くなら遮断機を押し破って即座に脱出、②車が動かないなら非常ボタンを押す、③車から離れて安全な場所に避難、の3つを必ず実行してください。命を守ることが最優先です。
Q5: 非常ボタンを押したら損害賠償を請求されますか?
正当な理由があれば損害賠償請求されることはありません。JR各社も「ためらわずに押してください」と呼びかけています。危険を回避するための行動は保護されます。
Q6: 遮断機は本当に車で押し破れますか?
はい、遮断機の棒は車で押せば斜め上に跳ね上がるように設計されています。これは踏切内で立ち往生した車を脱出させるための安全設計です。もし折れてしまっても、命を守ることが最優先で、緊急避難として認められます。
Q7: 警報機が鳴ってから列車が来るまでどのくらいの時間がありますか?
警報機が鳴り始めてから約30秒で列車が到達し、遮断機が降りてから約15秒で列車が通過します。思っている以上にあっという間なので、警報機が鳴ったら絶対に進入してはいけません。
Q8: 踏切事故を防ぐために最も重要なことは何ですか?
①踏切手前で必ず一時停止、②踏切の先が詰まっていたら進入しない、③警報機が鳴ったら絶対に進入しない、という3つの基本ルールを徹底することです。「自分は大丈夫」という油断が事故につながります。