実は味の素が冷凍弁当で「ステマ疑い」を指摘され、消費者庁から改善指導を受けていました。
2025年9月19日、大手食品メーカー「味の素」が消費者庁からステルスマーケティング(ステマ)の疑いを指摘され、改善計画の提出を求められたというニュースが発表されました。
問題となったのは、イングリウッドと共同展開する冷凍弁当宅配サービス「あえて、」での宣伝手法です。
なぜ信頼される大手企業がこのような問題を起こしたのでしょうか。
そして、利用者にはどんな影響があるのでしょうか。
この記事では、今回の事件の詳細から背景、そして今後の影響まで、分かりやすく解説していきます。

この記事でわかること
味の素のステマ疑いとは?消費者庁調査の全容
今回問題となったのは「ステルスマーケティング」、つまり「隠れた宣伝」です。
ステルスマーケティング(ステマ)とは、企業による広告や宣伝であることを隠して、あたかも第三者の自然な感想であるかのように見せかける手法のことです。
実は、このステマが法的に禁止されたのは2023年10月1日からで、まだ2年も経っていない比較的新しい規制なのです。
参考:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります | 消費者庁
なぜステマが問題なのか?
消費者は、企業の広告だと分かっていれば「ある程度誇張が含まれているかもしれない」と考えて商品を判断します。
しかし、一般の人の感想だと思い込んでしまうと、その内容をそのまま信じてしまい、適切な商品選択ができなくなる可能性があります。
つまり、ステマは消費者の「知る権利」と「選択する権利」を奪う行為として規制されているのです。
景品表示法での位置づけ
ステマは景品表示法の「不当表示」として指定されており、違反すると措置命令や課徴金納付命令の対象となります。
ただし、今回の味の素のケースでは、後述する「確約手続き」という新しい制度が適用されました。
「あえて、」で何が問題だったのか?具体的な違反内容
実際に何が問題だったのか、具体的な内容を見てみましょう。
問題となった宣伝手法
味の素とイングリウッドが共同で展開する冷凍弁当宅配サービス「あえて、」では、2024年5月から8月にかけて以下のような手法が使われていました:
1. 商品の無償提供を条件にSNS投稿を依頼
- 第三者にInstagramでの投稿を依頼
- 投稿の条件として商品を無償で提供
2. 投稿内容を「感想」として転載
- 依頼した投稿を販売サイトに掲載
- 「使ってみた方の感想」として表示
- 「PR」や「広告」の表示なし
参考:味の素など2社の冷凍宅配弁当に「ステマ」疑い 消費者庁が改善計画認定 | 日本経済新聞
イングリウッドの追加問題
さらに、イングリウッドが独自に展開する「三ツ星ファーム」というサービスでも同様の問題がありました。
加えて、客観的な調査に基づかない「プロの料理人がオススメする宅食ランキングNo.1」という表示も問題視されています。
これは、根拠のない「No.1表示」として、別の景品表示法違反の疑いも指摘されたということです。
投稿の実例
報道によると、問題となった投稿には「空いた時間をどうするか楽しみ」といった文言が含まれており、これらが広告表示なしで「使ってみた方の感想」として掲載されていました。
参考:「味の素」・「イングリウッド」冷凍宅配食「あえて、」で"ステマ"の疑い | TBS NEWS DIG
なぜ味の素がステマを行ったのか?背景と業界事情
なぜ信頼される大手企業がこのような問題を起こしたのでしょうか。
その背景には、急成長する冷凍弁当市場での激しい競争があります。
冷凍弁当市場の急成長
実は、冷凍宅配弁当市場は驚くほど急成長している分野です。
日本能率協会総合研究所の調査によると、この市場は2029年に540億円規模まで成長すると予測されています。
冷凍宅配弁当市場は年々急拡大しており、各社が参入を急いでいる注目分野となっています。
参考:冷凍宅配弁当市場 2029年に540億円規模へ | MDB Digital Search
競争の激化
矢野経済研究所の調査では、食品宅配市場全体も拡大を続けており、2024年度は前年比2.9%増の2兆6,858億円に達する見込みです。
この大きな市場の中で、冷凍弁当は注目のカテゴリーとして各社が参入を進めています。
参考:食品宅配市場に関する調査を実施(2023年) | 矢野経済研究所
マーケティング手法の変化
コロナ禍を契機に、食品宅配の日常的な利用が定着しました。
同時に、SNSを活用したマーケティングも急速に普及し、インフルエンサーを使った宣伝が一般的になりました。
しかし、2023年10月のステマ規制施行により、これまでグレーゾーンだった手法が明確に違法となったのです。
企業側の認識や体制の整備が追いついていなかった可能性があります。
味の素の事業戦略
味の素は2024年1月に「あえて、」サービスを開始したばかりでした。
同社は2030年に向けて売上100億円規模の事業を複数創出する目標を掲げており、冷凍弁当事業はその重要な柱の一つです。
参考:「あえて、」冷凍ストックご飯の宅配を味の素社がスタート | 味の素グループ
このような背景から、新しいサービスを早期に認知させたいという強いプレッシャーがあったと考えられます。
消費者庁の処分内容と「確約手続き」の仕組み
今回の事件で注目すべきは、「確約手続き」という新しい制度が適用されたことです。
確約手続きとは?
確約手続きとは、2024年10月1日に導入されたばかりの新制度です。
企業が自主的に改善計画を提出し、消費者庁がそれを認定することで、措置命令や課徴金納付命令を免除するという仕組みです。
参考:改正景表法の確約手続とは? | BUSINESS LAWYERS
従来の措置命令との違い
| 項目 | 措置命令 | 確約手続き |
|---|---|---|
| 違反の認定 | 明確に認定 | 疑いがあるレベル |
| 公表のされ方 | 処分として公表 | 自主的改善として公表 |
| 課徴金 | 課される可能性 | 免除 |
| 企業の負担 | 処分を受ける | 自主的に改善計画実行 |
今回の改善計画の内容
味の素とイングリウッドが提出した改善計画には以下が含まれています:
1. 同様の行為を再び行わない旨の取締役会決議
2. 違反疑い行為の内容について消費者への周知徹底
3. 再発防止策の実施
4. イングリウッドは購入者への一部返金も実施
5. 実施状況の消費者庁への報告
なぜ確約手続きが適用されたのか?
企業が早期に問題を認識し、積極的な改善姿勢を示したことが評価されたと考えられます。
特に、返金措置まで自主的に提案したことが「十分性を満たすために有益」として重要視されました。
ただし、この認定は違反行為を確定的に認めるものではありません。
企業の自主的な改善努力を評価する制度として位置づけられています。
利用者への影響は?サービス継続と今後の注意点
最も気になるのは、実際に「あえて、」や「三ツ星ファーム」を利用している人への影響でしょう。
サービスの継続性
現在のところ、両サービスとも通常通り営業を続けています。
料金体系や商品の品質に変更はなく、利用者が直接的な不利益を被ることはありません。
味の素は「広告管理体制をより一層強化し、法令順守の徹底を図る」とコメントしており、サービス品質の向上に取り組む姿勢を示しています。
参考:味の素社の宅配冷凍弁当「あえて、」実食レビュー | HonNe
広告表示の改善
今後は、SNSでの宣伝投稿に「PR」「広告」「商品提供」などの表示が適切に行われることが期待されます。
これにより、利用者はより透明性の高い情報に基づいて判断できるようになります。
利用者が注意すべきポイント
今回の事件を踏まえ、冷凍弁当サービスを選ぶ際は以下の点に注意しましょう:
1. SNSの投稿をチェック
- 「PR」「広告」「提供」の表示があるか確認
- 不自然に褒めすぎている投稿は疑ってみる
2. 公式情報を確認
- 企業の公式サイトや発表を参考にする
- 第三者機関の調査結果があるかチェック
3. 複数の情報源を比較
- 一つの情報だけでなく、複数の口コミや評価を確認
- 実際に利用した知人の意見も参考にする
業界全体への影響
今回の事件は、冷凍弁当業界全体にとって「広告の透明性」を見直すきっかけとなりそうです。
各社がより厳格な広告管理体制を構築することで、消費者にとってより信頼できる市場環境が整うことが期待されます。
実際、他の宅食サービス事業者も広告表示の見直しを進めており、業界の健全化が進んでいると考えられます。
よくある質問
まとめ
今回の味の素ステマ疑い事件についてまとめると:
• 問題の本質:「あえて、」サービスで、商品提供を条件とした投稿を「PR」表示なしで転載したこと
• 背景:540億円規模に成長予測される冷凍弁当市場での競争激化と、2023年施行の新しいステマ規制への対応不足
• 処分内容:新制度「確約手続き」により措置命令を回避し、自主的な改善計画で解決
• 利用者への影響:サービス継続に問題なし、むしろ広告の透明性向上が期待される
• 今後の注意点:SNSの「PR」表示の有無をチェックし、複数の情報源で比較検討することが重要
この事件は、デジタル時代のマーケティングに新たな規範を示しました。
企業には透明性が、消費者には広告リテラシーが求められる時代です。
信頼できる情報源を見極める力が、これからの消費生活には不可欠でしょう。
冷凍弁当サービスを利用する際は、今回の教訓を活かして、より賢い選択をしていきたいですね。